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高プロ(高度プロフェッショナル制度)とは【働き方革命】

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(年収1075万円以上の専門職は残業代0、労働時間上限ナシになる?)[画=photoAC/はむぱん

2018年4月6日、安倍内閣が重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」が閣議決定しました。今日はその中でも規制緩和策である通称「高プロ:高度プロフェッショナル制度」に注目します。

高プロを含む働き方改革関連法案は衆院厚生労働委員会で可決ました。(2018.05.25加筆)

「高度プロフェッショナル制度」とは

高度プロフェッショナル制度とは、専門的なスキルを持つ高収入者の労働時間の上限を撤廃する、というものです。

現在労働基準法で定められた労働時間は1日8時間1週間で40時間。労働省が告示している「労働時間の延長の限度等に関する基準」によると、時間外労働の上限めやすは1ヶ月45時間となっています。

それが高プロでは、特定の高収入・専門職に限り、労働時間や時間外労働時間の上限を撤廃し、かつ残業代もゼロとなります。また企業側はその労働者の労働時間を把握する必要がなくなります。

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高プロの対象者は?

現状対象となっているのは、「専門的で高度」な仕事をしている年収1,075万円以上の労働者となっています。

厚労省の2013年2月労働政策審議会建議資料によると、以下のような記載が見られました。

金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務等を念頭に、法案成立後、 改めて審議会で検討の上、省令で適切に規定する

「専門的で高度」な仕事という言葉は非常に曖昧で、誰もが年収さえ1,075万円を超えていれば対象となりうるようにも読めます。

高プロが抱える問題点

「働き方改革関連法案」は複数の法案が抱き合わせになっており、高プロはその中でも規制緩和に向けた内容になっています。

そのため、いくつかの問題点が労働者の立場に立つ専門家によって指摘されています。 

報酬が高い=裁量がある?

年収1,075万円以上の高度な専門職を対象に労働時間上限を徹し、残業手当を支払わずとも良い、という考えには、「報酬が高い人は労働における自由度が高い」という企業側の論理があります。

しかし日本の一般的な職場で、社員に裁量ある働き方が許されているのはどれほどあるでしょうか。

裁量があるとの建前で、出社退社時間は暗黙のルールで定められ、有給や育休も自分の好きにはとれない、そんな裁量の無い職場で働く人は、報酬の高い低いに関わらず多くいます。報酬が高いからといって、裁量のある働き方ができているわけではないのです。

一方、金融商品のディーラーなどは世界の金融市場の動きが日本の就業時間と足並み揃っていません。したがって労働時間を定めにくく、実績で評価をしてもらえるなら高プロは歓迎、という声も無くはありません。

最高裁で年収1700万円の医師に残業代判決

残業代は報酬の多寡に関わらず基本給と明確に分けて支払われるべき、との最高裁判決も出ています。

2017年7月、神奈川県の私立病院に努める勤務医が勤務先の病院を相手に、一部残業代が未払いであるとして訴えを起こしました。

病院側は、残業代は基本給に含めていると説明しましたが、最高裁まで争われた結果、職種や年収に関わらず基本給と残業代は分けて計算し、年収に含んでいるとするのは不適切、とされたのでした。

年収1,075万円以上の条件は引き下げられる?

高度プロフェッショナル制度は、対象年収が将来的に引き下げられる、対象職種が拡大されるリスクを抱えています。

法案成立時には1,075万円上限であったとしても「蟻の一決」で将来的には確実に引き下げられるだろう、という見方もあります。

「年収1,075万円なら自分には関係ない」「自分はディーラーでもコンサルタントでもないので関係ない」と考えていると、気付かぬうちに対象が拡大して自分も対象になっている可能性もあるわけです。

一方で、高プロは本人の申し出によって対象から外すことも可能とする案も可決されています。(2018.05.25加筆)

また、労働法上定められたことでも、上記の医師の判決のように、裁判では労働の実態が重視されます。

高プロに限らず、労働者自身が自分を守るために、労働時間や会社から強制されたことが分かるような証拠資料を残しておくことが重要です。

今日は高プロについて見ていきました。

 

[文責=くぼようこ]

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