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子どもの痴漢被害を防ぐには | 安全教育について考える(4)

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(中学に上がると子どもの行動範囲が広がり電車の利用も増える。痴漢対策について子どもも含めたオープンな議論が求められる)[画=photoAC/とちぎ

前回記事では、子どもが被害に遭う住宅周りの死角や、小学校中学年以上で学習したい防犯・防災・インターネット上のリスクについて取り上げました。今回から数回にわたり、中学生以上を対象とした安全教育を取り上げます。今日は痴漢の問題を取り上げ、女子高生が始めたプロジェクトを紹介します。

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中学に上がると新しい種類のトラブルがある

中学生になれば、通学経路も小学校時代よりも長くなり、電車や自転車を日常的に利用するようになります。部活などで帰りが遅くなる、友人と外出することも頻繁にあるでしょう。スマホを持つ生徒も増え、リアルでもネットの場でも子ども達の行動範囲が広がります。

また中学・高校に上がると、子どもが慣れない上下関係に驚いたり、不良行為を見聞きすることもあるでしょう。子ども達には防犯・防災に加え、身近な人とのトラブルを防ぐこと、自分が加害者とならないこと、モラルを改めて教育し、困難なことが起きた場合には思春期のさなかでも、親や教師、信頼できる大人に相談できる環境を作ることが求められます。(自衛や相談など、身を守るための態度については、下記「Eduさんぽ vol.1」の記事後半でまとめています)

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www.educedia.org中学生・高校生の痴漢被害を防ぐ

平成27年度犯罪白書によると、1年間の、痴漢など電車内での強制わいせつの検挙数は3,400件以上。多くは若い女性を狙っており、女子高生だけではなく、小学生・中学生も被害に遭うことがあります。また下記はあくまでも検挙数であることに注目。つまり、被害に遭っても泣き寝入りしている人の数はもっと多いのです。法務総合研究所の調査では、性的事件の被害に遭ったことがあると回答した人27人の内、届け出たのはわずか5人。つまり8割方泣き寝入りをしていることになります。よって痴漢の発生件数1万7,000件を超えると推測できます。

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こうした状況の中で「痴漢 中学生」と検索すると、アダルトサイトが上位にヒットしてしまうのが、日本の悲しい状況です。被害を相談する口コミサイトのコンテンツやこうしたアダルトサイト、ニュースが上位に上がり、対策のためのコンテンツの層が薄いのです。

今すぐできる痴漢対策

痴漢被害に遭わないために、どのような点ポイントに気をつければ良いのでしょうか。(参考:セコム 女性のためのあんしんライフ

車内の立ち位置を変える

一般的に電車内では、被害者にとって逃げ場の無い・痴漢にとって逃げやすいスポットが狙われやすくなると言います。そこで、犯人に手すりや壁との間に追い込まれやすいドア近くや手すりの傍、シートの端の席などを避けて立つ・座るようにします。

混雑を避け乗車する時間・車両を見直す

人と密着せざるを得ない満員電車や、長時間停車しない急行電車などは狙われやすくなります。乗車時間や車両を見直し、極力空いている電車に乗れるよう工夫するのも一つの手です。例えば別の路線が乗り入れている、始発駅の違いなどで、10分変わるだけで列車の混雑度が変わるケースもあります。また何かと話題の女性専用車両ですが、あるのであれば積極的に活用すべきです。

服装や見た目を変える

制服でスカートを履いているならば、下に体操着や厚手のショートパンツを履くなども良いでしょう。スカートが膝上だから狙われる、という話はアテにはなりません。むしろ、大人しそうな見た目の女性の方が狙われやすいとも言われます。

ホームや車内でも周囲を警戒

痴漢はホーム上でターゲットに狙いを定め、電車に乗り込むとも言われます。イヤホンで音楽を聞くことに夢中、スマホをいじることに夢中な女性はターゲットになりやすいので、必ず周囲に気を配るようにします。目線をしっかりと配るだけでも効果があります。自分を執拗に見ている人間に気づいたら、電車に乗らない、改札に引き返し、ついてくるなら駅員さんに助けを求めましょう。そしてその後暫くは乗車する時間帯を変え、友人と通学するようにします。

堂々とする・威嚇する姿勢

見るからに警戒心が強そう、対抗してきそう、と感じる相手には手を出しづらいもの。胸を張り、しっかり足を踏みしめて立つようにします。また、人に身体が当たらない位置に自分の向きを小まめに変えるのも良いでしょう。またセコムのWebサイトで紹介され筆者もなるほど、と思ったのが「防犯ブザーを取り出す」「携帯の着信音を鳴らす」。痴漢はエスカレートしていくため、違和感を感じたら、ブザーを取り出すことで相手にプレッシャーが与えられ、また携帯の着信音を鳴らすことで周囲の目が集まる効果があると言います。

大阪の女子高生による「Stp痴漢バッジ」プロジェクト

そんな中でご紹介したいのは、痴漢被害に遭っていた大阪の女子高生とその母親が2016年に始めた、「Stp痴漢バッジ」キャンペーン。テレビでも多く取り上げられていたので、記憶にある方も多いかもしれません。

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立ちあがれJK! - 痴漢抑止活動センター -より)

「痴漢は犯罪です」「私達は泣き寝入りしません」といったメッセージが缶バッチに可愛いイラストと共に書かれ、肩掛けバッグの取手などに付けることが想定されています。痴漢は大人しそうな女性を狙うという説もあり、こうした形で抵抗する意思を示すことで、抑制に繋がる狙いがあります。

10代は、性に対する戸惑いや恥ずかしさを強く感じる時でもあり、SOSや抵抗するメッセージを発することができない子どもも多いので、こうした草の根の活動は心強いですね。現在、この活動は一般社団法人痴漢抑止活動センターとして法人化し、主に関西を中心にボランティア活動や啓蒙活動が広がっています。

scb.jpn.org

 

次回は子どもの「ながらスマホ」の加害者にさせないためにと交通安全について見ていきます。

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[文責=くぼようこ]

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