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改正著作権法と教材にコンテンツを利用する際のルール

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(教室のICT化が進んだことで、教育コンテンツを電子媒体で利用することについて教育現場に裁量が与えられることに)[画=photoAC/紺色らいおん]

著作物をインターネット上で利用する際のルールを定めた著作権法の一部が、2018年5月、参院本会議を通過し改正されることが決まりました。2019年1月1日からの施行が予定されています。

改正著作権法とは

著作権は、書籍や映画、音楽、放送、演劇のようなパフォーマンスなど、さまざまな企業・個人の創作に関する権利を定めたものです。

2019年より改正が適用されるのは、インターネット上やデジタル上における著作物の利用方法について。

デジタル教科書など、学校現場におけるICT(デジタル)の利用が広がる中で、著作権法も利用実態に合わせ規制緩和しようというものです。

具体的な改正内容

改正を通じ、今回は以下4つの改正が行われます。

  • 著作権者の許諾がなくても、ビッグデータ活用等を目的とし・市場に悪影響を与えない範囲であれば、著作物を利用できる
  • 教師等が教育を目的に、著作物を著作権者の許諾なしに生徒にメール送信できる・インターネット上に公開できる・インターネット公開時の補償金の支払い窓口を第三者機関が一括で引き受ける
  • 従来認められていた視覚障害者・発達障害者など視覚的に文字情報を取得できない方だけではなく、肢体不自由などの障がいのある方も対象とし、第三者が録音図書などの作成を著作権者の許諾なしに行えるようになった
  • 従来冊子化は自由でデジタル化は許諾が必要だった、美術館などの展示作品の解説・紹介用資料を許諾なしに電子化・利用できるようになった

ニュースでは1つ目の項目である、ビッグデータ活用等への著作物の利用についてが注目されています。

例えばAI(人工知能)の開発にあたっては、大量の情報をインプットし学習をさせていく必要があります。そうした際に、著作物をAIにインプットさせるため著作権者への許可どりが必要でしたが、今回の法改正によって不要となります。

本記事では上記4つの項目から、2番目に挙げた改正によって、学校現場での著作物利用がどう変わるか、注目していきます。

改正著作権法で学校は何が変わる?

教師の著作物複製・配付のルールを定めているのは、著作権法第36条となります。

従来の著作権法でも、学校現場で小説や新聞記事などを複製(コピー)し、生徒達にプリントで配付することは、許可なく実施することができました。(漢字ドリルや参考書など生徒1人1人への販売がビジネス目的となる著作物を除く)

一方、例えばメールに小説の一節や新聞記事のPDFデータを添付し送信することは、原則として著作権者への事前の許諾が必要でした。

それが今回の改正法によって、著作権者の権利を損なわない限り、ネット公開も含め事前許諾は不要となります。

ただし、ネットなど不特定多数の人が見ることが可能な場で著作物を公開する場合には、然るべき補償金の支払いが必要となります。

しかしそれもこれまでは教員や学校側が直接著作権者に問い合わせ、料金交渉や支払いを行わなくてはなりませんでしたが、今後は文化庁長官が指定する補償金徴収分配団体に、他の補償金と合わせ一括で支払うことができるようになります。

改正著作権法で教師ができること・無断NGなこと

今回の改正によって、教師が著作権の縛りを気にせずできるようになったことは何でしょうか。

現存の著作権法でできること・許可なしにはNGなこと、そして改正著作権法でできるようになったこと・やはりNGなことを紹介します。

現存の著作権法

  • <◯> 今朝の新聞に掲載されていた記事を、社会科の時間で利用するためコピーして生徒に配付した(50部までの複製と配付は許諾不要です)
  • <◯>小説の一部を試験問題に利用し、紙で生徒に配付した(加工の有無に関わらず授業利用で50部以下の複製・配付ならOK)
  • <×> 保護者にぜひ読んでもらいたい雑誌のコラムがあったので、学級通信に掲載し配付した(学級通信は授業の範囲外と見なされるため許諾なしに行うのはNG)
  • <×>授業で使っている教科書に教師が書込みを加えたPDFデータを我が校の指導例として学校のホームページに掲載した(電子媒体での無断配布や公衆のインターネット上での無断公開はNG)
  • <×>授業で利用した新聞記事を記録のためPDFスキャンをとり校内サーバーに保管した(許諾なしに蓄積するのはNG)

改正著作権法

  • <◯> 今朝の新聞に掲載されていた記事を、社会科の時間で利用するためにPDF化し生徒達のデバイスに送信した(電子データによる送信も事前の許諾は不要になる)
  • <×>小説の一部を利用した自作の試験問題を、他の教員にメールで共有した(紙・電子媒体を問わず教員間の許諾なしの共有はNG)
  • <×> ぜひ読んでもらいたい雑誌のコラムがあったので、保護者達にメールで一斉配信した(現存の著作権法と同様に、そもそも学級通信自体が授業の範囲外と見なされるため無断NG)
  • <△> 授業で使っている教科書に教師が書込みを加えたPDFデータを我が校の指導例として学校のホームページに掲載した(補償金を支払えば事前許諾は不要)
  • <×> 授業で利用した新聞記事を記録のためPDFスキャンをとり校内サーバーに保管した(蓄積は第35条の"授業の過程"における著作物利用と認められないため、やはり許諾なしに行うのはNG)

今日は改正著作権法について見ていきました。

現存の著作権法の学校現場での解釈については、さまざまな団体が見解を掲載しています。以下に参考のサイトをご紹介しますので、良ければ確認してみてくださいね。

 

[文責=くぼようこ]

※ Educediaは主宰者の研究・論考を目的としています。記事に含まれる情報は、読者の皆様ご自身の責任においてご利用ください。また、本記事の情報は記事公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性があります。

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