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高大接続改革とは?

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(日本の大学1年生の1週間あたりの学修時間は1〜5時間が過半数。米国では11時間以上が過半数を占める)[画=photoAC/はむぱん

 

2021年1月実施分から、大学センター入試が「大学入学共通テスト」に変更になるというニュースを、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今日は政府が取り組む、入試改革も含んだ「高大接続改革」について見ていきます。

 

 

高大接続改革とは

超高齢化社会に突入する日本。国立社会保障・人口減少研究所の発表によれば、 2060年には人口が9284万人まで減少、その内15歳〜64歳の生産年齢人口が占める割合は約半分の51.6%になると見られています。そこで2009年前後に訪れると見られていたのが「大学全入時代」への突入。若年層の人数が減少し、大学入学定員を下回るというものです。

これらを背景に、社会に有用な人材を輩出すべき大学が十分に機能していない、なんとなく高校を卒業してなんとなく大学に入学する学生の増加を危惧して始まったのが高大接続改革です。

 

日本の大学生は学修時間不足

高大学接続改革において問題視されているのは、大学生の質低下。それを裏付けるものとして中教審が発表した答申では、日米の学生が1週間に授業や予習・復習で勉強する時間を比較するデータが用いられました。

 

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大学4年生になると日米では逆転する傾向がありますが、1年生の学修時間を見ると、日本が週に1〜5時間が過半数に対して、米国では11時間が過半数となっています。学修時間としたのは、授業で受け身に学ぶのではなく、自発的に予習・復習を行う時間を含めるため。こうした結果から、日本の大学生の主体的な学習意欲に対して懸念が集まっている、というわけです。

 

改革内容は主に3つ

今回の改革によって実現されるのは、大学入試改革、高校の学力測定機会の導入、高校における教育カリキュラムの改善、の3つ。

①大学入学共通テストの導入

従来のセンター試験では、定量評価のしやすい暗記・再生能力を測る問題が中心でしたが、記述回答や問題文章を読み取る試験が多く導入された「大学入学共通テスト」への変更が予定されています。記述回答の他に、英語においては話す・聞く力も重視され、TOEICや英検、TOEFLなどが活用される動きも予定されています。

②高等学校基礎学力テストの導入

日本人の98%は高校に進学している中で、教育困難校が問題となっています。教育困難校では、学生の習熟度が追いついておらず、教員が生徒を卒業させるだけで精一杯。そのため、教員がキャリア教育や大学入学の意義を考えさせる機会もなく、生徒を大学に押し入れることになり、大学生の質低下の原因ともなっています。そこで高校生に対して基礎学力テストを実施、教育現場、生徒本人に自身の習熟度を客観視させるとともに、必要に応じたフォローが検討されています。

③高校学習指導要領改訂

高校の学習指導要領が改訂、自ら主体的に学習するアクティブ・ラーニングを授業に取り入れることや、理数科目の強化、プログラミング授業の実施、選挙権引き下げに伴う公共精神の育成などが焦点となっています。

 

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大学の「三つの方針」に改善要求

一方大学側は、学ぶことの意義や目的、学生に問う能力・資質を高校や社会に広く周知することが求められています。明確化すべきこととされているのは、下記「三つの方針」に分けられます。(以下文科省Webサイトより引用)

ディプロマ・ポリシー 

各大学がその教育理念を踏まえ,どのような力を身に付ければ学位を授与するのかを定める基本的な方針であり,学生の学修成果の目標ともなるもの。

カリキュラム・ポリシー

ディプロマ・ポリシーの達成のために,どのような教育課程を編成し,どのような教育内容・方法を実施するのかを定める基本的な方針。 

アドミッション・ポリシー

各大学が,当該大学・学部等の教育理念,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容等を踏まえ,入学者を受け入れるための基本的な方針であり,受け入れる学生に求める学習成果(学力の3要素※)を示すもの。

1)知識・技能,(2)思考力・判断力,表現力等の能力,(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度 

 

高大接続改革のスケジュール

高大接続改革が話題に上がったのは2012年。そこから中教審による検討と答申が行われ、いよいよ今年2018年度から、様々な改革がスタートしていきます。以下にスケジュールをまとめました。

 

20128月 平野文部科学大臣(当時)からの諮問

「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」

201412月 中教審による答申

20163月 高大接続システム改革会議による最終報告書の公表

2018年度中 高等学校基礎学力テストの運用開始

2021年1月 大学入学共通テストの運用開始

2020年4月 高校学習指導要領改訂 授業の開始

 

次回は大学入学共通テストについて見ていきます。

 

>>次の記事「大学入学共通テストとは?(1)」

 

[文責=くぼようこ]

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