(五感を記憶する海馬、ストレスや恐怖の扁桃体。脳を知ると私たちの自身を客観的に把握することができる。)[画=photoAC/はむぱん]
前回記事では前頭葉など大脳の各部分の名称と機能を見ていきました。今日は大脳以外の、小脳や「大脳辺縁系」と呼ばれる海馬、扁桃体、そして視床下部など、脳の様々な場所について。
大脳以外の場所はなんと呼ぶ?機能は?
前回記事で見ていった大脳とは、脳の一番外側で「大脳新皮質」と呼ばれる部分の話でした。
今日はその他の部分を大きく3つに分け、①「大脳辺縁系」大脳の内側にある本能や情動を司る部分、②「小脳」大脳のすぐ後ろにある無意識を担う部分、③「脳幹」大脳と脊髄をつなぐ部分、の順で見ていきます。
[画=イラストAC/上田ひろこ]
本能と情動を司る「大脳辺縁系」
記憶の「海馬」や喜怒哀楽の「扁桃体」などと聞いたことはありますか?脳を外側から見ても見えませんが、内側にある重要な器官が、こうした海馬や扁桃体などの総称「大脳辺縁系」です。
記憶の「海馬」
海馬は脳の中でも記憶をキャッチする部分。人の記憶には例えば「昨日の夕食のメニュー」のように、瞬間的に出来事を覚える短期記憶と、蓄積される思い出などの長期記憶があります。海馬には視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感に関わる電気信号が流れており、日々見聞きしたり五感で感じた出来事を脳に一時留めおくことができます。海馬が不全に陥ると、自分の名前などは覚えていても、今日何が起きたかなどを覚えていられなくなります。
ストレスの「扁桃体」
扁桃体は海馬から受け取った五感の情報を基に快不快を判断し、視床下部などに交感神経系(緊張)のホルモンを出すように信号を送ります。だから扁桃体は、喜怒哀楽や直感、ストレスなどを司る器官と言われているのです。
特に恐怖や緊張に対して重要な役割を担っており、うつ病は、長く恐怖や不安を感じることで扁桃体から交感神経系(緊張)のホルモンを分泌するよう過剰に信号が送られることで、起こるとも言われています。
無意識に動ける「小脳」
小脳は大脳の下後ろについている小さな器官ですが、神経細胞の数は大脳の8倍(大脳が140億個に対して1000億個)あると言われています。
小脳は人が立つ時に身体のバランスをとることや、意識しなくても行える動作を担う器官です。大脳で覚えたことが小脳にコピーされると、無意識に行えるようになります。例えば「家に入ったら靴を脱ぐ」「取引先と名刺交換する時には自分の名刺は相手から見えるように渡す」などは最初は意識して行なっていたことでも、やがて無意識にできるようになることです。
脳と脊髄を繋ぐ「脳幹」
「脳幹」は視床・視床下部の総称である自律神経を司る「中脳」と、小脳と大脳・脊髄を繋ぐ「橋」、心肺をコントロールする「延髄」などの総称です。ドーパミンやアドレナリンなど、私たちもよく聞く神経伝達物質も分泌されます。
自律神経の「視床下部」
視床下部は内臓の動きや体温調整などを行う自律神経の器官。自律神経は交感神経(緊張)と副交感神経(リラックス)があり、扁桃体からの信号を受けると交感神経(緊張)のホルモンを分泌します。
今日は大脳以外の脳の各部分の名称と、それぞれの働きを見ていきました。
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[文責=くぼようこ]
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