(サイエンス教室やプログラミング教室など、幼稚園から高校生までを対象に様々な企業が事業・サービスを展開している)[画=photoAC/acworks]
前回まで理数系人材の育成「STEM教育」をテーマに、言葉の意味やSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の取り組みについて見ていきました。今日は企業の取り組み、産学連携に注目します。
- STEM教育の取り組みを分類
- 企業のSTEM教育パターン別の事例
- ベネッセサイエンス教室
- Tech Kids School (テックキッズスクール)
- 角川ドワンゴ学園 N予備校(プログラミングコース)
- まとめ
STEM教育の取り組みを分類
Googleで「STEM教育」と検索すると、様々な企業が提供するサービスやCSR活動が表示されます。一つ一つ見ていくと、対象年齢が異なったり、STEMの中でもプログラミング・開発に特化したスクールだったり、と内容はまちまち。
そこで、まず学校教育・産業界の取り組みについて整理しました。
特に注意したいのが、「STEM教育」として理数領域の玩具・教材・学習塾と、ゲーム・アプリ開発などの学習塾・Eラーニングが、混同して紹介されている点です。
STEM教育とはここまで見てきたように、理科・科学・工学・数学分野の教育の総称なので、プログラミングを教えることはその一手段に過ぎません。
さらに「プログラミング教育」という言葉が、現在2種類の意味で使われていることも勘違いや誤解を広げる一因になっています。
一つは学習指導要領改訂で2020年から小中学校の授業に取り入れられる、プログラミング的な思考を育む教育として。そしてもう一つがゲームやアプリ、システム開発のためのプログラミングを教える教育プログラムとして、様々なニュースや企業のWebサイトで言葉が使われています。
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今日はこうした混同をできるだけ避けながら、企業の取り組みを見ていきたいと思います。
企業のSTEM教育パターン別の事例
小学生向けのプログラミングスクールや、小中学校での出張授業、大学生向けコンペティションの開催など、企業の取り組みもいくつかに分類できます。以下に代表的な事例をパターン別にまとめてみました。
パターン | 事例(一例) |
---|---|
教育会社・玩具メーカーの 新事業・新商品開発 |
ベネッセサイエンス教室、レゴ We Do |
IT企業の教育事業参入 (プログラミング学習塾中心) |
(低年齢向け)Tech Kids School(サイバーエージェント) (高校生向け)N予備校プログラミングコース(ドワンゴ) |
IT企業の採用強化 ブランディング |
CODE FESTIVAL(リクルート×Indeed主催 プログラミングコンテスト) |
エンジニアリングを重視する 企業のCSR活動 |
IBM、ボーイング など |
IT企業による 学校教育のICT化支援 |
Pepper社会貢献プログラム(ソフトバンク) |
産業界からの高校・大学 への研究者派遣・交流 |
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)での授業 大学との合同研究など |
今日は、ベネッセ、サイバーエージェント、ドワンゴの取り組みを取り上げます。
ベネッセサイエンス教室
対象年齢 | 年中〜小学6年生 |
---|---|
内容 | 理科領域の学習・実験 |
教室 | [東京]吉祥寺・用賀[神奈川]上大岡・たまプラーザ |
授業料 | 月1回授業 税込10,080円(年中生は税込5,400円) |
(理数領域の学習塾)
ベネッセ傘下で学習塾を運営する、東京個別指導学院経営の理科学習塾。動物や昆虫などの体のつくりを勉強したり、電気や磁気の働きを実験を通じて学んだり、アルコールランプなどを用いた科学実験を行います。
Tech Kids School (テックキッズスクール)
対象年齢 | 小学生(3〜6年生程度) |
---|---|
内容 | ゲーム・アプリ開発を通じたプログラミング思考の習得 |
教室 |
[東京]渋谷・秋葉原・二子玉川[神奈川]横浜 [他]名古屋・大阪・那覇 他提携教室あり |
授業料 |
1回2時間の講義が月3・4回 19,000円(税別) 短期集中クラスもあり |
(小学生向けプログラミング・開発の学習塾)
サイバーエージェントのグループ企業が運営する小学生向けのプログラミング学習塾。MITメディアラボが開発した子ども向けプログラミング教材の「スクラッチ」を用いてゲーム・アプリ開発を行います。
角川ドワンゴ学園 N予備校(プログラミングコース)
角川ドワンゴ学園 N予備校(プログラミングコース)ホームページ
対象年齢 | 高校生以上 |
---|---|
内容 | Webプログラミング・アプリ開発の実践学習 |
教室 | Eラーニング |
授業料 | 月額 税抜1,000円(クレジットカード・キャリア決済の場合) |
(高校生向けWeb・アプリ開発のEラーニング)
KADOKAWA・ドワンゴが提供する受験生向けEラーニングコンテンツ「N予備校」。N予備校自体は、リクルートの「スタディサプリ」のような、一般的な受験塾のアプリ版となります。プログラミングコースでは、ドワンゴの現役エンジニアが登壇。Java Scriptなど、仕事現場で実際に使用するプログラミング言語を用いて、WebサイトやiPhone、Androidでも作動するアプリなどの開発方法を学べます。仕事に直結する知識が習得できるので、職業教育に近い要素もあります。
まとめ
今日は各企業の取り組みを分類し、特に大手企業3社が取り組む塾・Eラーニングを見ていきました。プログラミング教育がスタート=小学校・中学校でプログラミングの授業が始まるわけではないので、慌ててコンピュータスクールに通わなくても大丈夫です。
家庭で子どもがSTEMを学べるようにしよう、と考えた時、理数的な思考や興味を伸ばすことを目指すのか、プログラミングができる・コンピュータに慣れていくための素地を作るのか。目的によって選ぶべき手段は変わっていきそうです。
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[文責=くぼようこ]
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