(フランスは、米国・イギリスに次いで、世界で3番目に留学生が多い。大学入学のハードルは低いが退学率も高く、エリート教育機関としてのグランドゼコールがあるのが特色だ。)[画=photoAC/acworks]
前回記事では世界で第2位の留学生受入数を誇るイギリスの大学事情・入試制度を見ていきました。今日は第3位のフランスがテーマです。
フランスの大学事情
フランスの高等教育は、大学、グランド・ゼコール、高等職業訓練機関の3つに分けられます。
学士課程は3年または4年。大学1〜2年目は一般教養課程、3年目から学士課程となり、専攻分野の学習がスタートします。1年は9月から始まり、9〜1月、2〜6月・7月の2学期制です。
大学の費用は年2万3,800円
在日フランス大使館のWebサイトによれば、フランスには83の大学があり、そのほとんどが国立・公立。
フランスは学費が安いことでも有名で、公立の授業料は基本無料、国が定めた登録料が年間183ユーロほど(2013-4年実績)。1ユーロ130円程度とすると年間2万3,800円ほど、ということになります。
誰でも入学できるが退学率が高い
後述しますが、フランスの大学には入試制度がなく、希望すれば誰でも入学できます。
しかしフランスにおける大学とは学問を極める場所であり、初年度で生徒の半分が脱落すると言われるほど厳しいもの。留年も1年しか認められず、強制退学となります。米国・イギリスと同様、卒業することに価値があると見なされていることが分かるでしょう。
エリート養成所としてのグランド・ゼコール
フランスの高等教育で注目したいのは、グランド・ゼコールと呼ばれる大学以上にハイレベルな専門家教育機関。
日本で言うところの将来のキャリア官僚を育成するENA(フランス国立行政学院)や、大学教員・研究者を要請する高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)や、理工学のエリート大学でノーベル賞受賞者なども輩出している、エコール・ポリテクニークなどがあります。
グランド・ぜコールに入学するのは、中等教育全卒業生の中でもわずか5%。2年間の準備課程を経て、グランド・ゼコールに入学したのちの将来は、ほぼ約束されています。
フランスの大学入試制度
フランスの中等教育を卒業した学生は、一律で卒業認定試験(フランス・バカロレア)を受験します。
フランス・バカロレアはIB(国際バカロレア)とは異なり、フランス内での卒業認定試験。1週間にわたって、複数科目の試験を受験します。8割方の学生が合格し、希望の大学どの学校でも入学が可能です。
留学生の場合は、DELF-DALFまたはTCFというフランス政府公認のフランス語学力証明を取得し提出する必要があります。
フランス・バカロレアとは
フランス・バカロレアには3種類あります。
・普通バカロレア(3年制大学への進学者中心)
・技術バカロレア(2年制の技術系短大への進学希望者中心)
・職業バカロレア(卒業後に就職を志す人中心)
普通・技術バカロレアは、リセと呼ばれる日本でいうところの高校の、3年間で専攻科目を学習し、最終学年で受験します。
一方職業バカロレアは、職業訓練リセで2年間の学習後、職業バカロレア取得のためもう2年通学し、最終学年で受験することとなります。
バカロレアの合格率は8割と高い一方で、リセに入学してからその後希望する進路に応じ系統を選択して専門科目を学習する必要があります。
それぞれのバカロレアで専攻できる分野は以下の通りです。
・普通バカロレア…自然科学、人文科学、社会科学
・技術バカロレア…工業、化学、医療、サービス産業、農産、農環境、舞台芸術、ホテル業
・職業バカロレア…事務業務、製造・サービス・建設など各種職種に関わる専攻
(参考:広島大学 大場淳, 2004)
ここまで見てきたように、フランスの大学は日本と比較しても非常に厳しく、ドロップアウトが当たり前です。またグランド・ゼコールのような、エリート教育訓練機関が存在する点で、階層が明確な社会とも言えるでしょう。
明日は「科挙」のイメージが強く、フランス同様、学歴が社会での地位を定める中国の、大学事情・入試制度について見ていきます。
[文責=くぼようこ]
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