(大脳のそれぞれの働きが分かると、私たちが日常生活においてどのように周囲を知覚し、適切な動作を行なっているのかが分かるようになる)[画=photoAC/はむぱん]
前回記事では、新生児が10歳まで発育するに従い、どのような脳の発達を迎えるのかを見ていきました。今日は具体的な脳の各部分の名称とどのような機能があるのかを見ていきます。
前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉
大脳には深い溝があり、この溝を境に「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」の4つに分かれます。この4つはそれぞれ異なる働きを持っていると言われています。
[画=イラストAC/上田ひろこ]
人間らしさの前頭葉
前頭葉は人間の脳でも特に発達している部分。「一次運動野」「高次運動野」「前頭前野」の3つに分けることができます。
一次運動野は運動をコントロール
手指や顔・口唇など精密な身体の動きを司る部分と、上肢・下肢・体幹などの運動を司る部分があり、身体の各部分の運動(どこの筋力をどの程度使うかなど)を最終的にコントロールする役割を担っています。
高次運動野は視覚と連動した動き
視覚情報に基づいて動作を行う役割や、口唇部の微細な動きなどを担う「運動前野」などがあります。視覚情報に基づく動作というのは、例えば掴みたいものの大きさや形に応じて手指の形を変えたり、食べ物を掴んだ手を口元まで持っていく、などの動作です。また自発的な運動を担う部分でもあり、自分の意思で身体を動かしたり、口唇部を精密にコントロールし発語するなどの動作を可能にしています。
前頭前野は計画と社会性の脳
前頭前野は人間の中で特に大きく発達している部分で、具体的な動作・運動ではなく、脳の中での信号のやり取りが主となります。長期的な計画を立て実行したり、他者の感情を読み取ったり、自分を制御したり、社会性を身につけたり、といった機能があります。いわゆる発達障害と言われるのは、この前頭前野部分の機能不全によるものだと見られています。また「イヤイヤ期」もこの部分が成長過程にある中で発露します。
皮膚感覚と空間認知・数値感覚の頭頂葉
触覚や温度などの皮膚感覚、空間認知、視覚的な情報に応じた動作決定などの役割を担っています。頭頂葉の働きによって、私たちは「ザラザラ」「ツルツル」などの触り心地を感じることができ、暑さ寒さを感じ、また奥行きや広さなどの空間を認知することができます。また、数を認識し計算を行う際には頭頂葉の働きが大きいとも言われており、数値感覚の中枢を担います。
聴覚・嗅覚と記憶の側頭葉
側頭葉は私たちの"こめかみ"のあたりにある脳の部分。次回記事で詳細は紹介しますが、扁桃体や海馬など快楽中枢や記憶に関わる「大脳辺縁系」と近く接しており、言語理解・聴覚嗅覚・記憶・感情の制御の一部を担っています。音を聴き分けるだけではなく、音声や文字を認識し、匂いを認識し、記憶にも関わると考えられています。
視覚の後頭葉
後頭葉は大脳4部位の中でも最も小さい部分です。眼球から入った光は電子信号として後頭葉・頭頂葉に伝わり、後頭葉で物体の形や色彩を認識し、頭頂葉で奥行きや広さを知覚します。見たものを認識する部分のため、後頭葉の不全に陥ると、食べれば味や匂いで林檎と分かっても、目に見えるだけでは林檎と認識できなくなる、などの症状が出ます。
今日は大脳の4つの領域について学んでいきました。上記はあくまでも専門家ではない筆者が非理系の自分にも分かるようにまとめたものになりますのでご注意ください。次回は大脳以外の、小脳や大脳辺縁系、脊髄までの流れを見ていきます。
[文責=くぼようこ]
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