(2018年末に米国がユネスコからの脱退を表明。ユネスコ自体は国連に連なる機関として教育・科学・文化を所管しています。)[画=photoAC/U0624]
教育に関する国際機関にはさまざまな組織があります。今日はユネスコについて見ていきます。
ユネスコとは
ユネスコはUnited Nations Educational, Scientific and Cultural Organization(国際連合教育科学文化機関)の略。
国連の経済社会理事会の下に設置されている、教育・科学・文化における国際機関です。
教育・文化を通じ戦争の歴史を繰り返さない、という目的の下、世界195の加盟国の拠出金によって、世界遺産やESD教育(持続可能な開発のための教育)などの事業が賄われています。
日本は1951年7月2日に加盟しました。日本が国連に加盟するのはその5年後、1956年のことです。
ユネスコ憲章
ユネスコは、1945年11月16日に採択されたユネスコ憲章に基づき、1946年11月4日に設立されました。
ユネスコ憲章の全文は文科省Webサイトに掲載されています。以下に一部を抜粋します。
戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
ここに終りを告げた恐るべき大戦争は(中略)無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。
文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。
日本は分担金の拠出額で世界一
195ヶ国の加盟国はユネスコにおいて対等ですが、分担金の額は国によって異なります。日本は2017年分として約40億円を支払い、全加盟国の中でも最高額です。
ユネスコの予算は2年間で65,300万ドル(約720億円)、年間で360億円。日本は1国でその9分の1を担っていることになります。
2011年までは米国が世界で最も分担金を拠出していた国でしたが、以下に紹介するように拠出を停止していたため、ここ数年は日本が実質最も拠出額の大きな国だったというわけです。
2018年末に米国が脱退
トランプ大統領は2017年10月、「ユネスコの運営実態や反イスラエル的な姿勢への懸念」を理由にユネスコからの脱退を表明しました。脱退は2018年12月31日の予定です。
米国は上で紹介したように、2011年オバマ政権時代に分担金の拠出を停止していました。米国内の法律が、パレスチナ解放機構を加盟国として承認した国連機関へ拠出金を支払うことを禁止している中、ユネスコがパレスチナのユネスコ加盟を承認したためです。
当時ユネスコの全体予算の22%の分担金を拠出してきた米国の支払い停止は機関の運営に大きな影響を及ぼしました。
ユネスコの組織
ユネスコには3種類の組織があります。一つはパリに本部を持ち、国連の一機関として機能しているユネスコ、文科省内に設置されている日本ユネスコ国内委員会、そしてNGOの日本ユネスコ協会連盟です。
(引用:日本ユネスコ協会連盟について|ユネスコを知る|公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)
ユネスコの活動
ユネスコの活動は多岐に及びますが、最も私たちにとっても馴染深いのは、「ユネスコ世界遺産」そして和食も登録されたことで有名になった「ユネスコ無形文化遺産」でしょう。これらの2つは審査会を通じ決定されます。1992年からは世界の歴史を知る上で重要な記録物が登録される「世界の記憶」事業もスタートしました。
そのほか、世界に等しい教育機会を提供することを目的とし、発展途上国の子どもたちの識字率向上のための事業も行なっています。
同時にユネスコスクールのように、ユネスコ憲章に則り、世界や地域の文化・環境理解などを通じて持続可能な社会の実現に向けた教育を行う学校の支援なども行なっています。
今日はユネスコについて見ていきました。
[文責=くぼようこ]
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