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片親世帯の教育費【子どもの貧困】教育費サポートブックより

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(生活が困難で教育費用の捻出に不安を抱える親御さんやその学生当事者である方を対象に、NPOが発行するサポートブックを紹介。)[画=photoAC/はむぱん

「子どもの貧困」が大きな社会問題となる中、所得格差のある世帯を主な対象に、社会の支援やセーフティネットについて啓発する各種サポートブックが発行されています。今日は、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむから発行されている「教育費サポートブック 2018」についてご紹介します。

教育費サポートブック

年間の平均的な等価可処分所得の半分を「貧困ライン」と言うのをご存じですか?日本の貧困ラインは年112万円。片親世帯は半数が貧困ラインにあると言われています。

そうした状況の中、子どもの教育費用を試算し、進学先の決定によってどの程度教育費が変わるのか、行政支援を受けられる条件は何か、奨学金のリスクは何か、といった事柄を整理し、親子の不安を払拭してくれる「教育費サポートブック」NPO法人から発行されています。

ファイナンシャルプランナーの方が執筆しており、非常に分かりやすく、網羅性も高いパンフレットです。今日はそんなサポートブックの中身を一部紹介します。

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(書影引用:『教育費サポートブック 2018年版』が出来上がりました! | しんぐるまざあず・ふぉーらむ

第1章:教育費ってどれくらいかかるの?

中学までは就学援助があるものの、高校からは公立で年間50万円、私立で年間120〜140万円教育費がかかります。また大学に進学するとなれば国公立・私立でそれぞれ年80万円・年120〜150万円かかります。

サポートブックではこのように行政のデータなどを参照しながら、進学にかかる費用と注意点を説明すると共に、専門学校や大学の夜間コースの費用なども網羅しています。

  • 15歳からの進路選択
  • 高校生にかかる教育費
  • 大学進学のための費用
  • 専門学校進学のための費用
  • 「専修学校」「各種学校」と「無認可の教育施設」の違い
  • フリースクール、障害のある子どもの進学

 第2章:教育費を準備するには

第2章では、大学・専門学校など高等教育への進学費用を捻出する方法について、貯蓄の方法から、給付型奨学金を受け取るための準備、各種奨学金について、さらに安価で高等教育や職業訓練を受けるための様々な選択肢まで、各節に分けて紹介しています。

①準備編
  • 貯蓄と学資保険
  • 大学や専門学校の費用を準備するには
  • 大学進学等の準備は高校1年生から
  • 色々な奨学金制度や支援制度があります。
②主な支援制度
  • 日本学生支援機構奨学金
  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金
  • 社会福祉協議会貸付金
  • 国の教育ローン(日本政策金融公庫)
③その他の支援制度

この節で注目したいのは「生活保護受給世帯の子どもたちの大学進学」という項目。現状生活保護受給世帯の子どもたちは大学進学が認められていない(働きつつ夜間大学または公共職業訓練は可能)のですが、それに対する解決策「世帯分離」に言及し、大学進学を可能にする方法について紹介しています。

  • 東京都の受験生チャレンジ支援貸付金
  • 自治体の支援制度
  • 看護士等修学資金
  • 遺児のための奨学金
  • 生活保護受給世帯の子どもたちの大学進学
  • 教材費などのための高校生等奨学給付金
④返済不要の支援制度

奨学金破産は5年間で1万5,000人。中には大学に投資対効果を十分に考えられずに進学を選択している、親・子のいずれかまたは両方がそもそも返還義務があることを把握していなかった、などのケースもあります。この節では、給付型の奨学金の種類を紹介しています。

  • 私立中高独自の給付金
  • 国公立大学の入学料授業料の罷免
  • 私立大学独自の給付型奨学金
  • 授業料免除や特徴のある学内奨学金
  • 民間の企業や団体の「給付型奨学金」
⑤お金をもらいながら高校・大学に進学する

生活費も工面しなければならない学生も多い中、給与をもらいながら高校・大学に進学する方法も紹介しています。

  • 自衛隊
  • 企業内学校
  • 新聞奨学生
  • 公務員として「学士」資格を取得
⑥お金をかけずに進学する
  • 大学等の通信教育部・夜間部(二部)
  • 職業訓練を行う施設・大学・機関

サポートブックのポイント

サポートブックの優れた点は、「教育費を前借りして4年制の大学に通学することだけが道じゃない」ということをはっきり示している点だと感じました。大学進学以外にどのような選択肢があるのか可能性が多数提示されているため、高校生自身が読めば、将来やキャリアを考える機会になるでしょう。

また、パンフレットのあちこちに掲載されている体験コラムでは、同じような環境下にいた人たちがどのように対処したか、どのような苦労があったのか、非常にリアルな声を聞くことができます。コラムを読むことで。具体的な学業と就労・アルバイトのバランスについてイメージがわき、安心する方もあるでしょう。

今日はNPOしんぐるまざあずふぉーらむが発行する「教育費サポートブック」についてご紹介しました。生活困難の親御さん、また当事者である学生さん本人は2,000冊までは無料配付しているとのことです。

支援者や費用面も含め進路指導に生かしたい教員の方は、1冊500円から購入できますので、ぜひ以下のWebページを参照してみてください。

▽購入はこちらから

www.single-mama.com

[文責=くぼようこ]

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