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「いかのおすし」に思わぬ落とし穴 | 安全教育について考える(2)

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(子ども達がトラブルや災害から身を守るためにどうすべきか。発達段階やライフスタイルに応じ、必要な安全教育は変わってくる)[画=photoAC/エンリケ

前回は安全教育とは何か、課題、東日本大震災で多くの子ども・住民の命を救った「釜石の奇跡」についてみていきました。今回から、発達段階に応じ子ども達にはどのような安全教育が必要なのかを考えていきます。 今日は幼稚園〜小学校低学年編です。

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幼稚園児のための安全教育

 

幼稚園の時代は、子ども達はほとんど親なしに外を出歩く機会は少ないでしょう。しかし、家の中で思わぬアクシデントに遭うことが多い時期です。また、買い物やレジャーで、迷子になり一人になってしまうケースもあります。そこで、家の中での生活安全交通安全に加え、知らない人についていかない、迷子になったらどうするか、などの対応策を教えておく必要があります。

発達段階に応じて注意が必要

特に幼児期は文科省資料によると、以下のような特徴があることが分かります。

・危険や恐怖に対し最も臆病で敏感な時期

・危険を理解させることで、慎重な行動をとることができる

・危険や恐怖を強調しすぎると、 身動きができなくなる可能性も

・危険を予測できないので、思わぬ事故に遭遇することが多い。

こうした特徴から、学校で実施される防犯教育などでも、不審者の姿を子ども達に見せない(=ショックを与えない)などの配慮がされています。

家の中と外での危険を知る

(家の中では)階段や窓際、ベランダなど近づいてはいけない場所となぜかを理解する・包丁やカッター、アイロン、薬品など、うかつに触ると危ないものを知る

(家の外では)道路に急に飛び出さない・なぜ、何が危ないのか(車や自転車の危険性)を知る

防犯教育上の注意

自宅から勝手に出て行かない・迷子になったら(ママとの待ち合わせ場所を決める・お店の人にネームタグを見せる・誰に聞いたらいいか・はぐれた!と思ってもその場から動かない・エレベータや階段に近づかない・お店の人以外の人に話しかけられてもついて行かない etc.)・恐怖を感じたら大きな声を上げる(必ず大きな声を出す練習をさせること)・怖い思いをした時は親や先生に話す

小学低〜中学年のための安全教育

小学校に入学するととともに衝動的な行動は減り、徐々にルールを覚えていきます。低学年の内は親の手元を離れる機会は少ないにしても、お友だちと公園で遊んでいる内に、親の目の届かないところに行ってしまったりと、行動範囲が広がる時期ですので、はぐれた場合の行動についてよく教えておく必要があります。また、避難訓練など学校で防災に触れる機会も増えていきますので、家庭でも話題にすると良いでしょう。

「たいせつな いのちと あんぜん」

家庭で一緒にルールを確認する時には、文科省より出ている安全教育のパンフレット「たいせつないのちとあんぜん」が使いやすく、わかりやすいです。

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「たいせつないのちとあんぜん」| 文部科学省

親子で一緒に読みながら、「こういう時、○○ちゃん/くん だったらどうする?」「どうして、それが良いと思う?」と投げかけたり、ロールプレイングをしても良いでしょう。

「いかのおすし」

「いかのおすし」とは「(知らない人について)いかない、(知らない人の車に)らない、おきな声をだす、ぐにげる、らせる)」の頭文字をとった、防犯のための標語です。学校で子ども達も学ぶ機会が増えてきました。

「いかのおすし」の思わぬ落とし穴

ここまでの話であれば、既にわかりきっていると思う方も多いと思います。そんな方に読んでいただきたいのが、ALSOK広報部長によるYOMIURIオンラインに寄稿された記事。

ALSOKは2004年からCSR活動の一環で、学校教育現場での防犯セミナーを開催。広報課長の新屋氏は、標語は広がっているものの、子ども達の防犯教育には思わぬ落とし穴があると指摘します。

「いかのおすし」を知っているという児童の多くは、覚えやすいように要約された合言葉の表層部分を覚えているだけで、連れ去りの具体的な手口やその対処方法といった、被害防止を図るうえで重要な本質的なことが十分にイメージできていないように思えます。

例えば、「知らない人についていかない」という言葉については、「知らない人」の認識が親子でずれているケースがあるとのこと。親にとっては先生や家族以外を想像しますが、子ども達は自分や親の名前を知っている人や、街でよく見かける人、よく公園で話しかけてくる人は「知っている人」と認識している可能性がある、といいます。

標語を教えれば防犯訓練は終わりではない、ということが具体的な例えで分かるようになっています。ぜひ記事本文も読んでみてください。

www.yomiuri.co.jp

「おかしもち」と防災マップ

さない・けない・ゃべらない・どらない・かづかない」の頭文字をとった、防災標語。世代によっては、「おかし」だったり、「おかしも」だったり、と様々ですね。学校で防災訓練が実施されていますので、校内だけではなく、通学路や家庭で災害に会った時の対応方法についても、親子で話し合う必要があります。

特に通学路では親子で一緒に歩きながら、防災マップを作ってみても良いでしょう。塀の近くや看板など落下物の危険性があるところを避け、できるだけ広い道の真ん中でランドセルで頭を防護しながらしゃがむこと(もちろん車には注意)、避難所に指定されている公園・学校などの場所を教えていきます。

またホームでは端に立たずできるだけ中央にいることや、満員電車の中では周囲の大人が気づないこともあるので「助けてください」と声を上げること、アパートやマンションに住んでいるならば、エレベータの中で閉じ込められた場合の対処方法について、家族の集合場所も話し合う必要があります。

 

小学校3年生から早い子は塾に通う、お稽古事に通うようになり、学校ー自宅の往復だった行動範囲が一斉に広がっていきます。また、インターネットを使うようにもなるので、サイバー空間での安全も考える必要があります。

次回は小学校中〜高学年からの安全教育について考えます。

>>次の記事「安全教育について考える(3)」 

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[文責=くぼようこ]

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