(酒・タバコ・ギャンブルは20歳以上。クレジットカードやローンは18歳から契約できるようになる可能性も)[画=photoAC/dronepc55]
「18歳成人」というニュースをよく目にしますが、実はまだ国会で改正案が承認された訳ではありません。もし法案が改正されたら、いつから施行され・何が変わるのか。今日は整理していきます。
18歳成人とは
明治29年(1896年)、今からおよそ122年前に制定された民法では、成人年齢は20歳、結婚ができる年齢は女性16歳、男性18歳と定められています。
「18歳成人」は、この民法を改正することで、成人年齢を18歳へ、そして結婚可能な年齢を男女ともに18歳に変えよう、という動きです。
18歳成人は実現確定?
18歳成人は2018年3月13日、閣議決定しました。
しかし2018年5月5日時点では、国会の承認を得ていないため、改正が決定している訳ではありません。
簡単に言うと閣議決定というのは、政府の方針を全閣僚一致で決定し、閣議書を皇居に提出すること。政府の方針として打ち出してはいるものの、国会の承認を得なければ改正は行われません。
政府は4年後の2022年4月1日からの施行を目指しています。
2018年の国会(常会)は6月20日で閉会が予定されています。残す期間は1ヶ月と少し。議論を尽くさねばならないことが多くある中で、果たして間に合うのかはまだ見えていません。
施行されると何が変わる?
成人と見なされるようになると、未成年の時代にはできなかったことができるようになる、厳罰化される、というのが一般的なイメージかもしれません。
では具体的に何が変わるのか、変わる可能性があるのか。箇条書きでまとめました。
- クレジットカードを親の同意なしに作成できる
- ローン(携帯や自動車など)を親の同意なしに組める
- 民事裁判を1人で起こせる
- 性別変更の申し立てができる
- 司法書士・公認会計士になれる
- パスポート(10年)を18歳から取得できるように
18歳以上を成人と見なせば、親の同意なしに結ばれた未成年者の契約を取り消せる「未成年者取消権」の対象外となり、望まぬローンを組まされるなど、悪徳商法のカモにされることが懸念されています。若い消費者を保護するための施策が必要なため、議論が継続されています。
変わらないこと
一方で、成人を20歳から18歳に引き下げても、変わらない点もあります。特に喫煙・飲酒・ギャンブルなど過度に行えば健康や健全な生活を蝕むリスクがあるものは引き続き20歳以上となります。
- 喫煙可能年齢は20歳を維持
- 飲酒 〃 20歳
- 馬券など公営ギャンブルは20歳未満禁止
- 養子がとれるのは20歳以上
- 刑事手続きの「少年」の定義は20歳未満を維持(ただし18歳未満とするかは継続検討中)
選挙権は既に18歳から
2007年に成立した国民投票法によって、憲法改正の可否は18歳から選挙権が与えられることが決まりました。そして2016年に施行された改正公選法では、憲法改正かどうかに関わらず、選挙権は18歳から与えられることとなっています。
世界の成人年齢
日本以外の国を見てみると、世界では「18歳成人」が比較的一般的です。米国では州ごとに異なりますが18歳成人が圧倒的マジョリティ。イギリス・ドイツ・フランス・中国・オーストラリアいずれの国も成人は18歳です。
法務省資料によれば、諸外国における18歳成人は、選挙年齢の引き下げ、時代の変化に伴い18歳を成人と同じ責任と義務を追っているものとしてみなすようになった、といった背景から進められてきたようです。
「18歳成人」教育現場の課題
毎日新聞の記事によれば、18歳が成人となると、高校3年生に成人と未成年が混在することになります。18歳でのクレジットカード・ローン契約が可能になった場合には、学校現場や家庭での金融教育・消費者教育が欠かせません。
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その他、成人年齢に達したことを盾に教師に反発する学生が増えたり、成人式のタイミングが就職活動や大学受験に重なることを危惧する声もあります。
今日は18歳成人について見ていきました。特に成人年齢が引き下げられることで、高校における教育にも変化が求められそうです。
[文責=くぼようこ]
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