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奨学金破産とは・日本の大学と家計負担

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(奨学金で破産する人が5年で1万5,000人との報道。日本では国立大に自宅から通っても、4年で生活費含め900万円かかると試算される。)[画=photoAC/Ni-photo

上昇する大学の授業料と奨学金破産が社会問題となる中、今日は日本において大学進学時にどの程度の家計負担が試算されるのかと、政府が注目するオーストラリアの所得に連動した奨学金返還制度「HECS」を見ていきます。

日本における大学進学の家計負担は大きい

2018年2月12日付、朝日新聞の報道「奨学金破産、過去5年で延べ1万5千人 親子連鎖広がる」が、ネット上で大きな波紋を起こしています。

朝日新聞が取材したのは、日本学生支援機構(JASSO)。奨学金は国内に様々ありますが、1943年に始まった独立行政法人で、貸与額は1兆円ほどになると見られています。

日本ではどの程度大学進学にお金が必要か

JASSOの資料によると、大学入学1年目にかかる金額(概算)は国立大学で約82万円(内授業料は54万円)、私立大学文系で約115万円(内授業料は75万円)、私立理系で約150万円(内授業料は105万円)となっています。

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1年目にかかる学費 | JASSO(奨学金ガイドブック2017)

これに生活費が加わります。引き続きJASSOの資料によれば、自宅通いの学生は年間約168万円(4年で672万円)、下宿生は約213万円(4年で852万円)と計算され、私立理系大学に進学すると初年度で最大350万円以上かかる計算となります。

シミュレーションしてみましょう。4年間でかかる学費・生活費の合計は以下の通りです。 

A 国立大学進学、実家暮らしの場合…約914万円
B 私立大学文系進学、実家暮らしの場合…約1,057万円
C 私立大学理系進学、一人暮らしの場合…約1,373万円

ポイントは、国立大学も近年入学金・授業料が上昇しており、私立大学と大きく変わらないこと。日本の大学進学にかかる費用の家計負担額はOECD先進国の中でも高いと言われています。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金

現在、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金利用者は2016年度で131万人いると言われています。

JASSOの提供する奨学金の種類には、2017年より開始された給付型、一定の収入審査がある無利息貸与、有利息貸与があります。無利息型の奨学金の利用者は50万人あり平均237万円、有利息の利用者は81万人で343万円といいます。

高等教育費(大学進学費)の無償化が検討中

こうした中で、安倍政権は高等教育費について一定所得以下の世帯に対しては無償化の方向で進めています。

具体的には
 ① 住民税非課税世帯(概算で年収255万円、所得161万円)の高等教育無償化
 ② 授業料に一定の上限を設けること
 ③ 高等教育支援については生活費も加味すること
 ④ 既に2017年からJASSOで開始しているような給付型の奨学金を強化すること
が挙げられます。

同時に、諸外国の政府が教育費を支援する奨学金制度についても研究を進めており、その一つとして今回と次回見ていくHECSが挙げられます。

HECS(オーストラリア 高等教育費負担制度)とは

HECSとはオーストラリアの高等教育費(高等教育とは大学にかかる教育費のこと)負担制度のこと。Higher Education Contribution Systemの頭文字をとって、HECSとされています。

第4次安倍内閣が2017年12月8日に発表した、新しい経済政策パッケージでも、今年2018年夏までの重点議論事項として「HECS等諸外国の事例を参考とした検討」が挙げられています。

大学改革や教育研究の質の向上と併せて、オーストラリアのHECS等諸外国の事例も参考としつつ、中間所得層におけるアクセスの機会均等について検討を継続する。

オーストラリアは日本と同様、OECD各国の中でも家計の教育負担が大きいと言われています。

HECSの特長

HECSの特長は

  • 学生負担は年0円〜約90万円
  • 返済は卒業した後、一定の収入に達してから開始
  • 政府が重点人材育成科目とするコースはさらに負担減
  • 税徴収される
  • ・前払いや一括払いなどを利用すればさらに負担減 (2018年時点では廃止)

など、きめ細かな制度が設けられていること。

明日はこのHECSの詳細を見ていきます。

>>次の記事「HECS(オーストラリア高等教育費負担制度)とは」

[文責=くぼようこ]

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