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傷病手当金とは | 病気や怪我・うつになったら知りたいお金のこと

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(病気や怪我、うつになって出勤できなくなったらどうすれば良いのか?今日は傷病手当金について。)[画=photoAC/acworks

生き残るために重要な力、それは金銭・金融に関する知識を自ら得る力・そして活用する力です。中でもセーフティネットに関する情報は重要。今日は、傷病手当金について見ていきます。

傷病手当金とは

傷病手当金とは、健康保険に1年以上加入している人が、病気や怪我、うつなどにより就業できなくなった場合に、給与の代わりに支給される手当のこと。勤め先ではなく、協会けんぽや、会社で登録している健康保険組合を通じて受給できます。

受給額は、簡単に言うと、それまで自分が受け取ってきた毎月の報酬額の3分の2。住宅手当や通勤手当なども含めて計算されます。

ただし、休職中に会社から傷病手当金を上回る額の見舞金などを受け取っている場合、その額は支給額から減額されます。

標準報酬月額とは

標準報酬月額は、4・5・6月に受け取った以下の報酬の合計平均額から計算されます。

・基本給
・通勤手当
・各種手当(残業手当、住宅手当、家族手当)
・年間で4回以上支給されている場合の賞与
・食事など現物支給は現金換算

含まれないのは、年3回以内の支給賞与と見舞金などの一時金です。「年3回以上の賞与」という言い方が非常に分かりづらいのですが、もしお勤め先が年に4回以上賞与支給があれば、4回目以降の賞与が標準報酬に含まれます。(多くの企業は年3回までしか支給されないので、稀なケースかもしれません)

上記の金額に対し、各社会保険組合は都道府県別に等級表を定めています。例えば協会けんぽの保険料額表を見てみましょう。東京の方で月給の平均額が24万5,000円だった場合、23万以上25万未満のレンジに入るので、等級は19級で標準報酬月額は24万円と見なされます。

受給可能なケース・対象外のケース

実際に自分は受給が可能なのか?分かりづらいその条件をご紹介します。

受給可能なケース

・健康保険加入期間が継続して1年以上
・給与や手当の支給が無い
(支給額が傷病手当受給額以下なら、差額受け取りは可)
・公休(土日休みなら土日)や有給取得期間を含み連続3日以上の労務不能期間があること

受給対象外となるケース

・既に類似の事由で1年6ヶ月の受給期間が経過している ×
・連続3日以上労務不能期間が無い ×
・傷病手当金以上の報酬を企業から得ている ×
・(退職以降も受給を希望する場合)退職日に出社している ×
・(退職以降も受給を希望する場合)退職日前日までに労務不能期間が連続して3日以上無い ×

労務不能期間とは

労務不能期間とは、病気や怪我、うつなどで出社できない、働けない期間のこと。簡単には欠勤した期間とも言えますが、ただ欠勤しただけではなく、労務不能であったとする医師の証明が必要になります。

待機期間とは

傷病手当金は欠勤したその日から計算されるのではありません。連続して3日以上の労務不能期間を待機期間とし、受給計算の対象から外され、4日目を起算日として計算を行います。

休職前に医師によって労務不能と証明を受けていれば良いのですが、特にうつなどのケースで、先に会社との話し合いで休職が決まり、休職してから病院を予約して診断を受けた場合、健康組合によっては初診日から3日間を待機期間と見なし、起算日はそれ以降になる、と言われてしまうケースもあります。

待機期間のモデルケース

下の方のケースで見てみると、初診日から待機日の計算が始まると、起算日がまる1週間ずれてしまいます。その分3月分の傷病手当金の受け取りは減ることに。

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医師に相談して初診前に既に労務不能であった旨を書き添えてもらうなどで対応できればと思いますが、その点は健康保険組合によって方針が分かれるところなのかもしれません。まずは、問い合わせをしてみてください。

補足:健康保険法(平成29年4月1日施行)

尚、現行の結構保険法の中で傷病手当金について言及している箇所を見ても、初診日を基準としてみなすとは記載されていません。

第九十九条

1 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。 

受給可能な期間

傷病手当金は起算日から1年6ヶ月間、受給可能です。それは1年6ヶ月分受給できる、という意味ではありません。

起算日から1年6ヶ月間(1年半)は途中で出勤しても、休職を続けても、欠勤した分は傷病手当金が支給されます。ただし1年6ヶ月が過ぎれば、受給できなくなる、という意味です。

一方で、全く異なる事由で休職が続いた場合は、その異なる事由による休職が開始してから1年6ヶ月間、傷病手当金が受給できます。

退職したらどうなる?

退職前に傷病手当金を受給開始しており、退職日に出社していなければ退職後も引き続き傷病手当金を受給できます。挨拶などで退職日に出社してしまった場合には、対象から外されてしまうので、仮に挨拶に行ったとしても、出社として見なさない形にしてもらう、など会社の人事担当者に相談してください。

また退職した後に遡って受給したい場合、退職日に出社していないことに加え、退職日前に連続して4日以上の労務不能期間があること、できれば退職前に通院しており医師によって労務不能であったことが証明可能なこと、が必要になります。詳細は健康保険組合に問い合わせしてみてください。

傷病手当金はいつ受け取れる?

残念ながら、傷病手当金はすぐ受け取ることができず、最悪3ヶ月・4ヶ月かかるケースもあります。傷病手当金を受給するためには、以下の書類を毎月組合に送る必要があります。

a 健康保険傷病手当金支給申請書
b 療養担当者(医師)の意見書 ※支給申請期間中に労務不能であったことを証明する
c 事業主の証明

bの医師による証明は、その月を終えてからでないと発行できません。何故なら療養担当者の意見書には、「過去の特定の期間について労務不能であった」と証明する役割があるためです。

例えば上のケースだと、支給申請ができるのは4月に入ってからとなります。そこから組合が書類をチェックし、必要に応じて追加書類を提出し…となると1ヶ月・2ヶ月かかり、結果休職は3月19日からだったとしても、傷病手当金の受け取りは6月末になる、なんていう可能性もあります。

その他注意事項

・傷病手当金受給期間中であっても社会保険料の支払い義務はあります。

・社会保険組合によっては、1月の間で病院を変えた場合、変える前と変えた後両方の病院から証明書の取得を求められることがあります。

 

今日は傷病手当金について見ていきましたが、休職・退職のセーフティネットとして、他にも選択肢はあります。

例えば退職した場合には、失業保険を受け取れます。例えば社内のパワハラやセクハラによって労務不能となった場合は、労災を申請することも可能です。

心身に不調を感じる時にこのような事務作業は億劫になりますが、進めることで経済的な余裕から心にゆとりも生まれますので、家族などの力を借りながら、じっくりと準備していけると良いでしょう。

尚、本日ご紹介した内容はあくまでも参考にとどめ、実際には社会保険組合に問い合わせをしつつ、情報を集めていくようになさってください。

 

[文責=くぼようこ]

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