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社内通貨(企業内通貨)とは【働き方革命】

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(定時帰宅や歩数、他社員への感謝や業務発注で付与される社内通貨が、業務効率化や社内活性化策の1つとして注目されている。)[画=photoAC/カメラ兄さん

「社内通貨(企業内通貨)」という言葉をご存じですか?会社の中で同僚に感謝を示したり、同僚の仕事を手伝うなどした場合に使われる、その企業限定の仮想通貨です。上手く活用することで社内活性化や働き方改革に繋げている企業も。今日はそんな「社内通貨」に注目します。

社内通貨(企業内通貨)とは

社内通貨とは、企業の中だけで流通する仮想通貨のこと。2000年代から一部の企業が導入し始め、近年「働き方改革」やフィンテックの成長に伴い導入企業が増え、注目も集まってきています。

社内通貨の活用方法は主に以下のとおり。

  • 定時退社で付与
  • 仕事を手伝った感謝のしるしとして付与
  • 社内業務を受注すると付与
  • 社内研修の講師をすると付与
  • 優れたアイデアを出すと付与
  • 一定歩数を歩くと付与

付与された通貨は、ボーナスに加算されたり、飲食代として使用できたり、景品やノベルティと交換できたりと様々です。

社内通貨導入事例

実際に社内通貨を導入している企業では、どのようなルールで運用し、何が成功ポイントで・今後の課題なのでしょうか。いくつかの企業の事例を見ていきましょう。

ディスコ「Will(ウィル)」

半導体製造装置のディスコでは、2013年から社内通貨「Will(ウィル)」を導入しました。ディスコにおけるウィルの仕組みをまとめると以下のとおりです。

  • 社内業務で会社から社員にウィル付与
  • 他社員に業務を依頼するとウィルが発生
  • 業務改善のアイデアソンでの賞品として付与
  • ウィルの残高は毎月リセットされ残高は賞与査定に反映

ディスコがウィルを開始した背景には、社員一人ひとりがどの程度の利益を上げているか可視化することが狙いとしてありました。例えば営業担当者が設備を受注した場合、何割かは製造原価と開発部隊のウィルとして差し引かれ、営業事務社員の内勤業務にもウィルが支払われる、という仕組みでウィルが活用されていました。

このように、ディスコではウィルを単なるインセンティブとして利用しているのではありません。上司が部下に仕事を指示する際にも、部下は上司が提示したウィルによって、受けるかどうかを選択することが可能になっており、働き方や人事制度と連動しているのがポイントです。

現在ディスコでは1ウィル1円で運用されています。近年ウィルを活用する社員が増えたことで社内の流通量が増え、ウィル対円のバランスも検討の段階に入っているとのこと。こうした社内通貨の価値の上下は、新たな課題となりそうです。

UZUZ(ウズウズ)「ウズポ!」

人材紹介サービスのUZUZでは、社員同士のコミュニケーション向上を目的にUZUZポイント(通称:ウズポ!)を導入。毎月の社員表彰で付与される、社員間で感謝のしるしとして贈り合う他、新規ユーザーの紹介獲得時などのインセンティブとしても使われています。

UZUZの特徴は、全社員誰が何ポイント保有しているかが公開されている、という点。なかなか社員の中に浸透しなかったウズポ!も、公開されることで社員の意識が向くようになったといいます。

貯めたウズポ!は1ポイントが1,000円で利用できます。利用目的は社内に限られますが、社内の懇親会や歓送迎会などに利用できるため、社内でウズポ!獲得料を公開することで、高獲得者に他社員がついて飲みに行くこともあるそう。社内コミュニケーションの向上に非常に有効な手段です。

(参考記事:ASCII.jp:社員同士のコミュニケーションをちょっとリッチにする社内通貨|私たちの働き方カタログ

カブドットコム証券「OOIRI」

2017年末、三菱UFJ銀行グループのカブドットコム証券では、イスラエル発・フィンテックのスタートアップ「ゼロビルバンク」と協動し、社内通貨「OOIRI」の試用実験をスタートしました。

OOIRIには仮想通貨同様、ブロックチェーン技術が使われています。定時帰宅や社員同士の感謝のしるしとして付与される他、社員が自分のスマートフォン上でOOIRIの出入金を管理できる「ウォレット」の機能や、貯めたOOIRIをオフィス周辺の飲食店で使用できるようにするなど、大手町エリアでのオフィス経済圏を作ろうとしています。

またOOIRIの開発を手がけるゼロビルバンク社は、2018年2月より福利厚生代行のベネフィット・ワンとも提携しています。こちらは、ゼロビルバンクが提供する社内通貨のプラットフォーム上で溜まった通貨を、ベネフィット・ワンのサービスに交換できる仕組みです。

まとめ | 社内通貨(企業内通貨)とは

今日は社内通貨について見ていきました。成功企業の特徴は、社内通貨を導入することで何を実現したいのか、狙いが明確であること。ディスコのウィルは社員一人一人の成果の可視化とコスト意識の向上、UZUZのウズポ!は社内活性化、カブドットコム証券は金融企業として会社内通貨を活用した新たな経済圏の確立、とそれぞれ目的が異なります。

一方で、いずれの場合も社員の側に立てば、社内で評価される機会が増えたり、効率化が進んだりと、働き方が良い方に変わっていく起爆剤にもなりうるのが社内通貨。必ずしもブロックチェーンを使わなければならないわけではないため、まずは事業所や事業部内で試験的に運用してみても良いかもしれません。

[文責=くぼようこ]

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