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学習指導要領の改訂はどのように行われる?

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(25もの作業部会・ワーキンググループで検討される学習指導要領改訂。有識者の議論・知恵の結晶だ)[画=photoAC/acworks

2020年に小学校で導入されるプログラミング教育や、いわゆる「アクティブ・ラーニング」(改訂学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」)などのキーワードで注目される学習指導要領。今日はそもそも学習指導要領とは何か、その改訂のプロセスについて見ていきます。

学習指導要領とは

学習指導要領とは、あらゆる学校で一定水準の教育が行われるよう、文科省が定めているカリキュラム基準のこと。小学校・中学校・高校それぞれに、教科ごとの学習目標や内容が定められています。

学校教育法施行規則で、学校は定められた授業時間と学習指導要領の内容を遵守しなければならない、とされています。また、学校で使用できる教科書は検定教科書と呼ばれ、基本的に学習指導要領に則ったものを文科省が認可する形で決定します。

日本の小学校・中学校の9割は公立で、その設置者は各市区町村とされています。各市区町村の教育委員会および学校、教員は学習指導要領に則り、カリキュラムの進め方や授業内容を決定していきます。(私立小中学校は、学習指導要領に捉われない比較的自由な教育を実施することが可能ではありますが、原則は学習指導要領に則った教育をするよう定められています。)

このように(特に小学校・中学校の)学習指導要領は、大多数の児童・生徒の教育内容を定めるもので、次世代の人材育成に与える影響も非常に大きいのです。

改訂されてから実施までの流れ

学習指導要領は約10年ごとに大幅に改訂されます。前回改訂は2011年。2002年に改訂されたいわゆる「ゆとり教育」に対し「脱ゆとり」と表現されることが多いです。

現在周知されている、また今後周知・実施される学習指導要領改訂は以下のとおり。

幼稚園…2016年改訂、2018年〜実施
小学校…2016年改訂、2020年〜実施
中学校…2016年改訂、2021年〜実施
高 校…2018年改訂、2022年〜実施

以下は文科省が発表している、学習指導要領改訂から実施までのスケジュールです。改訂した翌年は周知・徹底の年、そしてその翌年から教科書検定と採択が行われ、いよいよスタート、という流れになっています。

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(参考)今後の学習指導要領改訂に関するスケジュール | 文科省 

改訂のプロセス:文科大臣諮問から告示まで

では、学習指導要領はどのようなプロセスを経て改訂されるのでしょうか。下図は文科省Webサイトを基に、筆者が今回の改訂スケジュールなどを加筆したものです。

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まず、文部科学大臣が有識者会議に対し、学習指導要領の改訂の大まかな方向性を示しつつ、意見を求めます。これを「諮問」と言います。今回の改訂の諮問は2014年11月、下村博文大臣の時に公表されました。

(参考)初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問):文部科学省

大臣諮問があると、文科省が有識者を招へいし組織される中央教育審議会というところで、学習指導要領に関する検討が開始されます。検討は2年間ほど行われ、審議がまとまると、パブリックコメントと呼ばれる一般に意見を募集する段階に入ります。パブリックコメント(通称パブコメ)は誰でも参加でき、意見書のフォーマットに書き入れて文科省に送ることが可能です。パブコメ期間が終了すると、再度審議会での意見がまとめられ、大臣(文科省)に対する意見、という形で答申が発表されます。答申は学習指導要領の改定案に落とし込まれ、再びパブコメ期間を経て、最終的に文部科学大臣からの告示という形で、改訂指導要領の中身が発表されるのです。

中教審(中央教育審議会)とは?

では、このように学習指導要領改訂にあたり、重要な役割を果たす中央教育審議会とはどのような組織になるのでしょうか。

中央教育審議会(通称:中教審)は、4つの分科会(+2つの特別部会)で成り立っています。分科会の下には部会・委員会、さらにその下には作業部会・ワーキンググループが連なっており、3階層の組織です。

中教審の委員会は分科会毎に30人まで委員が所属できることとなっており、任期は2年(再選可能)。産業界や学術界から広く有識者が招へいされています。現在の中教審は第9期を迎え、現在の会長は三井住友フィナンシャルグループの元取締役社長・会長を歴任し、現在は住友銀行特別顧問でトヨタ自動車監査役も務める北山禎介氏です。

学習指導要領を検討するのは教育課程部会

学習指導要領の改訂に際し、審議を行うのは、中教審の4つの分科会の中でも、初等中等教育分科会に連なる教育課程部会というところです。部会はさらに25の作業部会やワーキンググループに分かれます。幼稚園・小学校・中学校・高校の各教科で、どのような力を・どのように育むか、その評価方法など検討が行われます。

下図は中教審がどのような成り立ちになっているのか、特に教育課程部会に注目して分解したものです。WGと省略されているのはワーキンググループのことです。

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まとめ

以上、今日は学習指導要領とは何か、どのようにして改訂が行われていくのかを見ていきました。様々な検討段階を経て最終的に決定していくので、文科省発表資料やその他ニュース・資料を参照する際には、それがどの時点で公表されたものなのか、チェックするのが良さそうです。

[文責=くぼようこ]

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