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どうなる?高等教育無償化 | 年収380万円未満世帯なら負担軽減

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(高卒と大卒では生涯賃金で7,500万円の差がつくという。格差の連鎖を断ち切るべく、低所得世帯向けの大学や専門学校の無償化が2020年、始まる。)[画=photoAC/acworks]

先日幼保無償化が、2019年10月からスタートすることが発表されました。安倍政権は当初2017年秋の衆院選で、高等教育についても所得に応じ無償化・負担軽減する方針を発表していた筈。高等教育無償化はどうなるのか?見ていきます。

高等教育無償化の対象者・減じる額は?

朝日新聞の報道によると、2020年4月から非課税世帯は国立大学の授業料が免除、私立大学入学の場合も一定額まで支援が受け取れます。一方年収380万円未満の世帯は2段階で支援される、というのが政府方針です。

所得に応じた支援

つまり大学や専門学校など高等教育を受けるにあたり、支援は3段階あるということになります。以下に、それぞれ目安となる年収と支援内容について整理します。(参考:新しい経済政策パッケージー高等教育関連部分抜粋ー | 文科省資料

  • 住民税非課税世帯:国立大学は授業料免除、私立大学入学の場合は国立大学の授業料+一定額までを免除、ほか短期大学・高等専門学校・専門学校入学の場合も授業料免除。さらに大学進学時の生活費については給付型奨学金がその生徒個人に支払われるものとする。
  • 年収300万円未満:住民税非課税世帯に対する支援額の3分の2を支援
  • 年収380万円未満:住民税非課税世帯に対する支援額の3分の1を支援

ここで言う「年収」とは各種税金や保険料を引かれる前の支給額を指します。

企業勤めの人は税金や社会保険料などを引かれた状態で給与が振り込まれると思いますが、手取りではありませんので注意してください。

また年収が380万円未満であったとしても、多額の資産があれば支援は受けられません。

ちなみに住民税非課税世帯の学生は生活費について、本人に給付型奨学金が支給されるとあります。

これは家族や親族が学生本人に代わって奨学金を受給した場合、それを自らや他の家族の生活費や遊興費に使用してしまうケースがあるため。

奨学金の本来の目的を外れ、結果学生本人に多額の負債が残ってしまうのを防ぐ狙いです。

住民税非課税世帯とは?

住民税非課税世帯とはどのような状況の人たちを指すのでしょうか?

住民税が非課税になる人にはいくつかの条件があり、家族全員が住民税非課税の対象となっている世帯を「住民税非課税世帯」と言います。

非課税となる条件は3パターン

住民税は各市区町村で徴収されるものです。非課税対象となる人は以下の3つの条件のどれかを満たした人ということになります。

  • その年の11日現在で、生活保護法による生活扶助を受けている
  • 障害者、未成年者、寡婦、寡夫の方で前年中の合計所得金額が125万円以下(給与収入になおすと、2044千円未満)
  • 前年中の合計所得金額が各市区町村の定める金額を下回る人

生活保護世帯の条件

厚労省のWebサイトを基に簡単に説明すると、生活保護とは①預貯金や生活に使用しない土地などの売却可能な資産 ②働いて得ることが可能な収入 ③年金や各種手当 ④親族の収入 を総動員してもなお、生活に必要な最低水準の収入を下回る世帯を対象に支給されます。

最低生活費の基準は市区町村別に等級と、世帯を構成する人員毎に計算方法が定められています。(参考:市区町村別の等級表はコチラ、計算方法はコチラ

例えば東京都国立市(1級地1−1)在住、17歳の子どもが1人いる母親40歳の母子世帯の場合は、上記表から計算した14万6,150円の生活扶助に住宅扶助最高69,800円を加えた月21万5,950円が最低生活費となります。

以下は厚労省の資料に掲載されている最低生活費の一例です。

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全ての大学が無償化される訳ではない?

実は高等教育が無償化されるのは、政府方針では外部人材の理事や実務経験のある教員による授業について一定の水準をクリアした大学のみとされています。

高等教育をせっかく無償化しても、大学で産業界に有意な人材を育成できなければ、大学に進学しても結果的に所得の低い状況に止まってしまう、というのが政府の言い分。そこで産業界からの人材登用の進んだ大学を対象に、無償化をしようというのです。

ちなみにこれに反発しているのは国立大学。毎日新聞の報道によると、86の国立大学の内、こうした政府方針に「反対」と答えた大学は72校と7割を超えています。

確かに2017年10月の内閣人生100年時代構想推進室の資料によると、国立大学は私立大学と比較しても産業界から登用された理事の数が少ないことが指摘されています。

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低所得世帯を対象とした大学の無償化は2020年4月から。対象大学なども含め今後も状況を見守る必要がありそうです。

 

今日は高等教育無償化について調べてみました。

筆者個人の意見として、産業界から登用された理事が増えれば=産業界に有意な人材が育つのか、と言われれはそうでも無い気も。

むしろ「Fラン校」としばしば呼ばれる大学が、経営を成り立たせるために勉強があまり好きでもない学生の入学ハードルを下げ、現場が教育困難に陥っていることの方が問題と感じます。

また先ほど引用した人生100年〜資料では、高卒と大卒の生涯賃金には7,500万円の差があるとされています。

大学は学士を育てるところとするなら、無理にFラン校や一定水準以下の大学に進学するのではなく、高専や専門学校卒でしっかり職業人としての技術を磨くことで生涯賃金が担保される仕組みを作らなければなりません。

例えばヨーロッパのように、職業訓練を通じて資格を取得し、就業に際して資格の有無が問われることで、職業訓練を受けた人々の権利が担保される社会づくりが必要では、と感じています。

 

[文責=くぼようこ]

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