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STEM教育とは | 理数系人材を育成するSTEM教育とは?(1)

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(2011年オバマ大統領の一般教書演説で大々的に打ち出された「STEM教育」。国際的な競争力の源泉になると予想されている。)[画=photoAC/acworks

2020年から小中学校で学習指導要領改訂によりプログラミング教育がスタート。プログラミング教育よりも大きな教育の概念と国際的な戦略、今日は「STEM教育」について見ていきます。

STEM教育とは?

STEM教育とは、以下の分野の頭文字をとったもの。

 Science(科学)

 Technology(技術)

 Engineering(工学)

 Mathmatics(数学)

理数系人材育成プランの総称です。

 

2011年、オバマ大統領が一般教書演説で、米国の世界的な競争力を高めるイノベーション人材を育成する戦略としてSTEM教育を大々的に打ち出したことが、注目されるきっかけとなった、と言われています。

STEM(科学・技術・工学・数学)それぞれの違いと役割

文系の人間にとっては、STEMと言われても、なかなかその中身を想像することは難しいもの。そこで少々乱暴な例かもしれませんが、ロケットが飛ぶまでの流れをSTEMに分けて考えてみました。

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ロケットを飛ばしたいと考えた時、エネルギーを生み出すため酸素と水素の反応を使おうと考えます(科学)

そしてロケットを飛ばすために必要なエネルギー量を計算し、水素と酸素をそれぞれどの程度用いる必要があるのか計算します(数学)

エンジンでは一定の時間安定して酸素と水素を燃焼し続けなければならないので、反応をコントロールする技術が必要です(技術)

この技術をエンジンに搭載しロケットを飛ばすところまでを作り上げます(工学)

数学と科学は現象を解き明かす分析のために必要な学問、技術・工学はより実用段階で要求される学問と言えるでしょうか。

また、今話題のビッグデータは統計学なので数学、IoTは科学と技術、ロボットの製作は工学と技術、という具合に、領域によっても重視される分野が変わりそうです。

STEM(理数系)教育=プログラミング教育ではない

STEM教育というと、ついロボティクスやAIなどのICT(情報技術)分野を連想してしまいますが、STEMが示しているのはICTやプログラミングの教育よりも広い概念。

今、クリーンエネルギー・ヘルスケア・バイオ・宇宙・原子力など、様々な分野で研究開発・イノベーションが求められています。

例えば、気候変動・地球温暖化に伴う風力・太陽光・バイオ燃料など環境負荷が少ないエネルギーの開発や、医療分野ではiPS細胞などのような人工細胞の開発、イーロン・マスク氏率いるスペースXが推進する民間ロケット打ち上げプロジェクトなど、STEM人材が求められる場面は多岐に渡ります。

STEM人材は早期からの教育が重要

これらのイノベーションには、理数領域の優秀な研究者、ひいてはそうした研究者を育てる教員の養成、教育の充実が不可欠です。

そこで日本国内では、高校ではSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール認定校)の設置、小学校・中学校では学習指導要領改訂によって理数的な興味や思考力を育む教育を取り入れようとしています。

特に、理数人材は小学校段階から差がつくと言われています。幼い頃から理数領域に興味を持たせるとともに、物事を探求する姿勢を育てることが重要です。

【米国】オバマ大統領によるSTEM教育推進

STEM教育が世界的なキーワードとなった一つのきっかけにもなった、米国オバマ大統領の取り組みを見てみましょう。

日本国内でSTEM教育を推進しているのは、文部科学省とJST(科学技術振興機構)という国立研究開発法人です。

JSTのホームページには他国のSTEM教育に関するレポートが豊富に掲載されていますので、興味のある方は覗いてみてください。

 

今日参考にするのは、以下2点のレポートです。

米国:オバマ大統領一般教書演説2011

オバマ政権の 科学技術イノベーション成果100選 | 201610 

2011年一般教書演説で10万人のSTEM教員採用を発表

オバマ大統領は2011年、イノベーションとインフラ整備が雇用促進の鍵とし、クリーン・エネルギー分野をはじめとする科学技術分野への積極的な投資と人材育成に力を入れていく、と表明しました。

そこで「イノベーションの担い手を育てる教育」として一番に掲げたのは、10年間で新規に10万人のSTEM教育分野の教員を雇用するというものでした。

オバマ大統領5年間の取り組み

2016年までの5年間の中で、実現したSTEM教育施策は多岐に及びます。以下にその一部をご紹介します。

  • 幼稚園~高校の STEM教育の向上に10億ドル以上の民間投資投入

  • 3万人の教職員にSTEM教育訓練を実施

  •  ホワイトハウス主導でSTEMに関わる様々なイベントや企画を主催(サイエンスフェアー、天文学ナイト、コード教育(Hour of Code)、STEM分野のEラーニングサイト「We the Geeks(我らオタク)」)

  • STEM教育における男女・人種格差の是正を推進(STEM for All イニシアティブ

  • 上記に25,000万ドル以上の民間協力公約

  • ネット環境無しの学校の数を半減、2千万人の生徒に学校でのインターネット接続環境を提供

  • 20億ドルを生涯学習のためのEラーニングサイトOpen Education Resources, OER創設に投資

    これまで16分野6,000種類以上の教材をアップロード、利用者は10万以上の教育教材を視聴

  • STEM教育に対するジェンダーなどの偏見を取り除くよう、メディアなどに働きかけ

以上、STEM教育に焦点をあててオバマ大統領の取り組みを紹介しました。(科学技術各方面の研究者交流や基礎研究への投資、就労支援なども精力的に行なっています。詳細はレポートをご参照ください。)

次回は日本でのSTEM教育の取り組みについて見ていきます。

>>次の記事「理数系人材を育成するSTEM教育とは?(2)」

[文責=くぼようこ]

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