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2018年問題とは | 国公私立大学の一体運営

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大学入学年齢の18歳人口が減少しはじめる2018年問題。経営不振に陥る大学の相互補助・連携のための国公私立大学一体運営の制度が検討されています。)[画=photoAC/Ni_photo

若年層の人口減少を背景に、地域の小規模大学を中心として私立大学の約4割が定員割れとなっています。選ばなければ大学に入学できる「大学全入時代」に、大学のあり方が問われています。

2018年問題とは

2018年問題とは出生率の低下と大学進学率の頭打ちによって、2018年を境に大学入学年齢の18歳人口が減少していくこと。これによって、地方の私立大学を中心に、定員割れの大学が増えていくと予想されます。大学の経営がゆらぐことから、大学の目標設定・評価方法の見直しや、センター試験を大学共通テストに変更するなどの高大接続改革が行われています。

問題の背景

以下は日本の18歳人口の棒グラフと4年制大学への進学率の推移を示す折れ線グラフを重ねたものです。人口は減少、進学率は上昇しているのが分かります。

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(参考:武庫川女子大学教育研究所資料

18歳人口の減少

18歳人口は、第2次ベビーブーム(1971-1974年)に誕生した団塊ジュニア世代(現在45歳前後)が、18歳を迎えた1992年がピーク。1992年には205万人いた18歳人口は、2010年代になると110万人台という約半分まで減少します。

将来の18歳人口を予測するにあたり参考になるのが出生率。出生率は2016年・2017年と100万人を割り、右肩下がりが続いています。(2015年 100.5万人 →  2016年 97.6万人 →  2017年 94.1万人)約20年後には18歳人口がさらに1割下がることになるわけです。

4年制大学の増加

一方、大学の数は増えています。団塊ジュニアの人数が多かったここと大学進学率が上昇したため4年制大学が増え、その数は20年で523大学から773大学へと1.5倍になりました。

進学率は増えたが近年横ばい

4年制大学進学率は上昇。団塊ジュニアが18歳となった1990年前後は26.4%に留まっていたのが、50%近くまで上昇しました。しかしこうした進学率の上昇に対し、大学数の増加とそもそもの18歳人口の低下の影響が上回り、2018年を境に大学進学者の数が一層減っていくと予想されるわけです。

私立大学の4割が定員割れ

結果、問題となっているのが大学の定員割れです。既に地方にある、認知度の低い小規模私立大学を中心に、学部新設早々に定員割れになるなどの課題が見られています。廃校や新年度入学生の募集を停止する大学もあります。

日本は大学の約9割が私立大学。国からの助成金は私立大学は1割程度(私学助成金と言います)、国立に対する助成金(運営交付金)と比較すれば微々たるもの。特に大学進学が都心部に集中しているため、地方小規模大学は入学生の獲得に苦戦しています。

入学生が定員を超えると助成金がカットに

私立大学への国からの助成金の支給には条件があります。大学規模に応じて、定員数を超え入学生を受け入れた場合、私学助成金がカットされるのです。こうした特定大学への入学集中の問題を受け、助成金がカットされる定員数の超過について、2018年からは大規模大学は1.2倍→1.1倍、中規模大学は1.3倍→1.2倍となります。地域に多い小規模大学は1.3倍の据え置きとし、より都心の大学に学生が集中したり、人気校への入学が集中するのを防ぐ狙いです。

国公私立大学一体運営

また文科省では2018年3月27日の中教審の部会において、複数大学の上に企業で言うところのホールディングスのような一般社団法人を設立し、経営上の連携や教員派遣などを実施できるようにする、新しい制度案を発表しました。これが実現すれば、大学間の連携によって事務作業が共有化されたり、学生が減少し学科授業の継続が難しくなった場合に相互に教員を派遣したり、地域連携で大学の魅力を高める働きを行うなど、経営状況改善のための複数大学連携が促進されると見られています。

 

今日は減少する18歳人口に対する大学経営の取り組みとして一体運営や私学助成金の支給厳格化について見ていきました。

日本の大学数は確かに人口に対し多すぎる印象もあります。多くの経営難にあえぐ地方小規模大学は、いわゆるFランク大学やそれ以下の大学。こうした偏差値30〜40前半台の大学を、どこまで経営維持させるかは難しいところです。

大学への入学で人生が保証される訳ではない時代に、大学全入は必須なのでしょうか。大学は本来、学問の追究と研究が目的の筈ですが、モラトリアムにもなっているのが現状。勉強が苦手である、あるいはそこまで好きではなかった場合、学士ではなく職業教育を選択し、手に職をつけ働く・生きる力をつけることが、社会的にもっと評価されても良いのではないかと考える次第です。

[文責=くぼようこ]

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