(2020年から順次始まっていく新学習指導要領の授業では、生徒の自発的な学習を促す授業が重視される。当初は「アクティブ・ラーニング」という言葉が記載されていたが…)[画=photoAC/acworks]
2017年に告示された新学習指導要領では、「アクティブ・ラーニング」を用語として取り入れるか、議論がありました。最終的には「主体的・対話的で深い学び」という表現に着地。今日は「主体的・対話的で深い学び」と「アクティブ・ラーニング」について見ていきます。
新学習指導要領「主体的・対話的で深い学び」とは?
学校教育で重視すべきことについて、文科省ホームページではこのように紹介されています。
子供たちが「何を知っているか」だけではなく、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」ということ
膨大な情報を処理できるAIやロボットの前では、情報を詰め込む"だけ"の教育は役に立ちません。
教育には、より良い人生や社会を考える豊かな感性を育み、実現に向けて知識・情報を応用する力を育てることが求められます。
そこで指導側は、学ぶ量だけではなく、質にも配慮すべき、と考えられるようになったのです。
当初使われていた言葉は「アクティブ・ラーニング」
学習指導要領は審議会を通じて議論が重ねられ、文言が決定されます。
当初、審議会で用いられていた言葉は「アクティブ・ラーニング」という言葉でした。
ところが途中から「主体的・対話的で深い学び」という表現が使われるようになっていますす。
「アクティブ・ラーニング」について、文科省の用語集では以下のように紹介されています。
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れ た教授・学習法の総称。(中略)発見学習、問題解決学習、体験学習、調査 学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。
「学習指導要領からアクティブ・ラーニングが消えた」と言われることがありますが、厳密には消えたのではなく、誤解の無いよう・より内容を充実させるために言い換えが行われたと考えられるでしょう。
それではここから、詳しく「主体的・対話的で深い学び」について見ていきましょう。文科省の発表している「新しい学習指導要領の考え方」(P.22)を参照します。
「主体的・対話的で深い学び」とは
文科省の資料によれば、「主体的・対話的で深い学び」の目的は、子ども達が生涯にわたり能動的(アクティブ)に学び続けるようにすること。
そこで子ども達が学習内容を深く理解し、必要な資質と能力を身に付けられるよう、学習の質向上に向け授業の進め方を改善するとしています。
「主体的な学び」とは
- 学ぶことに興味や関心を持つ
- 学習内容を自分のキャリアの方向性と関連づける
- 学習の見通しを持ち粘り強く取り組む
「対話的な学び」とは
自己の考えを以下の3つの方法で広げ・深めること
- 子ども同士で協働(協力して共に学習を進める)
- 教職員や地域の人との対話
- 先哲の考え方を手掛かりにする
「深い学び」とは
- 知識を関連付ける
- 問題を見つけ解決策を考える
- 思いや考えを基に創造する
そのために、①(知識の)習得 ②(習得した知識の)活用 ③探究のステップで学習を進める としています。
アクティブ・ラーニングとは?
対して「アクティブ・ラーニング」とは何でしょうか。
「アクティブ」とは能動的という意味で、受動的の反対語です。
簡単に言うと、指導者が一方的に説明し、生徒達がそれを受け身で聞く授業から脱し、生徒が能動的に学習に取り組むよう指導者が支援すること。
元々は大学における教授・講師の指導テクニックとして用いられていました。
アクティブ・ラーニングとは教師と生徒のエンゲージメント
米国アイビーリーグの一つ、コーネル大学で教育・指導方法の研究に取り組んでいるCenter of Teaching InnovationのWebサイトによれば、学生の集中力は10~20分毎に低下するという調査結果があります。
そこで50分間の授業であれば1〜2回、75分の授業であれば3回、生徒と教師のエンゲージメントを高める取り組みが必要としています。
アクティブ・ラーニングの特徴
1991年に発表されたチャールズ・ボンウェル博士の「アクティブ・ラーニングー教室で生徒の熱狂を引き出す方法ー」によれば、アクティブ・ラーニングには以下の特徴があります。
- 生徒を学習内容に巻き込む
- 読解・議論・筆記などアクティビティに取り組ませる
- 情報伝達より生徒のスキル開発を重視する
- 学習態度や質を重視する
- 生徒のモチベーションを高める
- 生徒が指導者から即時フィードバックを受け取ることができる
- 生徒が分析、知識の統合、評価など、より高次の思考に取り組む
このようにアクティブ・ラーニングの元々の意味は、教え方のテクニックとしての側面が強く、指導者が行うことも、教科書や黒板の文字を読み上げたり、意見を求めたり、といった簡単なことで良いのです。
生徒と教授・講師との間にインタラクティブなやり取りがあることで、生徒が能動的に授業に参加する姿勢が生まれるとしています。
まとめ:「主体的・対話的で深い学び」と「アクティブ・ラーニング」の違い
「アクティブ・ラーニング」という言葉から「主体的・対話的で深い学び」と言い換えが行われたことによって、内容がより充実しました。
例えば「対話的な学び」とすることで、教師と児童のやり取りだけではなく、子ども同士で学び合うこと、地域社会との繋がり、先人に学ぶ姿勢にも焦点が当たるようになりました。
また、能動的な学習が授業の中だけではなく生涯を通じて行われるよう、学び方も教えるよう定めていることもポイントです。
今、社会の変化に気づき、学び続け、自分の人生を切り拓いていける人材の育成が必要とされています。
新学習指導要領での「主体的・対話的で深い学び」とは、時代の変化に応じた力を育む教育だとうかがえます。
[文責=くぼようこ]
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