(日本では98%の学生が高校に進学する。その学習指導要領が改訂、2022年から授業がスタートする。)[画=photoAC/kotoM]
先日2018年2月14日から、高校の学習指導要領改訂に関する2016年12月の中教審答申に対するパブリックコメントがスタートしました。今日は高校の学習指導要領改訂のポイントを見ていきます。
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○全体の変更点
中教審の答申によると、高校の学習指導要領改訂のキーワードは「選挙権引き下げ」と「高大接続改革」の2つ。それに伴い発表された、3つのポイントを紹介します。
・18歳に引き下げられた選挙権年齢への対応
2016年6月より、選挙権が18歳以上となりました。それを受けて、高校では国家や社会に参画する姿勢を育むとしています。これまで「公民」とされていた教科は「公共」に変更。持続可能な社会を志す人材の育成を目指します。
・高大接続改革の中での位置付け
2021年1月からセンター試験の代わりに導入される大学入学共通テストがクローズアップされることが多いですが、そもそも高大接続改革とは、暗記に偏った評価・教育から、真の学力(「確かな学力」)の育成に焦点を当てることを目的としています。
高校の学習指導要領改訂では、①豊かな人間性と、②心身の健康、思考力・判断力・表現力・主体性を持って他者と協働できる③真の「学力」の育成に重きが置かれます。
・高等学校基礎学力テスト(仮称)の導入
高校時点で既に学力に差が生まれていることも少なくありません。そこで小学校・中学校で教えられていることの学び直しの機会を提供するため、基礎学力を図るテストの導入が検討されています。
そして上記に加え、高校では小学校・中学校に比べても学生の主体的な学習を促す機会が少ないとして、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」が重視されます。
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○教科ごとの変更点
それではここから、教科の中身について主だった変更を見ていきます。
・世界史が必修から外れ「歴史総合」と「地理総合」へ
これまで世界史AB、日本史AB、地理ABが必修でした。今回の改訂では、世界史を他人事のように学習するのではなく、近現代の日本と世界との関わりの中で諸問題を捉える歴史総合へと変わります。
・「公共」がスタート
社会の諸問題について考察し選択・判断する力を養います。具体的には民主主義、法の支配などを学習することで他者との協働の意義を考え、現実社会の諸問題について政治・経済・法律それぞれの視点から考えることで、自立した主体として社会参画を果たす人材を育成します。
・教科の枠を超えた「理数科」が新設
SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)での成功事例が基になっています。論理的に物事を突き詰める数学的、物事を探求する理科的な考えを重視し、学生それぞれが探求する課題を設定し、突き詰めていく授業が行われる予定です。
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・「情報I」でプログラミングによるコンピュータ活用を学習
小学校・中学校ではプログラミング的思考を育む授業として、上記理数科のベースとなる授業が行われる一方で、テクノロジーに関する授業として情報Iではプログラミングを学習します。さらに選択授業で情報IIも設けられ、より発展的な学習を行うことも可能としています。
改訂高校学習指導要領(案)はパブリックコメントを受け付けているe-govのWebサイトより閲覧できます。高校のパブリックコメントは2018年3月15日まで。一般から広く意見を受け付けていますので、ぜひ見てみてください。
[文責=くぼようこ]
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