(日本は先進国の中でもダントツで起業意識が低い。大学発ベンチャー創出を支援するEDGE-NEXTに注目。)[画=photoAC/サンサン]
世界を席巻するイノベーティブな企業がなかなか生まれてこない日本。学生・修士生・若手研究者から起業家を生み出す観点から、文科省発で大学を中心とするコンソーシアムへの支援が行われています。
EDGE-NEXTとは
EDGE-NEXTとは起業家を育成するための国の支援事業です。2014年から前身のEDGE事業が文科省によって実施されており、一定の成果と評価があったことから2017年からもEDGE-NEXTとして、継続し行われることとなりました。
EDGE-NEXTでは、アントレプレナー育成に関わるプログラムやエコシステム構築に取り組む(大学を中心とした)コンソーシアムに対し、金額支援が行われます。EDGE-NEXTでは、年間3千万円~5千万円、2022年までの5年間にわたり支援することとなっています。
審査の上選ばれたのは国立大4校、私立大1校が主幹となる5つのコンソーシアム。2017年度の予算は3億3000万円で、2018年度以降2022年まで、毎年同程度の費用負担が想定されます。(参考:文科省資料)
背景に日本の起業活動率の低さ
起業は、雇用の創出とイノベーションによる経済発展の2つの観点から重要とされています。ところが日本国民は、「世界の先進国諸国の中でもダントツで起業意欲が低い」という衝撃的なデータがあります。
経産省からの委託で野村創業研究所が実施したGEM(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)調査によると、日本の起業意欲は調査対象国の中でも最低クラスで、平均を大幅に下回っています。
以下がその国別比較(2015年調査結果)です。
GEMでは、起業や独立意欲を問う「起業活動指数」を調査。日本は2013年は3.7、2015年では数値を上げ4.80でした。対し米国は2015年は11.88、中国は12.84です。
日本は終身雇用神話が根強く、企業に所属することが良しとされます。失敗に対する恐れに加え、知識・経験やロールモデルが不足していることも課題視されています。そこで、大学を中心にアントレプレナーを育成する取り組みが強化されることとなりました。
現在は2026年までにこの起業活動指数を倍増させることが、一つの目標となっています。
前身のEDGEプログラムは2014年始動
EDGE-NEXTの前身、EDGEプロジェクトは2014年にスタートしました。海外機関や企業、ベンチャーキャピタリストなどと連携し、産学官連携で学生や若手研究者の研究開発・事業化を支援する13大学を2016年度までの3年間にわたって支援しよう、というものです。9億700万円が予算額として決定し、55大学が応募、内13大学への支援が行われました。
EDGE-NEXT 2017年度採択機関
EDGE-NEXT採択校の募集は2017年2月〜4月にかけて行われ、12コンソーシアムが応募。東北大学東京大学、名古屋大学、九州大学、早稲田大学5大学が主幹するコンソーシアムが採択されました。
具体的にどんな取り組みをやっているのか見ていきたいところですが、残念ながら各コンソーシアムのサイトもまだあまり整っておらず、情報は非常に限られています。そこで情報発信を比較的積極的に行っている早稲田大学の取り組みを見ていきましょう。
早稲田大学 WASEDA-EDGE人材育成プログラム
起業を志す学生・学外の受講希望者を対象に、アントレプレナー教育のプログラムを提供しています。例えば、社会の問題から課題を発見し、組織を動かしながら解決に向かっていくデザイン思考やイノベーション思考、ビジネスモデルの確立に向け仮説設定・検証を学べる授業などです。
早稲田大学は2014年からEDGE採択校となっており、2年半でプログラムの受講者は2,222名、8件の起業実績ができています。
(起業事例)※早稲田大学学生・修士学生が受講中または卒業直後に起業
・skyer(スカイヤー)…ドローンパイロットの養成など
・テックノウス…スポーツ専用SNS「FanLive」の開発
・EAGLYS…AI、セキュリティ技術研究・アプリ開発
・若木国際医療コンサルティング…中国の医療・健康意識の改善
(参考URL:http://waseda-edge.jp/about.php)
今日は国が推進するアントレプレナー育成事業、EDGE-NEXTについて見ていきました。前身のEDGEは9億円投資があったのに対し、EDGE-NEXTでは3.3億円と目減りはしていますが、引き続き大学発ベンチャー企業の創出を強化していく構えです。
[文責=くぼようこ]
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