(今日は何日か即答できますか?数字を理解するのは前頭葉、数的な概念の理解は頭頂間溝の働きが関係していると言われています。)[画=photoAC/涼風]
筆者は日付や数字を覚えるのが苦手です。今日はなぜ自分が数字が苦手なのかを探るべく、引き続き「OECD 脳からみた発達」を参照しながら、数字と脳の関わりを見ていきたいと思います。
数字に関わる脳の部位
「今日って何日?」「日付と曜日を間違えてメールしちゃった」「あれ、お義父さんの誕生日っていつだっけ?」etc.
筆者は人の誕生日や電話番号など、数字をなかなか覚えることができません。スケジュールの日付と曜日を間違えるのはしょっちゅう。数字の見間違えや勘違いも多くあります。
学生時代、数学が全くできなかった訳ではありません。苦手と言っても人並みの「文系」程度。
しかし社会に出て気づいたのは、数字を覚えるのがとにかく苦手ということ。「〜の用事って何日だっけ?」と聞かれても、咄嗟に答えることができず、手帳をいちいち見なければなりません。
"数字"を認識する前頭葉
そこで、今日見ていきたいのが神経科学。人は脳のどの部分で数字を認識しているのでしょうか。
2007年京都大学 正高信男 霊長類研究所教授などの研究グループによって、(右利きの)人は数字を脳のどの部分で認識しているか、が明らかにされました。(参考:京都大学-お知らせ/ニュースリリース 2007年1月4日 数字を理解する脳の領域を解明)
研究では、被験者にローマ数字を学習させ、ローマ数字を被験者が読みこなせるようになるまでの脳の血流を測定。"数字"というものを人が認識できるようになるまでに、脳のどの部分が活発に働くのかを調べました。
その結果、左半球 前頭葉の一部のニューロンが活動することで人は数字を認識する、ということが分かったのです。
数的な感覚は頭頂間溝
一方、数字と分けて考えたいのは「数的な感覚」。
人は赤ん坊の時から数的な感覚を備えている、と言われています。数字は読むことができなくても、例えばりんごが1つあるのと、2つあるのとでは、数が違うことを認識しています。また、数が多い・少ないも理解をしているといいます。
こうした数的な感覚は、頭頂葉間溝という部分が担っており、赤ん坊と成人とを比較しても、発達に大きな違いは無いといいます。
[画=イラストAC/上田ひろこ に加筆]
上記のイラストは脳をデフォルメして描いてあるので、あくまでも頭頂間溝の位置のイメージとして捉えてください。
数的な能力は脳の様々な部分に分散
数的な感覚は頭頂葉が担う一方で、数える、計算するなどの数的な能力については、脳の様々な部分に分散しており、「脳のこの部分を鍛えれば良い」というような単純なものではないようです。
例えば暗算をする時と、「x= 」の代数計算を行うときでは、異なる脳の部位が働くことも分かっています。2つの数字でかけ算する時ですら、人は何百万もの神経細胞が協働しています。
ディスカルキュリア(算数障害)とは
発達障害の中で、自閉症・ADHDとは異なり、読み書き計算などの内、特定の領域に困難をきたす「学習障害」と呼ばれる状態があります。
その中でも、計算や数的な感覚に困難を感じる状態は、ディスカルキュリア(算数障害)と呼ばれています。ディスカルキュリアの一例は以下のとおり。
- 数の大小が分からない
- りんごが1個ある・2個あるなど具体的な個数は理解できても、足し算・引き算など象徴的な数字の扱いが理解できない
- 筆算をする際に数の繰り上がり・繰り下がりが分からない
- グラフを読むことができない
ディスカルキュリアの場合、頭頂間溝の神経の密度が減少しているとも見られています。
今日は脳のどの部位が、数字や数的な能力に関わっているのかを見ていきました。
脳の働きはまだまだ謎も多く、数字と脳の関係は完全に明らかになってはいません。
筆者自身の、日付を咄嗟に思い出すことが苦手で、簡単な計算でミスをするというのは、認知科学の言うところの短期記憶(ワーキングメモリ)の働きが悪いのかもしれません。
数字が苦手な方は、これらの情報を自分の特徴を客観的に把握するための、一つの参考にしていただければと思います。
[文責=くぼようこ]
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