(金融教材はYouTube動画からアプリ、Webコンテンツまで様々。対象も小学生から高校生まで幅広いレベルのものが公開されている)[画=photoAC/紺色らいおん]
前回は金融リテラシーとは何か、なぜ今金融教育が求められているのか、人口減少や高齢化など社会的な背景をご紹介しました。今日は日本銀行、日本証券業協会、日本FP協会が提供している小学生〜高校生向け金融教材を紹介します。
幼稚園年長〜小学校低学年
ホシガリ姫の冒険(教育アニメ)
おすすめ度:★★★★★(★5つ)
金融広報中央委員会「知るぽると」には、小学生向けの教材が揃っています。幼稚園〜小学校低学年のお子さんにオススメなのが、アニメ「ホシガリ姫の冒険」。20分ほどのアニメにまとまっているので、家庭で観るのも良いですし、授業前半で使用し、後半でディスカッションとして使うこともできそうです。(上画像はアニメより)
▽動画はこちらから(YouTube)
あらすじ
主人公のカトリーヌは、ワガママ放題のお姫さま。ドレスも靴もぬいぐるみも買ってはすぐに飽きることから、国民に何でも欲しがる「ホシガリ姫」と陰口を叩かれています。見かねた魔法使いが、ある日カロリーヌを庶民の姿に。そのみすぼらしい姿に誰も姫と気付かず、あっという間に城から追い出されたカトリーヌは、街外れに住んでいる家族に拾ってもらいます。そしてその家族と生活を共にする中で、お金の大切さを学んでいきます。
家庭や学校での問いかけが重要
「ホシガリ姫の冒険」は、重要な要素が網羅されており、よくできたアニメです。金融学習に利用する際には、以下のことを子どもに問いかけ、自身で考え、自分の言葉にすることを促すと良いでしょう。
問いかけ例:「貧しい少女の姿になったカトリーヌが『お金を貸して』と言っても、街の人が貸してくれなかったのは何故?」「街の人がカトリーヌにお金を貸していたら、あの時カトリーヌはどんな風に使ってしまったと思う?」
解説:今の姿がお姫様ではないから、ではなく、街の人も日々の労働の対価として得た大切なお金だから。もし物語の冒頭で街の人がお金を貸していたら、お金の大切さを知らないカトリーヌは、街の人の苦労も知らずに無邪気に浪費してしまっただろう、ということを想像させることができます。
問いかけ例:「カトリーヌや子ども達が両親にプレゼントを買って嬉しそうなのはなぜ?」「誰かのためにお金を使うことをどう思う?」
解説:「親へのプレゼント=孝行で良い」という構図を植え付けないことが重要だと思います。誰かを喜ばすことが自分の喜びになることもあること、そのためにお金を使うこともあることを理解するところから、お金を投資する感覚を養うことができます。お金は消えてしまうお菓子に使うこともできるけれど、使い方次第で思い出や誰かの喜びなどにも変わることが分かります。
小学校高学年
おかねのね | 知るぽると
おすすめ度:★★★★(★4つ)
①お金を使う ②お金の役割 ③お金と暮らし ④お金と仕事の4つのテーマに沿って、4コママンガを導入に、ワークシートを使って大人と子どもが一緒に考えるWebコンテンツです。
小学1-2、3-4、5-6年生それぞれに向けてコンテンツが用意されていますが、低学年ではまだ習わない漢字や慣れない表現も多く登場します。大人が一緒に読んでフォローするか、3年生頃から利用し、自分で進めるよう促すと良いでしょう。池上彰さんも監修に加わっています。
「100万円あったら、どうする?」| 知るぽると
おすすめ度:★★★(★3つ)
20分ほどのアニメ。銀行の仕組みや貯蓄の意味、消費者トラブルについて、3分程度の短い章立てでテンポよく復習できます。(上画像はアニメより)
▽動画はこちらから(YouTube)
「利子」や「クーリングオフ」などキーワードがぽんぽん出てくるので、知らないと耳に残らない可能性が高いです。これを観て理解できない時は、まずは前述した「おかねのね」に取り組むのが良さそうです。
一方、章ごとの動画が短いため、授業の導入に向いています。最初に観せて→キーワード解説の流れにも使えます。
登場人物が幼く、ストーリーや台詞が教訓的な内容なので、中学生ではシラケる恐れがります。小5〜6年生ぐらいまでが視聴の適齢期です。動画の最後に3問問題が出題されるので、答えさせる時間を設けても良いでしょう。
中学生
日本FP協会「10代から学ぶ パーソナルファイナンス」
おすすめ度:★★★★★(★5つ)
テキスト「10代から学ぶパーソナルファイナンス」 | 日本FP協会
基礎的なお金の使い方から貯蓄、将来設計まで幅広く学習できます。ワークシートが掲載されており、お金との付き合い方・自分の考え方を整理することができます。1冊500円ですが、内容はWebサイトに掲載されているPDFから読むこともできます。章立てでデータが分かれており、ポイントで使うと有効なことから、特にオススメの章をご紹介します。
必要な物(ニーズ)と欲しいもの(ウォンツ)を区別し、自分の「買いたい」と思う感情を整理するのに良いツールです。ワークシートを埋める形で、限られたお金を有効に使う方法を、俯瞰することに使えるでしょう。
雇用形態と時間・賃金の違いや、会社員になった場合の給与などが分かりやすく書かれています。働くことで賃金を得ることについて、リアルに数字で把握することができます。
金融経済ナビ | 日本証券業協会
おすすめ度:★★(★2つ)
マンガを通じて金融や経済、株式、証券について学ぶことができるWebサイト。簡単な言葉で書かれているので分かりやすい一方で、Webサイトの縦横幅やフォントサイズがやや見づらく、ユーザビリティが低めなのが難点です。
高校生
これであなたもひとり立ち
おすすめ度★★★★(★4つ)
「自分が生まれてから今までにかかったお金は?」「進学にかかるお金は?」「ひとり暮らしにかかるお金は?」などをワークシートに自ら書き入れられ、納得感が得られます。学校の教育現場で利用されることを想定して作られていますが、セルフチェックシートとして使っても良いでしょう。
番外編
労働条件(RJ)パトロール! | 厚生労働省
おすすめ度★★★★★(★5つ)
昨年2017年11月に厚労省が発表した、労働条件に関する法律を学べるスマホアプリ。RJ(労働条件)パトロールチームを動かしながら、アルバイトや会社での上司・店長などの話などから労働関連法令上、アウトな発言を見つけ出すというもの。ユーザに馴染みの深いメッセージアプリを想起させるユーザーインターフェースもよく工夫されています。
また、相談窓口も分かりやすく表示されており、学習だけではなく困った時に相談しやすい環境を作っている点が、評価が高いところ。高校生のいわゆる「ブラックバイト」の対策として非常に良いでしょう。
今日は主に公的機関が提供している金融教材を中心に見ていきました。中学・高校生になってくると、ニュースを基にして、教室や家庭で議論する機会を増やしていくことも重要でしょう。明日は、協会団体やNPOなどが主催する学習セミナーやイベントなどを取り上げます。
[文責=くぼようこ]
※ Educediaは主宰者の研究・論考を目的としています。記事に含まれる情報は、読者の皆様ご自身の責任においてご利用ください。また、本記事の情報は記事公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性があります。
他、転載や引用については「サイトポリシー」をご覧ください。
Educedia Twitterアカウント @educedia
記事のアップデートや注目のトピックスをご紹介します。