(選挙権が18歳からに引き下げられたことを契機に、学校・家庭における「主権者教育」が求められている。)[画=photoAC/akizou]
2016年6月から、公職選挙法の改正に伴い、選挙権年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。より社会や政治に関心を持ち、自発的に行動できる若者を輩出するべく、学校・家庭教育が見直されています。今日はそんな「主権者教育」について。
主権者教育とは
主権者教育という言葉は、2013年 総務省「常時啓発事業のあり方等研究会」にて扱われ、以下のように説明されました。
国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと
海外では「シチズンシップ教育」とも呼ばれていますね。
市民社会の構成員として、政治・選挙だけではなく、格差や環境問題など社会問題に関心と意見を持ち、アクションを起こせる人材を育成しよう、というものです。
若者の「選挙離れ」が課題?
上記紹介した報告書では、若者の投票率が他の世代と比較しても低いこと、核家族化や地域コミュニティの衰退によって「社会化」が遅れていることが、問題として提起されました。
「常時啓発事業のあり方等研究会」の報告書に記載されている、問題点とその背景をまとめると、概要は以下のとおり。
- 20歳代の投票率は他世代に比べて低いのは昔から
- しかし近年では投票率の差が広がっている
- 昭和50年代には10ポイント程度の差だったのが現在20ポイント差
- 背景には政治に対する関心や投票への義務感が薄れていること
- 自分の一票が社会に影響を与える、という有効感が薄れていることが考えられる
- 学校では政治や選挙の仕組みについて教えることはあっても、これまで社会や政治における問題点について考えさせる、関心を持たせる授業の機会は少なかった
- 同時に若者の社会の一員となる「社会化」も遅れている。
- 背景には核家族や地域コミュニティの衰退によって様々な年代との接点が無くなり
- 人間関係がかつてより希薄になりつつあることが挙げられる。
主権者教育に関する検討会
こうした変化を背景に、主権者教育に関する検討会が、総務省・文科省それぞれで開催されました。
文科省では2015年に義家文科副大臣の下に「主権者教育の推進に関する検討チーム」を設置。2016年6月に最終報告書を提出しています。
一方総務省では「常時啓発事業〜」の会議メンバーも一部含めた有識者会議を2016年に開催しています。
高校の科目で公共が登場
こうした会議結果を踏まえて、これまで高校には「公民」という科目がありましたが、高校の学習指導要領が改訂になり、「公共」に変わることが予定されています。
「公共」の授業では、自分が政治・経済・法律・情報発信の中心となることを自覚し、持続可能な社会の実現方法を探求する機会が設けられています。
主権者教育の発展に向けた課題
主権者教育の今後の発展に向け、3つの課題があります。
1つ目は、より低年齢からの主権者教育の実施。
高校の授業に「公共」を取り入れるだけでは不十分。何故なら高校の時点で、人間はある程度の基盤が出来上がっている状況だからです。
小学校中学校の段階から、社会の課題に目を向けさせる必要があります。
2つ目は学習方法にアクティブ・ラーニングをうまく取り入れること。
主権者教育には、座学より、問題解決のため自発的に探究するアクティブ・ラーニングこそ必要です。
そして3つ目は、家庭や地域も、主権者教育の場として機能することです。主権者として求められる能力だけではなく、地域への愛着や誇りなどを持つ人材を育てることで、地方創生にも繋がるとしています。
今日は主権者教育について見ていきました。
[文責=くぼようこ]
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