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デジタル教科書とは | 2019年4月から導入で何が変わる?

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(35,800円のiPadを私費購入して教室で使用する学校も。デジタル教科書の導入によってあらゆる生徒の学びの質を高められる一方、導入コストは課題だ)[画=photoAC/acworks]

2018年5月25日、参院本会議で「デジタル教科書」の導入が可決され、2019年より施行されることになりました。デジタル教科書とは何か?どんなことができるのか?まとめていきます。 

デジタル教科書はどう導入される?

デジタル教科書を導入するにあたり、学校制度のルールを定める学校基本法が改正されることになっています。

どのように導入される予定なのでしょうか。文科省の資料や報道によると、ポイントは以下のとおり。

    • 現状は紙の教科書を使用することが定められている
    • 2019年4月から小中高校の授業の一部でデジタル教科書を併用可能に
    • デジタル教科書とは検定済教科書を電子データにしたもの
    • 視覚障害・発達障害など紙の教科書を通じた勉強方法が困難な生徒は全ての授業でデジタル教科書を使用可能
    • デジタル教科書はタブレットなどを用いて利用可能になる
    • タブレット自体は学校から貸与または家庭で負担し持参
    • 紙の教科書は無償給付されるがデジタル教科書の費用は家庭負担となる

上に加えて、紙の教科書に著作物を掲載する際に著作権者の許可を取る必要はありませんでしたが、その内容を電子化したデジタル教科書についても、許諾の取得が不要となります。

デジタル教科書でできるようになること

紙の教科書では教材が文字・図・絵の限られた3つの方法で表現されていたのに対し、デジタル教科書の魅力は幅広い表現方法。

ここでは検定教科書を出版する、東京書籍光村図書のWebサイトから特長を見ていきます。

インタラクティブ(双方向)な学習

生徒が触ると図やイラストが動かせたり、書込みや消去、切り貼りが簡単になったり。

これまではわざわざプリントをハサミで切ったり、のり付けしたりしなければできなかったことが、簡単にタブレット上でできるようになりました。

例えばこんな活用方法が考えられます。

  • 算数・数学の図形の問題で、図の向きを変えたり・動かしたりしながら解き方の糸口を見つける
  • 国語で文章読解を行う際に、段落毎の中心的な内容の文章のみを抜き出して切り貼りする
  • 教科書の内容をタブレット上で切り貼りしたり自分で書き込んだりしながらオリジナルの教材・学習ノートを作成する

ユニバーサル対応

デジタル教科書ならば、書いてある内容を文字で読み上げたり、見辛い文字を拡大したり色を変えることも自由です。

  • 音声読み上げ機能:視覚障害やディスレクシア(読み書き障害)があり、文字情報を目で捉えて学ぶのが困難な場合や、教科書を持ち支えるのが難しいなど肢体障害がある場合に、教科書の内容を音声で聞くことができる
  • 色の反転・文字の拡大:紙の教科書では白地に黒字だったところ、黒地に白字という具合に色を反転させる、文字や図を拡大するなどのことが可能になり、生徒一人一人にあった形で表示させられる
  • ルビ・分かち書き:漢字にルビを振ったり、文章を意味のかたまり毎に分けて表示する"分かち書き"( ex.「今日は 海に 行きました」)での表示の切り替えが手軽にでき、学習が追いついていない生徒の理解を助ける

直感的な理解を促す

ユニバーサル対応以外にも、表現の幅が広がることで生徒の直感的な理解を促すことができます。

  • 漢字の学習時、タブレットに表示されるガイドを順番に指でなぞり、書き順を動きで覚える
  • 古典など生徒が共感しづらい題材について動画をタブレット上で視聴し、世界観を理解させる
  • 同じ言葉でも言い方が違うことで相手に与える印象が変わることを音声で聴いて知る

タブレットは誰の負担?

ここまでデジタル教科書のメリットを紹介していきましたが、デジタル教科書を授業で取り入れるためには、生徒がそれを閲覧するためのタブレット端末が必要となります。

PCやネット環境、投影装置、タブレットなどのデジタルを教育現場に取り入れることは教室の「ICT化」と呼ばれており、文科省・都道府県の教育委員会を中心に進められています。

▼教育のICT化について知りたい方はコチラ

www.educedia.org

生徒33人にタブレット1台

文科省が2017年3月末に発表した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、学校現場へのタブレット端末の導入台数は37万3,475台。

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 上の図では増加傾向にあることや3年で5倍の伸びと謳ってはいますが、生徒6人で1台使える程度に普及しているコンピュータの総台数は202万台。

数をならしてしまうと、タブレットは33人で1台程度の普及率となります。クラス人数分のタブレットを確保している学校と、一切導入していないところの差があると見えます。

学生の私物デバイスを利用するBYOD

BYODとは(Bring Your Own Device/直訳:自分のデバイスを持参する)の略で、生徒自身のスマホあるいはタブレット端末を学校に持ってきてもらい、使うというものです。

BYODの学校現場への導入には、いくつかのポイントがあります。以下にまとめます。

  • デバイスは学校側が指定するケースが多い(iPadなど)
  • タブレットは私費で購入してもらう
  • 生徒用の校内LANを成績など機微情報が載るLANと分ける
  • 不注意で破損させないよう適宜カバーの着用などを促す

BYODは私立学校や情報学科などの専門性のある学校で早くから研究・導入されています。 

iPadの教育価格は35,800円〜

しかしこれが公立学校で実施されるようになるのは、ややハードルが高いかもしれない、と言われています。

Appleの教員・生徒用のストアで売られているiPadの価格は35,800円から。

24回(2年間)分割金利0%で購入できるため月1,500円。難しくはないかもしれませんが、破損など取り扱いには十分注意させなければならず、貧困家庭で購入できるか、という点は厳しいでしょう。

 

今日はデジタル教科書について見ていきました。

[文責=くぼようこ]

※ Educediaは主宰者の研究・論考を目的としています。記事に含まれる情報は、読者の皆様ご自身の責任においてご利用ください。また、本記事の情報は記事公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性があります。

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