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「『未来の教室』とEdTech研究会」とは | 経産省主導有識者会議

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(EdTechの活用によって生徒の主体的な学びやカスタマイズされより効果的な学習環境の提供が実現できると予想。)[画=photoAC/きなこもち]

2018年1月、経産省主導で始まった「『未来の教室』とEdTech研究会」。6月時点で4回にわたる研究会が開催されています。今日は研究会で検討中の提言を基に、2030年の教育とEdTechについて考えます。

「『未来の教室』とEdTech研究会」とは

「第4次産業革命」「AIの進化が今ある人間の仕事を変える」「テクノロジーの発達によって産業界は今以上に予測不可能となる」「誰もが100歳まで元気に生きる、人生100年時代の到来」 etc.

これからの社会の変化を表現する言葉はたくさんあります。

そうした中で、社会に求められる、自らの力で生きていける人材を育む次世代の教育方法に、スポットライトが当たっています。

研究会の目的

「『未来の教室』とEdTech研究会」は、東大名誉教授の森田朗氏を座長、デジハリ教授の佐藤昌宏氏を座長代理に迎えて、2018年1月に経産省主導で立ち上げられました。

研究会の詳細については以下のように紹介されています。

(1)就学前教育・学校教育・リカレント教育の場の未来の姿(「未来の教室」)と、(2)そのために開発すべきEdTechの姿、(3)その開発と教育現場への導入に向けた諸課題を検討する研究会

(引用:『「未来の教室」とEdTech研究会』を設置します~産業と地方創生の未来を切り拓く人材育成の場とEdTechの姿を考えます~(METI/経済産業省)

研究会メンバーには文科省や内閣府の担当者も名を連ねていますが、話す内容はあくまでも理想的な学習環境から逆算した教育テクノロジー(EdTech)。教育制度について検討する研究会ではありません。

また教育の目的は、産業界において有用な人材を育成すること。

人材力の強化を就学前教育・学校教育・リカレント教育の3つの接点から成し遂げようとしており、市場の変化や社会のニーズ、産業界の国際競争などを背景に議論が進められています。

第一次提言の内容

本研究会を通じて、現在第一次提言が取りまとめられています。

ここから2018年6月4日に開催された第4回研究会でまとめられた第一次提言(案)の骨子を見ていきます。

社会の変化と求められる力

技術革新によって、今後肉体だけではなく頭脳も含めた単純労働が機械や人工知能に取って代わられると考えられています。

そうした社会の変化の中で、人々にとって重要な力は、大なり小なり社会課題・生活課題の解決に向けて、何か新しい価値を創り出していくアントレプレナーシップであると提言内では述べられています。

日本の教育の課題

ところが研究会では、現況の日本の教育について、社会の変化に対応できない以下の5つの課題が指摘されています。

  • 子どもたち自身にどう生きるか、なぜ学ぶか向き合わせず、ただ勉強だけさせる
  • 浅く広く学ぶことが中心で応用や探求は2の次
  • クリティカルシンキングや問いそのものを疑う訓練が不足している、教員のシナリオ通りに授業が進められる
  • ルールは守るもので自ら作るものとして教わらない
  • 学校や塾に費やす生徒の労力とそれで得られる効果の比較が不十分

こうした課題の内一部は、昨今の学習指導要領改訂や高大接続改革でも改善が図られようとしています。

「50センチ革命」「越境」「試行錯誤」

これからの時代を生き抜く次世代に必要な力は上記の3つと提言内に記載されています。

「50センチ革命」とは、自分の身の回り50cmから少しずつカイゼンをすること。「越境」は自分の守備範囲を超えて様々な領域とコラボレーションすること、「試行錯誤」はトライアンドエラーを繰り返しながら実現・実装に向かうこと。

こうしたアクションが可能な人材に求められる能力(コンピテンシー)として、提言の中では以下のように語られています。

「50センチ革命」を起こすには、自己効力感、共感力、圧倒的な当事者意識、課題発見力、挑戦 する力等が必要であり、「越境」するには、多様性の受容力、コラボレーション、様々な分野の話題を 理解できる基礎学力等が必要となり、「試行錯誤」で結果を出すには、遊び心、創造性、巻き込む 力、対話力、リフレクション(省察)、失敗からの回復力等が必要になるであろう

未来の教室とは新たな「学びの社会システム」

こうした状況を背景に、本プロジェクトが目指すのは、EdTechを通じ学校だけではなくあらゆる教育サービスが連携する新たな社会システムの実現です。

EdTechを通じ子どもの成績情報や学習履歴などのデータが取得・活用されれば、教育内容が最適化されることで、労力対効果となる「学びの生産性」が高められます。

結果、生徒は1コマ40分の授業を1日6コマ、という具合に、制度で決められた時間を学ぶのではなく、もっと短い時間で効率的に学ぶことができるようになります。

同時に教員も学校現場での仕事を効率化できます。

また子どもたちは学び方を自分に最適化できるようになるので、画一的で一方的な学習環境から解放されて、自らの興味を探求できるようになります。

さらに自宅にいても興味に応じてMOOCを利用することで、世界の知見を得られるチャンスがあります。

自分が教わる教師も、あてがわれた学校の先生ではなく、自分の学習の進捗や相性に応じた先生を学校・塾などから選ぶことができるようになるかもしれません。

 

未来の教室〜の提言で注意したいのは、社会に有用な人材の育成が目標であること、学習困難者についての議論は傍に置き、比較的優秀層を中心に捉えている点です。

今日は未来の教室の第一次提言について見ていきました。

[文責=くぼようこ]

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