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SSHとは | 理数系人材を育成するSTEM教育とは?(3)

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(SSH認定校は2017年時点で全国に203校。認定されるとその後5年間、毎年900〜1,600万円の補助を受け取れる)[画=photoAC/夏男

前回はなぜ日本国内でSTEM教育の需要が高まっているのか、社会的な背景について見ていきました。今日はスーパーサイエンスハイスクールとは何か、そして認定校にはどのような学校があるのか見ていきます。

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とは?

SSHとは、学習指導要領で規定されている内容を超えて、先進的な理数科教育に取り組む学校を認定する取り組み。SSHに認定されると、その後5年間にわたって、国から毎年900〜1,600万円程度、教育のための資金援助が受けられます。

文科省の資料によると、スーパーサイエンスハイスクールに指定されている学校は日本国内で203校(2017年度時点)。

SSHに認定されるための要件は以下の通りとなっています。

○学習指導要領の枠を超え、理数を重視した教育課程を編成

○主体的・協働的な学び(いわゆるアクティブ・ラーニングを重視

○研究者の講義、フィールドワーク等による興味関心の喚起

国際的な活動(海外生徒との交流、国際学会での発表等)

○上記取組を高大連携企業連携により高度に実施

生徒研究発表会に見るSSH

毎年8月、文科省とJST(科学技術振興機構)の共催で、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)認定校の生徒による研究発表大会が行われています。

まずはこの大会結果から、各校でどんな研究・授業が実践されているのか見ていきます。

SSH生徒研究発表会とは?

大会がはじまったのは2004年から。SSH事業が2002年に開始され、その2年後から毎年行われています。

大会の開催は2日間。初日は予選のような形で、各校が発表内容をポスター展示します。2日目が本選で、初日のポスター展示審査から選ばれた数校がプレゼンテーションを実施。その中から、文部科学大臣賞、他入賞が決定します。

以下にJSTのSSH特設サイトに掲載されている、過去5年間の入賞校を文部科学大臣賞と他各種入賞に分けてご紹介します。 

過去5年間の大臣表彰・入賞校(2011〜2016年度)

年度 文部科学大臣表彰
 2016年   福岡県立香住丘 
 2015年   熊本県立宇土中高 
 2014年   福島県立福島
 2013年   茨城県立水戸第二
 2012年   広島県立広島国泰寺 
 2011年   兵庫県立三田祥雲館 

 

年度 入賞校
2016年 兵庫県立加古川東・兵庫県立神戸・東京都立多摩科学技術・山梨県立韮崎・横浜市立横浜サイエンスフロンティア
2015年 秋田県立秋田中央・福井県立武生・愛知県立時習館・沖縄県立球陽・新潟県立長岡・愛知県立半田・大阪府立大手前・大阪府立高津・福岡県立東筑
2014年 静岡理工科大学静岡北中高・武庫川女子大学附属中高・奈良県立奈良・岡山理科大学附属・広島大学附属・岩手県立釜石・埼玉県立松山・筑波大学附属駒場・東京都立科学技術・岡山県立津山・宮崎県立宮崎北・長野県諏訪清陵・奈良女子大学附属中等教育・石川県立小松・清心女子
2013年 福島県立磐城・金光学園中高・熊本県立第二・岩手県立盛岡第三・石川県立小松・滋賀県立膳所・大阪府立岸和田
2012年 横浜市立横浜サイエンスフロンティア・鹿児島県立錦江湾・山梨県立都留
2011年 大阪教育大学附属天王寺・岡山県立岡山一宮

 *「〜学園」など学校法人名を示すもの、「高校」「学校」などの表記は文字制限の関係で省略しています。

 

入賞校の中から、複数年入賞している高校は赤字で表記した「横浜市立横浜サイエンスフロンティア」「石川県立小松高校」の2校。 そこで、今日はこの2校の取り組みについて見ていきます。

横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校

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学校ホームページより)

2009 開校
2010 SSH認定(5年更新)
2015 SSH更新(5年更新) 

横浜市が鶴見区の再開発で実現したライフサイエンスに産官学で取り組む特区「横浜サイエンスフロンティア」に創立。

大学や研究所と連携した授業は、先進的な理科学教育として注目され、Nature誌にも取り上げられたことがあります。

学外から5名のスーパーアドバイザーを招へいし、指導方法に関する助言を受ける他、科学技術顧問による生徒への直接指導も実現。

中でも常任スーパーバイザーの理化学研究所研究顧問の和田昭允(わだ・あきよし)氏は、世界で初めてDNAの自動解析研究に取り組んだ人物。和田氏は毎週同校を訪問し、生徒指導を務めています。

2014年からはさらにスーパーグローバルハイスクール(SGH)にも認定。

横浜市立ではありますが、学外からの生徒も受け入れています。(附属中学前もありますがこちらは学内のみ)

サイエンスリテラシーを育む特別教育

学習指導要領の枠組みを超えた教育プログラムとして設けられた「SLI(サイエンスリテラシー)」のカリキュラムは以下の通り。

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学校ホームページより)

1年次に5分野の実験実習を経験し、2年次にテーマを決めて1年かけた研究に取り組みます。

石川県立小松高校

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学校ホームページより) 

1899年 創業(2019年に創立120周年)
2006 理数科がSSH認定(5年更新)
2011 SSH更新(5年更新)
2017年 SSH更新(5年更新) 

まもなく創立120周年を迎え、理数科のSSH認定が2017年で3期目を迎える石川県立小松高校。

同校で重視するのは「探求する力」。1年次には物理・化学の基礎学習に取り組みながら、ディベートや発表を通じ課題発見→探求のプロセスを体験。2年次にはテーマを決めた課題研究・発表にも取り組み、3年次にはデータ処理などを取り入れたより高度な研究にも踏み込んでいきます。

韓国の大田科学高校と交流授業を実施、2年次の発表会では日英両方でプレゼンテーションを行うなど、国際教育にも力を入れています。

 

次回は企業によるSTEM教育の取り組みをみていきます。

>>次の記事「理数系人材を育成するSTEM教育とは?(4)」

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[文責=くぼようこ]

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