(2021年1月からはじまる大学入学共通テスト。国語・数学に導入される記述式回答問題のポイントは?)[画=photoAC/キイロイトリ]
前回は、高校教育や大学入試改革の背景にある、「高大接続改革」とは何か、なぜ・どう行われるかを見ていきました。今回・次回は、2021年1月の試験からセンター試験の代わりにスタートする、大学入学共通テストについて見ていきます。
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数学・国語は記述回答方式が導入
大学入学共通テストへの変更において目玉の一つが、記述回答方式の導入です。高大接続改革の目的は、暗記・再生能力史上主義の入試・教育からの脱却。思考力や主体的に学ぶ力を問うために、マークシート回答方式・記述回答方式の両方で考える力を重視します。
そこで思考のプロセスや言語化能力を図ることができる記述回答方式が数学・国語(古文・漢文は除く)に導入されます。
ではどのような問題が出題されるのか。大学入試広報センターが公開している、モデル問題を見ていきます。
モデル問題ー国語ー
問題例:
かおるさんの家は、「城見市街並み保存地区」に面している、伝統的な外観を保った建物である。城見市が作成した景観保護に関するガイドライン資料と、かおるさんの父と姉との会話を読み、後の問いに答えよ。(一部省略・意訳)
学生はA4サイズびっしり2枚情報が掲載されたガイドライン資料(左)と父・姉の会話資料(右)を読んで以下のような問いに答えることになります。
出題例:
会話文中の傍線部「一石二鳥」とは、この場合街並み保存地区が何によってどうなることを指すか、「一石」と「二鳥」の内容がわかるように四〇字以内で答えよ(ただし、句読点を含む)。
正答例:
景観を守るガイドラインによって、治安が維持され観光資源として活用されること。
記述問題では、数十字の短文を求める問題と、百字程度の長文記述が出題されます。上記の短文記述では、要素を余すことなく入れて作文することがポイントです。
一方で、長文記述の問題も見てみましょう。
出題例:
父と姉の会話を聞いて、改めてガイドラインを読んだかおるさんは、姉に賛成する立場で姉の意見を補うことにした。かおるさんはどのような意見を述べたと考えられるか。次の条件に従って述べよ。
条件1.全体を二文でまとめ、合計八〇字以上、一二〇字以内で述べること(後略)
字数以外にも「〜について述べること」「〜から引用すること」など条件が複数提示され、それを基に文章を組み立てていくことが求められます。上の問題では、姉はどのような意見を持っているか、資料から読解し、問題で要求されている内容が示す本文を見つけ、要約することが求められます。
理数系は国語の記述問題は不利?有利?
これは受験国語の指導経験がある筆者の個人的な見解ですが、受験国語は論理的な思考能力が問われるものばかりです。上記のような試験は高校受験などでも非常にオーソドックスな出題パターン。①長文を読むスピード ②必要箇所を本文から探す力 ③体言止めや助詞をうまく使って言葉をまとめる力 の3つが問われ、練習量によってコツを掴むことは可能です。
オススメの勉強方法は、一度時間を測りながら解いた後、時間を気にせず設問を読んだら資料の本文に線を引きながら解き直すこと。資料に明記されている文章のどこを参照したら良いのか、検討をつける練習をすると良いでしょう。
モデル問題ー数学ー
一方、数学の記述問題とはどのような問題になるのでしょうか。多くの問題は、下記のように図やグラフなどを読み取り、式を記述させるものです。
出題例:
下の図のように座標平面上に4点A(2,0),B(0,2),C(-2,0),D(0,-2)を頂点とする正方形ABCDがある。
点Eは点Aから出発してx軸上を移動し、点Fは点Bから出発してy軸上を移動する。ただし、2点EFは、常にBF=2AEの関係を満たしながら移動するものとする。またE,Fの原点Oに関する対称な点をそれぞれE’, F’とし、4点E,F,E’,F’を頂点とする四角形の面積をSとする。
Sのとり得る値の範囲を不等式を用いて表せ。
正答例:0<S≦9 または S>0かつ S≦9
一方、国語と同様に資料を読み込ませ、数式によって考えを証明する方法を問うような問題も出題されます。
出題例:
太郎さんと花子さんは次の記事を読みながら会話している。
∠APBが鋭角であることを確かめる方法を、△APBの3辺の長さAB,AP,BPについての式を用いて説明せよ。
このように数学の問題では、式の作成を通じ、問題に論理的に答える力が問われます。また問題文が長いものもあることから、①状況に応じ必要な公式を引っ張り出す力に加え、②設問を読みこむスピードも問われそうです。
計算自体の難易度が上がっているのかは数学教師の方の意見を伺うのが良いでしょう。
次回は英語の試験について見ていきます。
[文責=くぼようこ]
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