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道徳が特別の教科に「格上げ」で何が変わる?

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(教員によって授業にバラツキのあった道徳教育が、いじめ問題を背景に変わることに。)[画=photoAC/きなこもち

これまでは正式な教科ではなかった「道徳」教育が、2018年4月から段階的に教科となります。今日は、道徳が教科になることで何が変わるのかに注目します。

道徳が「特別の教科」に

道徳の時間は1958(昭和33)年から設けられ、これまでは国語や算数などと同じ「教科」ではなく、特別活動などと同じ「領域」という位置付けでした。それが今回、20184月から小学校で、20194月からは中学校「特別の教科」に変わります。

「道徳見直し」の背景

話の始まりは、2013年2月の教育再生実行会議。学校現場でのいじめが深刻な問題として取り上げられ、「心と体の調和のとれた人間の育成」に取り組むべく「道徳の教科化」が提言されました。

そしてその年の12月には「今後の道徳教育の改善・充実方策について」報告がまとめられ、「特別の教科 道徳」など今回の変更の骨子が出来上がりました。

翌2014年2月には文科大臣が「道徳に係る教育課程等の改訂について」を諮問、その年の12月には答申がまとめられ、学習指導要領を改訂する運びとなりました。

特別の教科になると何が変わる?

道徳が特別な教科になることで変わるのは、主に以下の3つです。

  • 必要な授業数が決められる
  • 検定教科書が作られる
  • 評価対象になる

これまで道徳の教育が現場の教員の裁量に任されることが多く、教員によっては十分な道徳教育ができていたと言えませんでした。それが今回「特別な教科」となることで、指導目標の設定や生徒の評価、授業数の担保など、指導として適切に行われると期待されています。

変化①:必要な授業数が決められる

小学1年生は34時間ですが、小学2~6年生と中学1~3年生は35時間(毎週1コマ)が必要授業時数となります。実は授業時数は旧学習指導要領と新学習指導要領で変更はありません。しかしこれまでは道徳が「特別活動」と同じように教科ではなく「領域」だったため、乱暴な言い方をすれば、クラスの行事準備やホームルームなど、授業のコマを別の活動に置き換えても問題ありませんでした。しかし教科となる以上は、教員は道徳を教える義務があります。

変化②:検定教科書が作られる

これまでの道徳授業では教科書が無かったため、副読本や自作の資料など教材の自由度が高く、裁量は教員に委ねられていました。しかし今回教科となることによって、検定教科書が選定されることとなります。

小学校の検定教科書では「東京書籍」「学校図書」「教育出版」「光村図書出版」「日本文教出版」「公文書院」「学研教育みらい」「廣済堂あかつき」の8つが決定しました。(参考:教科書編修趣意書 小学校 道徳(平成28年度検定):文部科学省

中学校の検定教科書についても、応募のあった8社が全て検定審査を通過しています。全ての教科書がいじめやSNS・スマホ、東日本大震災に言及していることが報道されました。

変化③:評価対象になる

定量評価は当然ながら難しいものの、記述式で定性的な評価が行われることとなっています。また正誤で評価することで生徒の考えや価値観を縛ることや、他の生徒と比較することが無いように、生徒自身の成長が見られるか、より多角的・多面的な考え方ができるようになっているか、道徳的な価値を自身に深く落とし込めているか、といった点を評価するとしています。(参考:「特別の教科 道徳」の指導方法・評価等について(報告):文部科学省

 

今日は変わる道徳教育について見ていきました。特に道徳においてはアクティブラーニングも重視されます。教員の価値観を刷り込むのではなく、多角的に考える、人の気持ちや立場を想像する、人の意見に学ぶ、など授業上の工夫が必要です。

[文責=くぼようこ]

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