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「ながらスマホ」我が子が加害者になる時 | 安全教育について考える(5)

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(ながらスマホによる死傷者の発生が問題に。自転車運転では小中高生・大学生が加害者となり、1億円の賠償金が発生したケースも)[画=photoAC/チョコラテ

前回記事では女子生徒にとって脅威となる痴漢のリスクと対策を取り上げました。今日は中高生になりスマホを持つと増える「ながらスマホ」の危険性と交通安全教育について考えます。 

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「ながらスマホ」我が子・生徒が加害者になる時

中高生になり子どもがスマホを持つようになると、熱中する様子を度々見かけるかもしれません。居間、電車の中、食事中、時に歩きながら。「ながらスマホ」による事故は今や社会問題。我が子や自分の生徒も、人ごとではありません。

女子大生が運転するながらスマホ自転車が起こした死亡事故

2017年12月、神奈川県で女子大生が電動自転車を運転中、当時77歳の女性に衝突。女性はほどなく亡くなりました。当時女子大生は左手にスマホ、右手に飲み物、左耳にイヤホンという状況で、衝突するまで通行する女性に気づかなかったといいます。女子大生は今年2018年に入り、2月に重過失致死罪で書類送検。残されたご遺族、旦那様のコメント(NEWSポストセブン)を読むと、その心痛は如何ほどかと苦しくなります。

「ながらスマホ」運転事故は年に2,000件

政府広報サイトに掲載されたコンテンツによると、原付以上の運転者が年間で起こしている事故件数は減少傾向に対し、スマホ利用が原因となっている事故率は上昇。

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2016年には1,999件と2,000件近くになりました。このデータはあくまでも原付以上の事故記録で、自転車は含まれません。スマホ運転による自転車の事故数は、毎日新聞の報道によると、2011年は154件、12年209件、13年158件、14年166件、15件128件との警察庁発表があるといいます。

自転車事故による賠償金で1億円の事例も

当然ながら自転車事故は「ながらスマホ」だけが原因ではありません。2013年、当時11歳の少年が自転車走行中に女性と正面衝突、女性は意識が戻らない状況となりました。その際加害者の少年が命じられた賠償金は9,521万円。また2008年には男子高校生が道路を斜めに横切り、対向車線を直進していた男性の自転車と衝突。男性は重大な障害を負い、加害者の男子高校生には 9,266万円の賠償金が命じられました。(参考:日本損害保険協会Webサイト

いずれも被害者やその家族の人生を大きく狂わしてしまった事故。それを我が子や生徒が引き起こす可能性はどこにでもあります。

「ながらスマホ」で踏切侵入、列車に轢かれた死亡事故も

 「ながらスマホ」に話を戻します。先ほどの毎日新聞の報道によると「ながらスマホ」による死亡事故には、被害者側が「ながらスマホ」をしていたケースも多く見られます。むしろ、2011年〜15年の5年間で発生した815件の事故の内、死亡事故となった4件は全て亡くなった方が「ながらスマホ」でした。例えば「ながらスマホ」で自転車を運転、遮断機が下がっていることに気づかずスピードがついた状態で踏切に突入、列車に轢かれたケースがあります。

「ながらスマホ」で自転車は東京都道路交通規則違反

 「ながらスマホ」による自転車運転に対しては、実際に罰則も課せられます。

東京都道路交通規則第8条

「自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持して通話し、

 又は画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。」
【罰則】5万円以下の罰金

自転車でも悪質な違法運転は前科となるケースも

警察による自転車の違法運転の取り締まりには、現在2種類の警告方法があります。一つは警告として切られる「自転車指導警告カード」。これは罰則や送検の対象にはなりません。もう一つが赤切符。悪質な違法運転を行なった場合には取り調べを受け(送検され)、場合によっては略式起訴され罰則の対象となります。略式起訴されるといわゆる「前科」がついた状態になります。

さらに2015年6月からは3年以内に2回以上赤切符を切られた場合、規定の講習を受ける義務が生じ、受けなければ5万円の罰金が発生するようになっています。この制度を「自転車運転者講習制度」といいます。

交通ルールを再確認

子どもが使っている自転車のライトは大丈夫でしょうか、ブレーキは故障していませんか?遅刻しそうなため猛スピードで走行、信号無視も…、というのは人ごとではありません。交通ルールを守らせることは、子どもの命と人生を守ることでもあります。

注意させたい危険運転の一例

□ 無灯火運転(ライトを付けずに自転車を運転)

□ ブレーキ故障

□ ながらスマホ

□ 猛スピードでの走行

□ 信号無視

中高生はガミガミ言っても逆効果

〜しなさい、〜は大丈夫なの?という声かけが有効なのは小学生まで。中高生にもなれば、親や教師からの耳に痛い言葉は、右から左に流れるものです。

だからこそ、冒頭で紹介した痛ましい事件のニュース・記事のURLなどを、子どもにLINEしてみては如何でしょうか。また教員であれば、印刷して教室で配付するのも良いでしょう。

そしてそれはたった1度やってみたところで、9割方流されて終わりと心得ます。しかし繰り返し、手を変え品を変えて情報を与えていくと、少しずつ子どもの考え方も変わってきます。ぜひ、家族で・学校で、交通安全について考えてみる機会を持ってみてください。

次回は子どもを取り巻くネットリスクにどう対応するか、考えます。

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[文責=くぼようこ]

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