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思考のクセを知る | 認知科学の基本(3)

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(「思い込み」と思っていなくても、実はさまざまなシチュエーションで騙されている私たち。どのような思考パターンやバイアスがあるのか)[画=photoAC/buri

人間は論理的な生き物のようでいて、実は非論理的。我が子や生徒から「考えが古い」と思われないように、自分自身にかかっている「思考のバイアス」について知りましょう。今日は引き続き「教養としての認知科学」(鈴木宏昭著)を参考にしていきます。

人の思考は3種類

「人間は考える葦である」19世紀に生きたフランスの哲学者ブレーズ・パスカルの名言です。 人間は自然界の中でも最も弱い葦のような存在に過ぎないが、考える力に偉大性があるとしました。

そんな人間の思考は、「推論」「問題解決」「意思決定」の3種類があると言われています。

推論

推論は、与えられている情報の中で、「恐らく〜であろう」という考えを導くことです。

推論には、「A=B, C=B, よって A=C」というような演繹法や、いくつかの事例から共有点と一般法則として導き出す帰納法、一般的な常識や定説に当てはめて恐らくこうだ、と考える仮説推論の3種類があります。

問題解決

問題解決とは理想とギャップの間を埋めていくこと。

問題解決思考にあたっては、人は解決すべき問題や目標の理解と探索を反復していきます。

意思決定

意思決定は、様々な選択肢の中で、何かを選ぶ時に働きます。ところがその際に、さまざまな「思考のバイアス」があることが分かっています。

意思決定の際、人はより価値があるものを選びとろうとする傾向があります。その際、価値ある判断のために多くの人が正しかろうと参照する思考の方法を「ヒューリスティクス」といいます。

再認ヒューリスティクス

人がなんとなく知っている物事の方を選ぶことを、再認ヒューリスティクスと言います。

書籍の中で紹介されていたのは、「カリフォルニア州でサから始まる都市で人口が多いのは、サンディエゴとサンノゼどちら?」と聞かれて、知名度の高いサンディエゴを選ぶ人が多い、という話。

このように、自分が知っている方を正解やより価値があると考えることを再認ヒューリスティクスと言います。

利用可能性ヒューリスティクス

利用可能性ヒューリスティクスは、よく思い出すこと、想起させられることは、よく起こっていることだと錯覚することです。

例えば書籍では、少年犯罪の件数を例にとりました。近年、少年犯罪が凶悪化していると言われる中で、戦後と比較し未成年の犯罪件数は減少しているデータがある、と言います。

しかし人は昔に比べて今の若い世代の方が、より凶悪な犯罪が増えていると思ってしまいがちです。

現代では凶悪な犯罪が発生すると、繰り返しテレビや新聞などで報道されます。こうした報道に接触する頻度が高いため、実際に発生件数も多いと錯覚してしまうと言います。

代表的ヒューリスティクス

自分の限られた経験から判断し、さまざまな物事にレッテルを貼ることを代表的ヒューリティクスと言います。例えばB型の友人が3人いた場合に、その3人の共通点を探り、「B型とは〜」という形でまとめるのは、代表的ヒューリスティクスの例です。

 

このように人は実はとっても非論理的な生き物。物事を考えるにあたってさまざまなバイアスの影響を受けます。

特に利用可能性ヒューリスティクスや代表的ヒューリスティクスは非常に興味深いもので、世間一般的な物の見方と呼ばれるもの、世論にも、実は思考のバイアスが多く含まれている、ということが分かります。

生徒や我が子と接する時に、自分の価値観を押し付けていないか気にしたり、第三者の言葉にハッとしたことがある人もいるでしょう。

そんな時に、この思考のバイアスについても考えてみても良いかもしれません。

[文責=くぼようこ]

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