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国際バカロレア(IB)とは

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(ハーバード大など世界のエリート大学が重視する入学資格の一つ、国際バカロレア資格。その日本語版の卒業生たちが今年2018年3月、卒業を迎える。)[画=photoAC/RRice

皆さんは国際バカロレアを聞いたことはあるでしょうか。グローバル・エリートの育成プログラムを想像する方もあるかもしれません。今日はグローバルに活躍する子どもを育成する国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)について見ていきます。

国際バカロレア(IB)とは

国際バカロレアは1968年からスタートした、国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する世界標準の教育プログラムです。

幼児期〜初等中等教育にかけて主に3段階の教育課程があり、最終段階のディプロマ・プログラム(DP)を修了し所定の試験に合格すると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得できます。

IBプログラムは、2017年6月1日現在、世界140以上の国・地域、4,846校において実施されて、IB教員は世界に7万人、卒業生は120万人以上います。(参考:International Baccalaureate Organization Webサイト

世界のエリート大学が支持

国際バカロレアが日本国内で注目される理由は、ハーバードやオックスフォード、ケンブリッジなどの世界的なエリート大学がバカロレアを活用した入学審査を行なっているため。

そこで将来的に我が子をグローバルエリートに育てていきたい、国際的な感覚を持った子どもに育てたい、という親御さんが注目しています。そのため国際バカロレアというと、一般的にはこの大学入学資格とそのための高校での教育課程を指すことが多いです。

3歳〜19歳まで3段階の教育課程

文部科学省のWebサイトによると、3段階の教育課程それぞれは以下のとおりとなっています。

1.プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP 【世界1,509校 (国内:22校)】
3
歳~12歳を対象として、精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラム。どのような言語でも提供可能。1997年設置。
 

2.ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP 【世界1,398校 (国内:14校)】
11
歳~16歳を対象として、青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。どのような言語でも提供可能。1994年設置。
 

3.ディプロマ・プログラム(DP 【世界3,209校 (国内:33校)】
16
歳~19歳を対象としたプログラムであり、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能。原則として、英語、フランス語又はスペイン語で実施。 1969年設置。

ディプロマ・プログラムが先行して設置され、徐々に低年齢層に向けたプログラムが開始していったイメージです。

また日本には対応している学校がまだありませんが、上記に加え、世界136校あるキャリア教育・職業訓練のためのキャリア関連プログラム(CP)もあります。

授業は英語なの?

3歳〜12歳を対象とするプライマリーと、11歳〜16歳を対象とするミドル・イヤーズはどの言語でも対応が可能で、日本語での授業・評価の実施が可能です。

大学入学資格を得ることができるディプロマにおいては、原則は英語、フランス語、スペイン語となっていますが、2015年4月入学生から一部の認定校での一部科目において、日本語での授業・試験が可能になりました。これを「日本語DP」といいます。

日本語DPの対象科目は、経済、歴史、生物、化学、課題論文、知識の理論、CAS(創造性・活動・奉仕)、数学(SHHL)、物理です。

ディプロマ・プログラムでの学習内容

上でご紹介したように、国際バカロレアの教科編成は、日本の学習指導要領とは大きく異なります。文科省の資料を参照してみましょう。

単位取得が必要な科目

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上記6つのグループから1科目ずつを選択し、計6科目を2年間で履修することになります。強化によって長い時間を費やし高いレベルまで学ぶ上級レベル(HL240時間)と標準的な学習時間を費やすSL150時間)があり6科目中3~4科目はHLまで学習しなければなりません。(※上図の青字・赤字は日本語での学習が可能な科目)

科目履修に加え3つの必修科目

上記に加え、さらに以下の3つの学習を行います。

・課題論文(EEExtended Essay
履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる。

・知の理論(TOKTheory of Knowledge
「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促す。最低100時間の学習。

・創造性・活動・奉仕(CASCreativity/Action/Service
創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬での自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組む。

ディプロマ試験の合格ライン

国際バカロレア資格(IBディプロマ)の取得には、上記課程を全て修了し、最終の筆記試験等において、45点満点中 24点以上を取得する必要があります。

配点は、グループ1~6の科目で各7点(計42点)、3要件で計3点。日経新聞の取材によると、ハーバード合格ラインはこの試験で40点以上、できれば42点を出すことが求められるようです。

以下は都立で国際バカロレア認定を受けている都立国際高校の校長への取材記事です。興味のある方はぜひどうぞ。

style.nikkei.com

国際バカロレア(IB)の実態

国内でも体験談はあまり多くありませんが、2014年の東洋経済の記事が興味深く、ご紹介します。

以下は元国連職員の大崎麻子さんと国際バカロレア資格を取得したその息子さんの体験談が紹介されています。途中では徹夜が続き、猛烈に勉強した2年間だった、といったコメントがあるなど、ハードな学校生活が窺えます。

toyokeizai.net

国内の国際バカロレア認定校

認定校は文科省のWebサイトに一覧が記載されています。

ディプロマ・プログラムを日本語DPで提供している学校は、以下の8校のみです。上で紹介した都立国際高校は日本語DPが無いため、所定の科目は全て英語で実施されることとなります。

仙台育英学園高等学校(※仙台育英学園高等学校ホームページへリンク)   

茗渓学園高等学校(※茗渓学園中学校高等学校ホームページへリンク)

筑波大学附属坂戸高等学校(※筑波大学附属坂戸高等学校ホームページへリンク)

東京学芸大学附属国際中等教育学校(※東京学芸大学附属国際中等教育学校ホームページへリンク)

山梨学院高等学校(※山梨学院高等学校ホームページへリンク)

法政大学女子高等学校(※法政大学女子高等学校ホームページへリンク)

英数学館高等学校(※英数学館小学校・中学校・高等学校ホームページへリンク)

沖縄尚学高等学校(※沖縄尚学高等学校・附属中学校ホームページ)

日本は現在、国内の国際バカロレア認定校を200校まで増やすことを目標としています。

日本人には、世界に通用する真のグローバルエリートが非常に少なく、またこうした国際バカロレア資格を取得しても、その可能性を生かす受け皿が国内では限られてしまうことが課題です。

日本語DPが導入される前までは、バカロレアは上記元国連職員の大崎さん親子のように、元々国際感度の高い一部の家庭向け、というニュアンスがあったように思います。

日本語DPの導入によって、国際バカロレアに挑戦したい若者のための間口は広がりました。日本語DPの卒業生は今年2018年3月卒業。これからの彼らの十分な活躍を日本社会が支援できるのか、それとも優秀人材の国外流出となるだけなのか、これからが問われています。 

[文責=くぼようこ]

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