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ドイツ 教育制度まとめ | ギムナジウム・レアルシューレ・ハウプトシューレ

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(ドイツでは、小学校4年生で成績に応じ職人・一般事務・総合職のキャリア選択を迫られる。一斉行進型の日本と異なる教育制度に注目。)[画=photoAC/きなこもち

文科省発表「諸外国の教育統計平成29(2017)年版」を基に、諸外国の教育制度をまとめます。今日はドイツの教育制度をテーマに見ていきます。

 

 

ドイツの学校制度

ドイツの学校制度がここまで見てきた日本や他国と大きく異なるのは、10歳から就学・キャリア選択が3つに分岐する点です。

ドイツの日本で言うところの小学校(グルントシューレ)は6歳から始まり10歳まで。日本の小学校4年生までの成績で、担任の教師と相談の上、5年生以降通学する学校を以下の3種類から選択することになります。

・ギムナジウム…大学進学者向け高校

・レアルシューレ(実科学校)…16歳から事務職など企業で就業する人向け

・ハウプトシューレ…15歳から職人として就業する人向け

▽ドイツの学校系統図

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ギムナジウム

ギムナジウムへの進学者は全体の41%程度。(参考:文部科学省資料) 小学校5年生に相当する年から大学1年生に相当する19歳までギムナジウムで学習し、高校卒業認定資格試験と大学入学資格試験を兼ね備えた「アビトゥーア」試験を受験します。

アビトゥーア

アビトゥーアはフランスのバカロレアと性質的には似ていますが、ギムナジウムで一定の成績を収めないと受験できません。言語・文学・芸術、社会科学、数学・自然科学・技術の3領域から4科目(または5科目)を選択し、少なくとも筆記試験3科目+口述試験1科目を受験することとなります。

レアルシューレ・ハウプトシューレ(ミッテルシューレ)

ハウプトシューレ(ミッテルシューレ)はドイツの伝統的なマイスター制度に則り、15歳で卒業後はOJTで職業訓練を行います。ハウプトシューレを卒業の後も、18歳になるまでの3年間は週に1〜2日、職業学校で学ぶ義務があります。

職業訓練開始の平均年齢は1970年代は16.6歳でしたが、近年はハウプトシューレ卒業後も職業専門学校に進学する学生が増えてきたことや、ギムナジウムを卒業してから大学に進学せず職業訓練に入る学生も増えてきたこともあり、2000年代に入ってからは19歳まで上昇してきていると言います。(参考:労働政策研究・研修機構

一方レアルシューレは、ハウプトシューレより1年長い就学期間が設けられ、16歳で卒業した後は事務職などに就く他、上級専門学校や専門ギムナジウムなどに進学し、アビトゥーレ受験を経て大学進学を目指すことも可能です。

デュアルシステム

職業訓練は企業が訓練生のポストを用意することで実施されています。こうした職業訓練と就学を並行して行うドイツの「デュアルシステム」は、25歳以下の失業率を他世代と比較し低く抑えているとして、評価されてきました。

訓練生は平均3年半の職業訓練を企業にてOJTで受けた後、商工会議所や手工業会議所などの認定試験を受け職業資格証を取得します。

ところが2000年代に入ってから企業が用意する訓練生のポストが減少していることが問題となり、シュレーダー政権時代には、職業訓練の機会を提供しない企業に対して課徴金をかける政策をとりました。

また、伝統的なマイスター制が、社会・市場の変化についていけなくなってきていることや、職業訓練を通じて得たスキルの陳腐化も加速していることも、ドイツにおけるデュアルシステムの課題と見られています。

統合制学校(ゲザムトシューレ)

こうした時代背景の中で、ハウプトシューレは減少傾向にあります。その一方で増えてきたのが、ギムナジウム・レアルシューレ・ハウプトシューレを統合した形のゲザムトシューレシュタイナー教育を実践するヴァルドルフ学校も代表的な例です。ドイツではシュタイナー教育やモンテッソーリ教育などのオルタナティブ教育を実践する学校が、進学の一つの選択肢として捉えられています。

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高等教育の日独比較

ここから日独の高等教育について、大学・短大の進学率と、大学の授業料について比較していきます。

大学・短大進学率

日本:大学・短大進学率 56.8%(H28学校基本調査より)

ドイツ:大学・短大進学率 36%(内閣府高大接続資料より)

教育段階が単線型で全員平等の教育・キャリア機会を提供することを重視する日本に対し、早期に就業・キャリア段階を分岐させるドイツでは、大学進学率に大きな隔たりがあります。そもそもギムナジウムへの進学者が41%と高くないことから、大学進学者が低くなるのは当然の結果と言えるでしょう。

大学の年間授業料

ドイツの大学は国立大学・私立大学・教会立大学の3種類があり、その数の内訳は国立238校、私立125校、教会立38校となります。国立大学は無償または年間1,000ユーロ(15万円)程度と抑えられているものの、大学の専攻によって、または私立大学を選択すると年間20,000ユーロ(300万円)程度となるケースもあります。(DAAD ドイツ学術交流会Webサイト

今日はドイツの教育制度を見ていきました。10歳の成績でその後のキャリアに繋がる学校を選択することになる分岐型の教育制度は、全員が一斉行進型の日本とは大きく異なります。早期にキャリア教育に着手することで、親子共々階層社会の現実を早くに認識し、子どもには就業観を育むことになります。

一方、古き良きマイスター制がテクノロジーの発達に伴って形を変えざるをえず、ハウプトシューレや職業訓練のあり方には変革が求められており、2018年3月に再任したメルケル首相の今後の手腕が問われます。

[文責=くぼようこ]

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