(中国のセンター試験「高考(ガオカオ)」は900万人以上が受験。学歴が職業に直結する中国では「重点大学」と呼ばれるブランド校への入学が、受験生と親の悲願だ。)[画=photoAC/acworks]
米国・オーストラリア・イギリス・フランスと諸外国の大学事情と入試制度を見てきました。今日は中国がテーマ。6月に行われる大学入試の一斉試験は毎年日本でも過熱する様子が報道されますが、実態はどうなっているのでしょうか。
中国の大学事情
中国の一般的な大学(本科大学)は4年制または5年制で、9月〜1月、2月〜7月の2学期制です。
中国で言うところの文部科学省は「教育部」と呼ばれ、教育部直轄の国立大学と、中央政府の教育部以外に属する国立大学、地方政府管轄の公立大学、私立があります。
中国の大学は9割以上が国公立。中央政府教育部管轄は70校あり、地方政府管轄の公立大学は1,500校と6割を占め、私立は1割以下の300校ほどです。
大学のグローバルランキングで東大を上回る27位にランクインした北京大学、30位にランクインした科学技術に強い清華大学、エリート官僚を輩出する中国No.1の中国人民大学がはいずれも教育部直轄の国立大学で、中国におけるトップ3校です。
日本と1ケタ違う大学生数
中国の人口は2016年時点で13.6億人、内大学在学生は2,700万人ほど。
それに対して大学数は約2,300校、内学士が取得できる本科大学が約1,100校、 学士取得の無い短期大学である専科大学が約1,200校あります。
日本と比較すると、日本の大学在校生数は大学・短大合わせて約310万人、大学数は781校、短大数は352校なので、さすが1桁違います。(参考:文部科学統計要覧(平成28年版):文部科学省)
日本は学生数に対する大学数が圧倒的に多く、1校あたり平均すると2,600人ほど。中国は1校1万人の在校生数となり、大学数がまだまだ不足しています。
大学学費は上昇傾向
中国の学費1年間で5,000元ほど。この20年で25倍と、上昇傾向にあります。
1元16円で換算すると「なーんだ、年8万円」と思われるかもしれません。
しかし中国農村部の年間の平均可処分所得が3,000元とも言われる中で、農村部の人々は7年間働いてようやく子ども1人を大学卒業させられるわけです。所得に対し、どれだけ大学費用が高いかが分かるでしょう。(中国の調査データは様々なものがあり、公開データには1,000元〜1万元という開きがあります。)
後述しますが、中国では都市部と農村部の格差が大きく、大学学費を支払えるかどうかも、都市と農村では大きな隔たりがあります。
中国の大学入試制度「高考(ガオカオ)」
中国の大学入試と言うと、過熱する受験戦争を想像する方も多いのではないでしょうか。6月の大学一斉入試「高考(ガオカオ)」は有名です。
高考は2日間に分けて実施され、国語・数学・外国語が必修、それ以外に選択科目を受験します。高考は省ごとに実施され、国家統一試験とは言えませんが、この高考の結果が大学入試のほぼ全て。一部独自入試を適用する大学も増えてきていますが、1割に留まります。2017年6月7日・8日で実施された高考では約940万人が受験しました。
農村と都市部の機会格差
中国における大学入試の最大の特徴は、大学が入学生の戸籍地別に入学受入学生数を設定していること。
中国には農村戸籍と都市戸籍があり、その割合は6:4ほど。農村から都市へ戸籍地を変更することは厳しく制限されています。これは農耕就業者を国家として一定数確保するため。
大学入試以外にも所得や社会保険など、農村と都市では様々な格差があり、社会問題となっています。大学入試においては農村戸籍者の受入が都市部と比較すると非常に限られており、特に山東省と江蘇省は競争倍率が非常に高いと言われています。
重点大学に入学できたかが重要
進学先として人気が高いのは、国が優先大学として認め、積極的に投資する大学として認められている「国家重点大学」と呼ばれる88の大学です。
中国では日本以上に学歴が重視され、進学先の良し悪しで人生が決まります。また世間体を非常に気にする、日本人とも通ずるような国民性から、国家重点大学出身者かどうか、我が子の進学先は重点大学かどうかが重要とされると言います。
オーストラリアの大学事情・入試制度を見た回でも触れましたが、オーストラリアへ留学する中国人が爆発的に増えています。日本の大学も有望な進学先として多くの中国人学生が注目しており、その背景には、過熱する受験戦争や都市・農村部での格差、世間体の3つがあると見られています。
今日は中国の大学・入試制度を見ていきました。明日はシンガポールを見ていきます。
[文責=くぼようこ]
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