(藤井聡太六段やGoogle創業者を生み出したと言われるモンテッソーリ教育。自立した子どもが育つとして、その教育法に注目が集まっている。)[画=photoAC/heartsan]
「モンテッソーリ教育」について聞いたことはあるでしょうか?元は1900年代、イタリアの女性博士が療育のために提唱した教育法で、日本では英才教育の一つとして注目されています。今日はモンテッソーリ教育について見ていきます。
モンテッソーリ教育とは
Google創業者のサーゲイ・ブリン&ラリー・ペイジや、ピーター・ドラッガー、そしてAmazonのジェフ・ベゾスなどイノベーター達を生み出したと言われる「モンテッソーリ教育」。
将棋の藤井聡太六段も幼少期にモンテッソーリ教育に触れていたとのことで、改めて注目されています。主に就学前の幼児を対象とした教育法ですが、海外にはモンテッソーリ教育の小学校もあります。
子どもの自立を促し集中力を高める
モンテッソーリ教育の教育効果として注目されているのが、自立・自律、高い集中力、落ち着いた人格を育むこと。
元々モンテッソーリ教育は、イタリアの医学博士マリア・モンテッソーリが、知的ハンデを持つ子ども達のために1900年代に提唱・推進した療育から始まっています。
子どもの行動観察に基づいて教育指導方法が考えられており、子ども達の自発的な成長をいかに大人が大人の都合で邪魔しないか、如何に伸ばしていくかに重きが置かれています。
遊びや日常生活の練習を「お仕事」と呼ぶ
モンテッソーリ教育では、遊びや幼稚園で学ぶ日常生活に関わる活動を「お仕事」と呼びます。モンテッソーリ教育の内容がよく分かる動画がこちら。
4歳のジャクソン君の、あるモンテッソーリ教育の幼稚園での1日をコマ割写真で紹介したものです。
ジャクソン君は幼稚園に到着してから、気ままに好きな「お仕事」に取り組んでいきます。絵を描いたり、グラデーションのカラーチップを並べたり、 木で作られた模型を磨いたり、昼食の準備をしたり。
遊びも含めた幼児に必要な能力を育むためのこれらの「お仕事」に、子ども達は発達段階に応じ1日決められた時間以上取り組むことが望ましいとされています。
イヤイヤ期も子どもの能力が伸びる「敏感期」の一つ
モンテッソーリ教育の特徴のもう一つは、子どもが何かの行動や能力を習得するため繰り返し同じことをする期間を「敏感期」とする点です。
お友達に玩具を取られると火がついたように泣き出す、怒り出すような、突発的に癇癪を起こすように見えるイヤイヤ期も、モンテッソーリ教育では秩序を学習するための「敏感期」の一つとされています。
敏感期には、言葉・秩序・感覚・運動・数・文化の6つがあり、両親や教師はそれを阻害せず、子どもが固執する事柄に没頭できる環境を維持することが重要、としています。
子どもの発達段階に応じた教育
モンテッソーリ教育では、0〜2歳と3〜6歳で段階を2つに分けて教育を行います。ここからは日本モンテッソーリ教育綜合研究所のWebサイトを基に紹介します。
0〜2歳
モンテッソーリ教育では、0〜2歳までの生まれてからの2年間を、「吸収する心」を持つ時期(幼年前期)としています。
大人が知性により知識や情報、スキルを習得していくのに対し、この時期の子どもは、生命そのものが持つ力によってぐんぐん周りの物事を吸い込んでいくのです。
モンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園・保育園では、0歳をニドクラス、1〜2歳をインファントクラスと呼び、クラスを分けて接します。この0〜2歳の時期に行う教育内容は以下の7種類です。
粗大運動・・・歩行などの全身運動
微細運動・・・手指による運動
日常生活の練習・・・服の着脱・植物の世話など
言語教育・・・子どもの発達段階に応じ語彙を増やす
感覚教育・・・モンテッソーリ教育の教具を通じ豊かな感性を身につける
音楽・・・音楽を聴いて体を動かす、楽器を鳴らす、歌を歌う
美術・・・クレヨンや粘土を用いて自由に表現する楽しみを知る
2歳半〜6歳
2歳半〜6歳の子ども達は「プライマリー」の段階。
1つのクラスにまとまり、年長が年小の面倒を見るのがルールです。この段階では子どもの人格ができ、知的に物事を学んでいくようになります。
「敏感期」を迎えるのもこの頃。様々な教材を使いながら、より進んだ教育を行います。
日常生活の練習・・・歩く・はさみで切る・洗濯するする・包丁を使うなど、大人の真似をしながら日常生活の様々な所作を身につける(※上で紹介したビデオの中で、ジャクソン君が木を磨き、昼食を盛り付けていたのはこの日常生活の練習です)
感覚教育・・・大きさや重さ、色、音などの微妙な違いを持つ教材を使って、「対にする」「分類する」「段階づける」などの操作を行う(※ジャクソン君がしていた色板を並べる遊びは、この感覚教育です)
上の2つに加えて行われる以下3つの教育は子どもの知性に働きかける内容で、小学校のお受験塾を想起します。モンテッソーリ教育が早期教育として注目を集める点でもあるでしょう。
言語教育・・・言葉と絵が書かれたカードなどを用いて語彙や文法を学ぶ
算数教育・・・算数棒やビーズなどを使って数の概念や計算を学ぶ
文化教育・・・歴史や地理、生物、音楽などを学ぶ
モンテッソーリ教育を行なっている幼稚園・保育園
上記総合研究所のWebサイトにモンテッソーリ教育の実施園一覧が紹介されています。興味がある方はご覧になって見ると良いでしょう。キリスト教系の幼稚園・保育園が多い傾向にはありますが、キリスト教を教えるものではありません。
今日はモンテッソーリ教育について見ていきました。非常に興味深い教育方法であり、マリア・モンテッソーリの著書研究なども今後随時行なっていきます。
[文責=くぼようこ]
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