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ベーシックインカムとは・議論まとめ

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(毎月最低限の所得が保障されるとしたら、どう生きる?)[画=photoAC/acworks

「AI(人工知能)が人の職を奪う未来にBI(ベーシックインカム制度)によって格差是正を目指す」というアイデアに関心が集まっています。ベーシックインカムとはどのような制度か、そして賛成・反対派の焦点とは?

BI(ベーシックインカム)とは

国家によって最低限の所得が保障される制度を「ベーシックインカム」と言います。

ベーシックインカムの基本的な理念は、すべての国民に・最低限の生活が送れるだけの最低限の所得を保障する、というものです。
しかし実現には大きな課題と懸念があり、制度のあり方はさまざま。

明確に「誰に・いくら・どのように」給付されるものか、という定義はありません。

例えば
①誰に:国民に完全一律で or 年齢や所得など条件あり
②いくら:月数万円 〜 初任給程度まで
③どのように:生活保護・年金・失業手当を廃止しベーシックインカムに一本化 or 現行の社会保障制度は維持したまま上乗せ
など、ベーシックインカムと言っても多様な導入方法が検討されます。

注目が集まる理由

ベーシックインカムの思想は18世紀末頃から提唱され始め、20世紀に入って多くの研究者が言及するようになりました。

そして2013年。「AI(人工知能)によって将来的に人々の職が奪われる」としたオックスフォード大学教授の研究論文が、世界で話題になりました。

すると、経済格差の拡大に対する懸念と共に、BI(ベーシックインカム)の導入の議論も具体性を帯び始めたのです。

日本国内では、2016年にスイスでベーシックインカム導入に関する国民投票が行われ否決されたニュースや、2017年10月の第48回衆議院議員総選挙で注目を集めていた小池百合子氏率いる希望の党が、「AIからBIヘ」とのスローガンでベーシックインカム導入を選挙公約の1つにも挙げたことでも、注目が集まりました。

メディアの報道では、ベーシックインカムという言葉がキーワードとしてもキャッチーで「誰でも・何もしなくても月●万円もらえる」というのがウケたことも大きいでしょう。

世界で進むBIの試験

BBCの報道によれば、フィンランドでは2017年1月から失業中の2,000人の人に、毎月一律で560ユーロ(現時点のレートで約7万2,000円)を給付する試験をスタート。しかし有効性に疑問があったとして、2018年末には終了させる方向で進んでいます。

またスイスでも2016年に、成人が毎月2,500スイスフラン(現時点のレートで約27万6,000円)、未成年者に対し625スイスフラン(約7万円)を等しく受け取れるBI制度が検討されましたが、2016年6月に国民投票で約78%の反対によって否決されました。

一方、AIやテクノロジーの進化を推進する立場である、テスラのイーロン・マスクCEOやフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏などが一定の関心を示しているとの報道もあります。

ベーシックインカムを取り巻く議論

さまざまな経済評論家や研究者、政治家などがベーシックインカムについて意見を述べています。議論の焦点として中心的なものをピックアップしてみました。

賛成派

  • すべての人が等しく最低限の収入を保障されるため貧困の是正に繋がる
  • 社会保障制度を維持する行政の仕事がスリム化しコスト圧縮になる
  • 最低限の所得が保障されるため労働者が劣悪な労働環境に依存しなくともよくなり職場を選ぶことができる

反対派

  • 膨大になる国費負担を果たして賄えるのかという大きな懸念と懐疑
  • ベーシックインカム導入と引き換えに社会保障制度が圧縮されることで格差を助長するという見方
  • 働かなくとも最低限所得が得られることで労働者の意欲が低下し生産性が低下する
  • 支給された所得の管理は個人の責任に委ねられるため資産管理能力の低い人は救済できない
  • 給付しただけ物価が上がるため意味が無い
  • 「働かざる者食うべからず」感情的に受け入れられない

社会保障費の9割は医療・年金・介護の社会保険

ベーシックインカムは貧困や経済格差の是正の手段として議論されています。

一方、厚労省資料に記載されている日本の社会保障費の内訳を見ると、「公的扶助」と呼ばれる貧困層への生活保護は全体の3.3%に止まり、給付の87.6%は医療保険・年金・介護保険などの社会保険となっています。

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そこで、現状の社会保障は、富裕層から貧困層の富の再分配ではなく、中間層内での富の再分配になっている、という見方もあります。

また、65歳以上の高齢者数がピークを迎える2040年度には、社会保障給付が2018年度の121兆円から190兆円の約1.6倍にまで拡大するとの報道も。

したがって、この社会保障制度を見直すことがベーシックインカム導入の前に必要である、という意見もあります。

筆者個人の考え

自分にベーシックインカムが導入されたら、どうなるだろう?ということを考えてみました。

もし自分が就活生で、最低限の所得保障は予定されていることが見えていれば、社会貢献性が高いものの収入は低く止まりがちな仕事や留学にも挑戦しようかと思ったかもしれません。

一方で、今すぐ稼がなくてもいい、という大らかな気持ちが、自分の身の丈に合わないような(例えば作家や画家のようなクリエイティブな)仕事を夢見る、モラトリアムに繋がっていたかもしれない、とも思います。

稼ぐ意識を持つのは重要だと思っています。AIによって将来的な仕事のあり方が変わる・変えられてしまう、というのであれば、その変化の中でも生き抜けるよう学び続けるまでです。

現在30代で、十分に働ける今の自分にはベーシックインカムは必要ありません。むしろ社会保障制度と公的扶助の見直しを行うことが現実的だろうと感じました。

 

[文責=くぼようこ]

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