(大学入試に高校時代の活動記録が加点できるeポートフォリオが2019年入試から導入される。点数稼ぎのための浅薄な学外活動を排除する取り組みが重要だ。)[画=photoAC/yooco]
高校内外での活動記録をデジタル上で記録・提出できる「eポートフォリオ」。大学進学共通テストや大学独自の試験、内申点の他に大学入試にも活用される動きが広がっています。
※※JAPAN e-Portfolio 事務局の方より、本記事のJAPAN e-Portfolioに関する紹介に一部誤りがある旨ご連絡いただき修正しました。この場を借りてお詫びいたします。またeポートフォリオ全般とサービス名称のJAPAN e-Portfolioについて表記が混同している点を改善しました。(2018年6月15日時点)
eポートフォリオとは?
eポートフォリオとは、デジタルで管理された、高校生活の活動記録のこと。学校の授業や行事、委員会、部活、ボランティア、学外活動などをデジタル上で月別に管理し、大学出願時に併せて提出することができます。
eポートフォリオの代表的な事例として、国内では2017年10月高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」の運用がスタートしました。今年中に20万人の高校生の活動を記録し、平成31年度(2019年)から大学入試での利用開始を目標としています。
「JAPAN e-Portfolio」は文部科学省の所管で、大学入学者選抜改革推進委託事業によって関西学院大学を代表に8の大学によって研究・推進されています。
狙いは「主体的な学び」の促進
eポートフォリオの導入は「高大接続改革」における一連の取り組みの一つとして位置付けられています。
「高大接続改革」とは、正答を選択するだけの知識偏重型の入試制度改革のこと。予測不能な社会・市場の変化に対応できる人材を育成するため、大学入試においてもより「主体的」に学ぶ姿勢や、暗記力より「思考力」を重視することで、高校における教育指導も含め見直そうというものです。
センター試験から記述式問題を取り入れた「大学入学共通テスト」への変更をはじめとし、いくつかの改革が進められる中で、高校時代の活動をポートフォリオに記録し、大学出願時に加点評価したり、ボーダーラインの学生の合否判定に利用することが想定されています。また将来的には大学eポートフォリオも運用開始し、就職活動へ活用することも検討されています。
eポートフォリオに記入できること
「JAPAN e-Portfolio」の事例を基に、eポートフォリオでできることを見てみましょう。
2018年4月現在「JAPAN e-Portfolio」は現高校1〜3年生を対象に運用されています。
ポートフォリオには、学業の振り返り、主体的な学びの成果としての課題研究の履歴、部活動、特別活動記録として参加大会、表彰歴・賞状、留学履歴、ボランティア参加歴、ボランティア先証明書、検定試験スコアなどを随時記録していくことができます。賞状などは写真でアップロードすることができます。
「JAPAN e-Portfolio」に参画している大学
2018年4月時点で参画を表明している大学は以下の79校です。
平成31年度入学試験において活用する大学、学部学科等、及びその入試制度名や活用方法などについては、それぞれ異なりますので、各大学の入試要項で確認する必要があります。
北星学園大学、 いわき明星大学、 北星学園大学短期大学部、 群馬大学、 東京医科歯科大学、 東京外国語大学、 東京農工大学、 首都大学東京、 横浜市立大学、 群馬パース大学、 城西大学、 千葉商科大学、 麗澤大学、 青山学院大学、 桜美林大学、 國學院大學、 駒澤大学、 昭和女子大学、 昭和薬科大学、 上智大学、 創価大学、 中央大学、 東京工芸大学、 東京理科大学、 東洋大学、 日本女子体育大学、 法政大学、 武蔵大学、 武蔵野大学、 明治大学、 立教大学、 立正大学、 和光大学、 早稲田大学、 神奈川大学、 関東学院大学、 東洋英和女学院大学、 城西短期大学、 金沢大学、 朝日大学、 岐阜聖徳学園大学、 中京大学、 南山大学、 日本福祉大学、 大阪大学、 大阪教育大学、 皇學館大学、 京都学園大学、 同志社大学、 立命館大学、 龍谷大学、 追手門学院大学、 大阪医科大学、 関西大学、 関西医療大学、 関西国際大学、 関西学院大学、 甲南女子大学、 神戸海星女子学院大学、 神戸女子大学、 兵庫医療大学、 天理大学、 神戸女子短期大学、 島根大学、 岡山大学、 島根県立大学、 島根県立大学短期大学部、 広島工業大学、 広島文教女子大学、 九州工業大学、 佐賀大学、 長崎大学、 大分大学、 宮崎大学、 琉球大学、 九州共立大学、 筑紫女学園大学、 福岡工業大学、 立命館アジア太平洋大学
eポートフォリオ全般の課題
eポートフォリオがボーダーラインの学生の合否判定に参考になるとする一方で、学力以外の部分も加味されることで生徒達の自由な活動がかえって妨げられ、「内申点を稼ぐ」のと同様に、ポートフォリオのための活動に精を出すことになるのでは、という指摘があります。
海外エリート校は学外活動を重視
一方海外のエリート大学は、バランスの良い学外活動経験や、それを下地に養われた意見や価値観など、人間形成に重きをおいて評価します。そうした現場から見ると、日本国内におけるeポートフォリオの導入は有用であるようにも見えます。ただしeポートフォリオに書かれた内容だけで選考するのは不十分で、面接や論文などを通じより深い内容を問う必要はあるでしょう。
浅薄な学外活動記録は見抜かれる
就職活動では既に、大半の企業のエントリーシートにいわゆる「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」という項目が設けられています。履歴書を埋めるため数回のボランティアや短期留学などに参加し、内容を膨らませて書く学生も多く、人事・採用側もその選り分けには目を光らせています。
eポートフォリオを活用するにあたり、教員側の指導が重要となります。多様な挑戦や取り組みを支援し、失敗も成功も含めた様々な経験を生徒一人一人に定期的に振り返らせ、自己の基盤を築くよう、真の人間形成のための教育が求められます。
[文責=くぼようこ]
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