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10歳の壁【子どもの貧困】とは | 日本財団の調査レポート

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(貧困世帯の家庭教育に社会がもっと踏み込めなければ、子どもの教育格差ひいては生涯賃金の格差はなかなか埋まらない。)[画=photoAC/はむぱん

日本財団では福祉・行政データ、学力・非認知能力に関する箕面市25,000人の児童のデータを分析。201711月、子どもの貧困に関するレポートを発表しました。調査結果が示す「貧困の連鎖」のリアルとは。

調査に見る「10歳の壁」概要

調査レポートによると、今回の分析によって分かったことは大きく以下の3つです。

1.10歳(小4)を境に児童の学力格差が拡大、授業について行けなくなった子どもが取り残される傾向

2.非貧困層は低学力でも年齢を重ねると向上していく傾向にあるが、貧困児童の低学力は年齢を重ねると低下する

3.自習の習慣や朝食を食べる習慣など、貧困児童は家庭での適切なケアや教育が少ないため、学力の基盤となる良好な生活習慣がない

ここから分かるのは、教育格差は小学校低学年の時点で萌芽し、小学校4年生には、決定的なものへとなっていく、ということ。

なぜ貧困が教育格差につながるのか

学力は、良好な生活習慣と相関関係にあると言われています。読売新聞の取材によると、日本財団担当者の以下のようなコメントがありました。

小学校低学年のうちに家庭で養われるはずの生活習慣が身につかず、夢中になれるものも見つからない。やがて、高学年になると勉強の内容が理解できなくなり、悩みを先生に打ち明けることもできぬまま取り残されてしまう

(引用:「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 1/4

貧困家庭においては、子どもが成長しやすい環境ではない、十分な社会支援が行き届かないなど、そもそも学習以前の課題があることが伺えます。

「相対的貧困」とは

子どもの貧困などよく使われる「貧困」とは、「相対的貧困」のこと。日々の食べ物に困る、水道光熱費も止められている、といった絶対的貧国とは違います。

相対的貧困とは、等価可処分所得が平均の半分を下回る状態のこと。現在日本の貧困ラインは112万円。等価可処分所得とは社会保険料や税金などを除いた手取りの金額を世帯数で割り調整した金額です。

現在日本の相対的貧困率は16.0%、子どもの貧困は15.7%、特に片親世帯の半分が相対的貧困に陥っています。年112万円というと、単純計算で月9.3万円。生活保護があると言えど、自ずと逼迫した生活になり、教育に支出する余力は限られます。そうした家庭が6世帯に1つはあるのです。

貧困は「自己責任」か

子どもの貧困だけではなく、日本人の1億総「中流化」、もっと進んで「下流化」が進み、上位層との差は広がっています。

税負担が重くなる一方、福祉や公共サービスの不全に不満が募り、どの世代においても「自分もこれだけ苦労しているんだから、自分の財産は当然の対価だ」「これ以上損はしたくない」「もっと他者も苦労すべき」という思いが社会全体に蔓延しているように感じます。そしてそうした思いは、貧困を自己責任とする考えにも繋がっています。

それが現れているように感じるのは、朝日新聞とベネッセが発表した以下の調査です。

教育格差「やむをえない」「当然」保護者6割超が回答

201845日、朝日新聞がベネッセ教育総合研究所と共同で実施した意識調査の結果を発表。「所得の多い家庭の子のほうがよりよい教育を受けられる傾向をどう思うか」という問いに対し、62.3%の保護者が「やむをえない」あるいは「当然」と回答したと報道しました。

特に、経済的なゆとりが「ある」と別の問いで回答した保護者の内、7割以上は格差を容認する回答でした。同時にゆとりが「ない」と回答した家庭の保護者も6割弱が容認する回答をしていました。

格差を「自己責任」と捉える傾向、教育格差が貧困の連鎖に繋がっていることに対する意識の薄さが伺えます。

貧困家庭の子どもに十分な家庭教育を提供するには

日本財団の調査に見たように、子どもの十分な学力形成のためには、学校教育や学外での補習塾などの活用も必要な一方、家庭教育で培われる良好な生活習慣が欠かせません。

この調査で「よりよい教育を」と言われて人々が想像したのは、お稽古事や学習塾、私立学校の選択などでしょう。しかし蓋を開けてみれば貧困の連鎖には家庭教育が大きく関わっており、それは「自己責任」で片付けられるものではないのです。

現代は、教育もしつけも家庭の責任に委ねられがちです。しかし今後社会は、取り残される子どもも含め、家庭間格差にどうしたらもっと関わっていけるか、考えていかなくてはならなくなるでしょう。

[文責=くぼようこ]

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