(年収550万円に達しなければ学費実質無料のテックスクールがサンフランシスコのベイエリアにある。)[画=photoAC/acworks]
EdTech(教育分野へのテクノロジー活用)が進化し、オンライン大学やMOOC(無料視聴可能なオンライン授業)が増えています。今日はサンフランシスコ・ベイエリア発の1年制のデータアナリスト養成大学「MissionU」を見ていきます。
MissionU(ミッション・ユー)とは
MissionUは、オンライン上のリアルタイム授業と、オフラインでのプロジェクトやミートアップなどを合わせた、1年制のオンライン大学。学部は現在「データアナリティクス+ビジネスインテリジェンス」の1つのみ、1年間で即戦力を育成します。
MissionUは、より実践的で職業直結型の新しい高等教育モデルと謳っています。ただし学士は取得できないため、ハイレベルなオンラインの職業訓練校というのが、分類上は正しいかもしれません。
1年間で年収600万〜1100万へ
MissionUのWebサイトによると、現在データアナリストの平均年収は600〜1100万円程度、150万の求人のある超売り手市場。「ビッグデータ」がバズワードになってから数年が経ち、大手企業からスタートアップまで当たり前のようにデータ活用が進められている今。データ分析の領域は、人材がいくらあっても足りないのが現状です。
MissionUの学生は、エクセルの活用から始めてPythonやSQLといったデータ分析に欠かせないプログラミング言語なども学習していきます。こうした基礎スキルをベースに、データをビジネスに活用できるだけのマーケティングや経営の視点を身につけるため、授業では企業との共同プロジェクトにも取り組みます。授業はオンラインが8割、オフラインが2割。オンライン授業も録画されたビデオを見るのではなく、ベイエリアでの授業にネットを通じてリアルタイムで参加するイメージです。MissionUは学生が卒業後データアナリストとして雇用されるよう、1年で叩き上げていきます。
有名エリート校や注目スタートアップ企業と連携
MissionUの特徴の一つは、カリキュラムを有名大学の博士などとコラボレーションして作っていること。ハーバードのイノベーションラボ、スタンフォードのビジネス大学院、MITメディアラボといった世界のイノベーションを牽引するスクールのエキスパートが監修しています。
そして、複数の有名スタートアップ企業とコラボレーションした課題実習に取り組める、実践的な環境もあります。パートナー企業にはSpotifyやライドシェアアプリのUBER、LYFTといったテクノロジー企業もあれば、Fast Company発表の「世界で最もイノベーティブな企業」に選ばれた新興のメガネブランドWARBY PARKERや、一部店舗をショールーミング(店頭で試着したり商品を確認すること)専用に変え販売をECに集約するなどテクノロジー活用が注目されるメンズアパレルのBONOBOSなど、米国でも注目されるホットな企業が名を連ねています。企業側は、人材獲得競争の中、MissionUの優秀な学生に早期にアプローチでき、生徒側は、誰もが憧れる企業への就職の切符をものにできるチャンスがあります。
学費出世払いの「インカムシェアモデル」
MissionUの特徴の3つ目は、学費。MissionUでは卒業後年収5万ドル(約550万円)を超えた段階から支払い義務が始まり、3年間にわたり収入の15%を学校に納める「インカムシェアモデル」をとっています。インカム(収入)を「学校側と」シェアする、という意味です。もし卒業後、年収600万円に達し3年間15%支払いを行えば、学費は270万円、年収1,000万円であれば3年間15%で450万円の学費という計算です。
一方、年収がいつまでも550万円に達しなかったらどうなるのか。この支払い契約は卒業後7年間まで有効で、7年が経過すれば、3年間収入の15%分を支払ったかどうかに関わらず支払い義務は無くなります。
米国では現在総額1.3兆ドル(日本円にして1,500兆円)もの学生ローンがあるとの報道があります。このインカムシェアモデルは、新しいビジネスモデルとして注目されており、他のオンラインスクールでも続々と導入されています。
まとめ | テックスクールは大学の代替になるか?
ここまで見てきたように、MissionUは就業や高い年収を狙うにはうってつけのプログラム。サンフランシスコでは、企業側が大学卒業の証明書よりも即戦力を重視するムーブメントがあり、テックスクールの人気を後押ししています。また学校のビジネスモデルに成果報酬を取り入れた学費支払い方法も新しい取り組みで、学生達に大学に4年間、1,000万円を超えるローンを抱えて通うのとは異なる、新しい選択肢を提示しています。
一方Time紙の取材によれば、こうしたテックスクールが大学の代替になるわけではない、と指摘する専門家もいます。理由は主に二つ。一つはテックスクールが就職と短期的な収入にフォーカスしたもので、中長期的な年収の確保が実証されておらず不透明であること。そして二つめは、テックスクールには大学のようにカリキュラムや内容のレギュレーションが無く、既に質を担保できないスクールが乱立しつつある、ということです。
今日はサンフランシスコ・ベイエリア発データアナリスト養成のオンラインスクール「MissionU」を通して、新しい学校のモデル、そしてテックスクール全般の課題について見ていきました。
[文責=くぼようこ]
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