(この4月からはNHKでドラマもスタート。スクールロイヤーってどんな仕事?)[画=photoAC/oldtakasu]
いじめや学内の犯罪、モンスターペアレントなど、教育現場では教員の手に負えない問題も数多く起きます。司法の専門家が問題解決を支援する、スクールロイヤー導入の機運が高まっています。
スクールロイヤーとは
スクールロイヤーとは、学校現場が問題に直面した際に、解決に向け法律の専門家として助言を行う弁護士のことです。
文科省が昨年2017年8月に、H30年度の概算要求でスクールロイヤーの研究調査のため5,000万円の予算要求をしたことで、夏から秋にかけニュースになりました。(2018年3月28日の文科省発表によると、実際にはH30年度の予算額は1,000万円で決着したようです。)
スクールロイヤーは都道府県の教育委員会が選定し、市区町村の教育委員会の要請に応じて派遣されます。既に大阪府と岡山県でスクールロイヤーが導入されています。
導入の目的①「いじめ予防教育」
H30年度の文科省予算案を見ると、スクールロイヤー導入の最大の目標は「いじめ予防教育」とのこと。
法律の専門家である弁護士が、その専門的知識・経験に基づき、学校において法的側面からのいじめ予防教育を行うとともに、いじめなどの諸課題の効率的な解決にも資する、 学校からの相談体制の整備
(引用: H30年度文科省予算案)
「学校のいじめで弁護士!?」と思われる方もあるかもしれませんが、自殺者や、犯罪行為を強要される生徒・学生、強制わいせつ被害者もいる以上、いじめ予防は道徳・倫理教育だけでは不十分、というのが現状です。
いじめの重篤度に応じて司法が介入すると共に、「どのような行為は違法で・どのような罰則があるのか」含め教育することが、いじめの抑止に繋がるのでは、と期待されるわけです。
導入の目的②「学校と地域社会、両親などの紛争解決」
家庭からの過剰な要求や、地域住民からの苦情、生徒家庭同士の揉め事において、法的な観点から解決策を市区町村の教育委員会や教員にアドバイスするのも、スクールロイヤーの仕事の1つです。
導入の目的③「学校に対するチェック機能」
同様に法律の専門家が間に入ることで、教育委員会や教員らの主観でいじめが軽微な生徒同士のじゃれ合いとして見過ごされることや、「いじめ事実の隠蔽」を防ぐこともできます。スクールロイヤーが学校におけるチェック機能を果たすことにもなるわけです。
導入の目的④「教員の働き方革命」
スクールロイヤー以外にも、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーなど、専門家が関わり「チーム学校」として学校業務にあたることで、教員の負担を減らし生徒と関わる時間を増やそうという動きがあります。
米国では(それでも足りないという不満は噴出しているものの)スクールロイヤーやスクールカウンセラー、ソーシャルワーカーの存在は一般的です。本来ならば専門家が担うべき仕事も背負っている日本の教員は、先進国の中でも残業時間が最低レベルと言われています。
スクールロイヤー導入の課題
スクールロイヤーの導入については前向きな意見が多い一方、課題になっているのは学校の教育現場に強い弁護士の不足です。司法の観点から支援しようとしても、教員や家庭、生徒と摩擦が起きてしまっては、チームとしての働きは期待できません。スクールロイヤーの養成、数と質の担保が求められています。
2018年4月からNHKでドラマスタート
この4月からは神木隆之介さんがスクールロイヤーを演じる「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」が NHK総合でスタートします。初回は4月21日(土)夜8時15分から。30分弱のショートドラマで全6回の放送が予定されています。
NHKの番組オフィシャルサイトによると「やけに弁の立つ〜」は、ある中学校にスクールロイヤーとして派遣された神木隆之介さん演じる新人弁護士が、教育現場の抱える問題の解決に取り組む中で成長する、ヒューマンドラマとのこと。
毎放送で教育現場の問題を取り上げる
いじめ、体罰、モンスターペアレント、教師のブラック労働など、毎回異なるテーマが登場。現在公開されている内容を見ると、放送初回はモンスターペアレント、第2回は学校への近隣住民からの苦情、第3回はいじめを扱うようです。(2018年4月1日時点)
学校現場のことを知らない新人弁護士が教員や生徒とぶつかりながら成長する様や、生徒や教員と、近隣住民や生徒の親など学校現場を取り巻く社会との関係を、弁護士として調整していく点が見どころです。
今日はスクールロイヤーについて見ていきました。2018年度予算は概算要求から大幅に削られたものの、今後導入が進められていくことに期待です。
[文責=くぼようこ]
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