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リカレント教育【人づくり革命】とは

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(日本で社会人が大学に戻り学ぶ割合は先進国の中でも最下位。時代の変化やライフステージに応じて学び直す「リカレント教育」が注目されている)[画=photoAC/紺色ライオン, IllustAC

今日は、第4次安倍内閣が掲げる政策パッケージにも含まれる注目キーワード「リカレント教育」について解説します。

リカレント教育とは?

リカレント教育は、学校を卒業し就労した後も、ライフステージに応じて学び直しを行うこと。1970年代からOECD(経済協力開発機構)で言及されてきた生涯教育の一つです。

リカレントとは「循環」の意味で、社会に一度出てから教育機関に回帰し、得た学びを仕事や人生に生かしていくサイクルを指します。

  • 資格取得や専門領域の研究を通じキャリアアップ
  • 結婚や出産で一度家庭に入った女性の再就職支援
  • リタイア後の充実した人生の実現
  • 事情があり学校に通えなかった方のチャレンジ

などに有効と考えられています。

日本における社会人の大学入学は2%以下

文科省が発表したデータによれば、日本の大学入学者の内、25歳以上が占める割合は1.9%。OECD各国の中でも最低水準でした。

1位 アイスランド 32.4%
2位 ニュージーランド 27.7%
3位 スウェーデン 25.9%

と続き、OECE各国の平均は18.1%となっています。 

日本で社会人の学び直しが難しい理由

終身雇用の日本では、学校を卒業し就職した後は、企業が社員を育てていく文化が根強くあります。転職や進学によってスキルや専門知識を磨きキャリアアップしていく諸外国に対し、日本は勤め続けることが評価されます。

そのため、会社を辞めて大学に通うとなればブランクと見られてしまうのです。

2018年"人生100年時代構想会議"で検討

リカレント教育が日本で見直されている理由は、第4次安倍内閣の経済政策パッケージの1つ「人づくり革命」に2018年夏までの継続検討事項として盛り込まれたためです。 

以下のように言及されています。

人生100年時代においては、これまでのような、高校・大学まで教育を受け、新卒で会社に入り、定年で引退して現役を終え、老後の暮らしを送る、という単線型の人生を全員が一斉に送るのではなく、個人が人生を再設計し、一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択を行い、新たなステージで求められる能力・スキルを身につけることが重要である。

「人生100年時代」とは、2016年10月に出版されて以来、26万部のベストセラーになった書籍「LIFE SHIFT」(著:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)で提唱されたもの。

超高齢化社会を世界ではじめて迎える日本が今後世界的な競争力を維持するため、この「人生100年時代」が注目されたのです。

政府は著者のリンダ・グラットン氏も有識者パネルに加えた「人生100年時代構想会議」を2017年9月に立ち上げました。

社会変化の中で求められる人材像や育成のあり方について、現在、検討を進めているところです。

「LIFE SHIFT」で示唆された人生100年時代の生き方

人の健康寿命が伸び、60歳・65歳定年でも95歳まで元気に生きていく社会はすぐそこまで来ています。

寿命が伸びても定年が伸びることは考えにくいため、老後の蓄えや人生の充実を見据え「LIFE SHIFT」では

  • 職業訓練や学び直しを行う
  • 組織に捉われず生産する
  • 会社以外の社会参画の場を持つ

ことが重要、と示されています。

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AIやロボットに職を奪われる時代の、学び直しの重要性

2013年9月。「AIやロボットによって世界の半分の職が失われるだろう」と発表した、オックスフォード大学 マイケル・オズボーン教授の論文「雇用の未来」が世界に衝撃を与えました。(「雇用の未来」論文原文

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テクノロジーが進化すれば、求められる人材の要件も変わります。今22歳で就職した人は、定年退職の60歳までの38年の中で、自分の仕事やポジションや会社が失くなってしまうかもしれないのです。

テクノロジーや社会の変化に対し、常に新しいことを学び自分をアップデートしなければ生き残れない時代だからこそ、学び直しの重要性も高まっています。

まとめ

リカレント教育が注目される背景には

 ① 超高齢化社会を目前にした人材活用
 ② 個々人の人生の充実
 ③ テクノロジーの進化に適応した人材開発

の3つがあります。

学び直しはどんな手段でも実現できると思いますが、OECDや政府の言う「リカレント教育」は(大学をはじめとする)教育機関での学び直しを示すことが多いです。

これまでは仕事や学費の関係で大学での再教育は浸透しませんでしたが、2018年1月からは教育給付金の見直しも行われました。

社会人になってからも、自分の人生やライフワークについて見つめ直すことが重要になってきています。

[文責=くぼようこ]

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