(2018年2月13日から全国6,720名の高校2年生を対象に、英語パートのプレテストが開始された。スピーキング・ライティングの試験実施方法は検討中。)[画=photoAC/akizou]
前回記事では、2021年1月からセンター試験の代わりにスタートする大学入学共通テストの記述式回答問題について国語・数学それぞれの出題パターンを解説していきました。今日は改革の目玉のもう一つ、英語試験の変更について見ていきます。
「読む」「聞く」に加え「話す」「書く」力が重視
大学共通入学テストで最も大きな変更となるのは、リスニング・リーディングに加えて、スピーキング・ライティングの試験が大学入学選抜における評価対象に追加されることです。
これを政府や各種英語団体は「英語4技能」と呼んでいます。
自身でも、読んだり聴いたりするインプットはできても、話す・書くアウトプットは苦手、と思う方は多いのではないでしょうか。
実際に大学入試センターの資料によると、高校3年生対象の調査では、4技能が英検3級以下(3級で中学卒業レベル ※日本英語検定協会が示す基準)の学生は、以下のような割合となったそうです。
「読むこと」 66.4%
「聞くこと」 71.9%
「書くこと」 80.4%
「話すこと」 87.2%
書く・話すことを苦手とする生徒が多いことがわかります。また4技能全体を通じ、高校在学中に十分な英語スキルを身につけられていないことも窺えます。
既存の検定試験が利用可能に
「書く」「話す」力の測定については、大学入学共通テストの試験会場でも受験が可能な他、英検などの各種検定試験の利用も検討されています。具体的に代替が可能な検定試験についてはまだ決まっていません。CEFR(セファール;Common Europian Framework Reference)と呼ばれる、EUにおける語学力基準に照らし合わせ、評価される予定です。
CEFRに照らした各検定試験のレベルは以下のとおりです。
(平成27年度英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第2回)配付資料 | 文部科学省)
既存の検定試験を利用するには?
大学入学共通テストに検定試験の結果を利用するにあたっては、以下の流れが検討されています。
・高校3年生の4月〜12月の間に2回まで受験可能
・大学入試センターの依頼を受け検定事業会社が、対象学生の得点とCFERに照らした場合のレベルを大学に提供
大学入学共通テストのために検定を受験した場合に、その検定料はどのようになるのか。また共通テストの場でどのように実施・採点に手間のかかる「話す」「書く」試験を実施し、評価するのか、という点はまだ検討のさなかにあります。
数字で見るセンター試験
大学入試センターの資料によると、センター試験の利用者は毎年約56万人。大学入試におけるセンター試験(今後の大学入学共通テスト)の影響は非常に大きいと言えます。
・毎年受験者は約56万人(大学入学予定者の8割、高卒見込者の約4割)
・694大学、154短大で利用可
・国公立大 100%、私立大 90%がセンター試験を利用
・700会場、8万人の試験監督員
今後は700ある会場でどの程度の期間で「書く」「話す」試験を実施できるか、その場合の監督者は何名必要となるのかなどの試算と、実現可能な案に着地させることが求められます。
まとめ:2/13〜3/3の間でプレテスト実施
以上のような変更を受け、2018年2月13日からは、全国で「読む」「聞く」を測るプレテストが開始されました。全国158の高校、6,720名の高校2年生が対象です。「読む」力の測定に際しては、正答1問のみを選ぶのではなく、当てはまる解答全てを選択させる形式の問題が出る他、リスニングの試験では読み上げ回数を1回とするグループと2回とするグループが設けられました。結果はCEFRに照らし合わされ、検証される予定です。
ここまで2回に分けて、大学入学共通テストを見ていきました。高校における学習の一つの出口が大学進学であるなら、新しい試験を導入することで高校での教育のあり方も変わってくるでしょう。○×採点に比べると評価指標が曖昧にならざるを得ない「話す」「書く」 能力。正確な評価、実施が今後の運用の鍵となります。
[文責=くぼようこ]
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